3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース

外資系通信社で日米の政治、経済、マーケット、金融のニュース速報の最前線で活躍してきた筆者がアメリカの株・債券・為替市場やホワイトハウスや米議会、米連邦準備理事会の要人コメント、経済指標を分析し、今何が最もホットな話題なのかを探ります。

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3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース第376号

2010/02/28

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■■      ◆3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース◆ 
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米下院、上院の雇用対策法案の採決先送り=不満続出で

−下院案の14兆円規模と隔たり=今週、上院審議再開−

【2010年2月28日(日)】 − 米下院は、先に上院で可決された150億ドル(約1兆3000億
円)規模の雇用対策法案の採決を当面、見送る方針だ。

 上院は24日に雇用対策法案を可決したあと、直ちに下院に送付し、下院も25日、審議
を開始したが、与党・民主党が上院案では28日に期限切れとなる失業保険給付が延長さ
れていないことや対策規模が余りにも小さすぎるとして、反対に全会一致で給付期間の1
カ月延長法案を可決するなど、議会はこう着状態となっている。

 下院でのいかなる法案修正も上院で再議決が必要となるため、上院は週明けの3月2日
から審議を再開する予定だ。

 折しも、25日発表された、20日で終わった週の新規失業保険申請件数(季節調整値)
は、前週比2万2000件増の49万6000件と、市場予想の46万件を大幅に上回った。今年に入
って8週間のうち、実に6週間も申請件数は上昇している。

 これは昨年下期の申請件数の急減から一転して増加に転じたことを示すもので、雇用
状況が再び悪化している。上院は11月の中間選挙を控え、今年1兆5600億ドル(約139兆
6000億円)にも達する財政赤字の拡大の悪いイメージを払拭したい狙いから対策規模を
抑制したが、実際に雇用効果がなければいずれは有権者の政治への信頼を失いかねな
い。

 上院案では民主党幹部は130万人の新規雇用効果があると主張している。これは昨年2
月に議会で成立した7870億ドル(約70兆4000億円)の政府の景気対策でこれまでに160万
人の新規雇用創出に次ぐ規模だ。しかし、多くのエコノミストは実際には130万人もの雇
用創出は困難と見ているのも事実だ。

 財務省のアラン・クルーガ−財務次官補は5日の記者会見で、同日発表された1月の雇
用統計の結果について、「依然として挑戦が続いている」として、本格的な雇用市場の
回復にはまだ時間がかかると慎重な判断を示している。その上で、議会に対し、1000億
ドル(約8兆9500億円)の雇用刺激策の必要性を指摘している。

 また、オバマ大統領も1月27日に行った大統領就任後初の一般教書演説の中で、今後5
年間で新たに200万人の雇用創出を目指す方針を明らかにしており、新規雇用、あるい
は、賃上げを行った中小企業に対しては減税措置を講じるほか、輸出を2倍に引き上げる
ことで雇用創出を目指す提案を行っている。

 それだけに、上院案の150億ドル規模では政府が期待している規模10分の1に過ぎず、
130万人もの雇用創出は現実的ではないといえる。

■下院案は1550億ドル規模=公共事業に重点

 上院の雇用対策法案は、雇用促進を図る中小企業に対する優遇税制の導入と公共事業
の追加投資などが柱で、歳出規模は150億ドル規模。同法案は70票対28票の賛成多数で可
決、直ちに下院に同法案を送付されている。

 しかし、これより先の昨年12月16日に、下院は同様の雇用対策法案を217票対212票の
賛成多数で可決しているが、その規模は1550億ドル(約13兆9000億円)と一桁も規模が
違う。また、内容的にも、減税措置よりも、すぐに雇用創出につながる失業対策のため
の公共事業の追加支出に重点が置かれており、上院案とは雇用創出に対する手法の違い
がある。

 ちなみに、下院の雇用対策法案を見ると、インフラ投資と失業保険給付の延長、公務
員の雇用安定の3本柱からなる。

 インフラ投資(総額483億ドル)では、道路や橋梁、交通施設、港湾施設などのインフ
ラに対する公共投資を483億ドルに拡大し、4月までに実施する。

 失業保険給付の延長(795億ドル)では、給付期間を6カ月延長するために410億ドル、
半年以上の失業者に対する医療保険補助金交付で123億ドル、メディケイド(低所得層向
け医療保険)に対する州政府援助として235億ドル、低所得層に対する児童の保育税額控
除の拡大で23億ドル、フードスタンプ(食料券)で3億ドルなどとなっている。

 また、公務員の雇用安定(267億ドル)で主なものは、25万人の教師など学校関係者や
学校の修繕にかかる州政府の支出補填として230億ドルを支出する。

 これらの財源手当てについては、2008年10月に議会で成立した金融安定化法の柱であ
る総額7000億ドル(約62兆6500億円)の不良資産救済制度TARP(Troubled Asset 
Relief Program)を活用する。

 TARPは昨年12月9日現在で、まだ、3095億ドル(約27兆7000億円)残っていること
から、TARPの節減で浮いた2000億ドル(約17兆9000億円)の中から750億ドル(約6
兆7100億円)を借り入れる。

■上院案は減税主体

 これに対し、今回、可決された上院案は、公共投資よりも減税主体だ。従業員を新規
に雇用した中小企業に対するソーシャル・セキュリティ・タックスの130億ドル規模の減
税だ。これは60日以上の失業者を新規に雇用した場合、今年は現行の6.25%のソーシャ
ル・セキュリティ・タックスを雇用主である中小企業は支払いが免除される。また、雇
用された従業員が1年間在籍すれば、さらに1000ドルの減税措置が講じられる。

 そのほか、7870億ドルの景気対策に盛り込まれた、最大25万ドルまでの設備投資に対
する加速度償却を2010年末まで延長する。州政府による道路や橋梁の修繕工事への補助
金交付の延長、州政府のインフラ整備のための地方自治債発行に対する政府支援などで
20億ドルを充てる。

 1月の雇用統計が前月比2万人の純減と、市場予想の同1万5000人増を下回り期待外れの
結果となった。また、失業率が昨年12月の10.0%から9.7%にやや低下したとはいえ、半
年以上就職できない長期失業者数は630万人に増加、依然、過去最高を更新している。失
業者全体(1480万人)の3分の1以上にあたる43%と、依然、過去最高の水準が続いてい
る。

 また、2009年全体の雇用者数は420万人の純減となり、2007年12月のリセッション(景
気失速)以降では合計で840万人の減少となることを考えると、本格的な雇用対策を打ち
出さない限り、やっと緒についたばかりの米経済の回復もいずれ失速し、再び世界経済
の混乱を招きかねないだろう。 (了)

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発 行 元   :「誰でも分かる!アメリカ経済情勢ファイル:ザ・裏読み」
発行責任者  :編集主筆 増谷栄一
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