3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース

外資系通信社で日米の政治、経済、マーケット、金融のニュース速報の最前線で活躍してきた筆者がアメリカの株・債券・為替市場やホワイトハウスや米議会、米連邦準備理事会の要人コメント、経済指標を分析し、今何が最もホットな話題なのかを探ります。

全て表示する >

3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース第371号

2010/01/25

■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■
■■      ◆3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース◆ 
■■       (まぐまぐマガジンID:0000121825)
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第371号 ━■■

オバマ大統領、銀行改革に本腰=リスク投資制限狙い

−2月G7会合で国際的な議論へ−

【2010年1月25日(月)】 − 先週(21日)、オバマ大統領はホワイトハウスで演説し、
世界の主要国の金融機関を震撼させる銀行改革案の概要を明らかにした。これを受け
て、欧米の株式市場では金融株が一斉に売られ、特に、米市場ではダウ工業株30種平均
が先週末までに3日続落となり混乱が続いた。

 ロンドンのシティ(金融街)でもロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グルー
プ(RBS)やバークレイズなどの大手行はいずれも1日だけで株価が8%も急落するな
ど、米国発の金融改革の狼煙はあっという間に全世界を駆け巡った格好だ。

 英国の場合、ゴードン・ブラウン労働党政権のアリスター・ダーリング財務相は独自
路線を歩むことを主張し、米国追随の考えを否定している。しかし、最大野党の保守党
は今年の選挙で勝利した場合には米国と同様な金融規制策を導入すると見られている。

 いずれにせよ、米国の金融改革提案の詳細が不透明のため、英財務省は来週にも2月5-
6日にカナダ・イカルイトで開かれるG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の準備
のため、ロンドンを訪問する米財務省の高官と会談し銀行改革の詳細を聴取するもよう
だ。

 さらに、2月のG7会合でもこの問題が議論される見通しだ。ドイツの財務省もオバマ大
統領の銀行改革案については「国際的な場で協議されるべきだ」との声明文を出してい
る。

■オバマ大統領、銀行の無責任さを痛烈批判

 オバマ大統領は、21日の記者会見で、「中小企業にお金を貸せないとか、クレジット
カードの低金利を続けられないとか、(信用収縮の危機時に税金投入でまかなわれた)
緊急融資の資金を納税者に返せないとか主張している、まさにそういう銀行がいま、過
去最高の利益を上げているのを見るにつけ、また、敢然と改革に取り組んでいるはずの
銀行の一部で、再び、昔の通りに戻ろうとしているのを見ると、金融システム改革に対
する私の決意は一段と強くなった。このような(銀行の)無責任さこそが、まさしく金
融改革を必要とさせている」と、銀行改革の必要性について熱っぽく語っている。

 オバマ大統領の銀行改革は銀行規模に一定の枠をはめることで、“too big too 
fail”(大きすぎて潰せない)”という、2007-2008年にかけて大銀行に税金を投入して
救済したような過去の過ちを二度と繰り返さないこと、また、大銀行の経営危機が経済
全体を危機に陥れるのを未然に防ぐ狙いがある。

 政府高官によると、このため、大手銀行は銀行本来のリテールを中心とした商業銀行
として事業を選択するのか、あるいは、自己勘定によるMBS(不動産担保証券)などへの金
融投資やM&A(企業の買収・合併)で巨額の利益を稼ぐヘッジファンドやプライベートエ
クイティ(PE)ファンドの保有やそれらへの投資、自己売買目的の投資銀行業務といっ
たトレーディング事業を選択するのか、どちらかを選択することが求められている。

■政府、大銀行解体は否定=ファイアーウォール規制強化へ

 ただ、オバマ大統領の銀行改革は、究極の措置である銀行解体までは求めていないと
の見方もある。単に銀行の規模を小さくするための解体というよりも、個人の預金と自
己勘定の資金との間にファイアーウォールを築くという考えだ。これは預金者のお金を
使ってリスクが高い投機的な投資銀行業務を禁止するのが目的だ。

 つまり、政府は、顧客の利益を上げるための投資銀行業務は認めるが、セーフティー
ネットで保護されている預金銀行が自己勘定による投資(自己売買)業務を一緒に行う
のは不適切として、そうした自己売買を一切禁止するというものだ。

 ティモシー・ガイトナー財務長官も21日、米公共放送のPBSとのインタビュー番組の中
で、「この提案は大銀行の解体を狙ったものではない」と明言している。その上で、同
長官は「将来の金融システムの安定を脅かす恐れがあるリスク投資を制限するのが目的
だ」と述べている。

 さらに、同長官は「セーフティーネットを利用できる特権を持っている銀行はリスク
投資にお金を使うべきではない」とも指摘している。

 また、政府は商業銀行が自前でヘッジファンドやPEファンドを保有して資金を運用し
たり、外部のヘッジファンドやPEファンドに資金を投資したりすることも禁じる方針
だ。

 こうしたファイアーウォール規制を受ける大手商業銀行としては、シティグループや
バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴなどが想定され
ている。特に、投資銀行のメリルリンチを買収したバンク・オブ・アメリカの場合、デ
ィスカウント・ウィンドウ(FRBが金融機関に直接資金を供給する制度)が受けられるの
は商業銀行だけとなるため、メリルリンチの買収を元に戻す必要性が出てくる可能性も
あるようだ。

 他方、大手投資銀行ではゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどがMB
Sなどへの自己勘定による投資を続けるためには、商業銀行の資格を放棄することが求
められる。これは2008年の金融危機時にFRBの緊急融資制度を利用できるようにするた
め、急きょ、FRBに商業銀行の登録を行っているからだ。

 逆に言えば、これらの投資銀行がFRBのディスカウント・ウィンドウの利用を継続させ
たい場合には、ヘッジファンドやPEファンドを手放すほか、自己売買を制限する必要が
出てくる。

 また、現在は、ある銀行が他の金融機関を買収する場合、全国の総預金残高の10%を
超えるような買収は禁止されているが、これに似た案として、政府では一つの銀行のリ
スク投資額が全国の総預金残高の10%を超えないように上限を設定したい考えだ。政府
としては議会が独自に検討している金融規制改革法案に政府の今回の提案を盛り込むよ
う働きかけていく考えだ。(了)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発 行 元   :「誰でも分かる!アメリカ経済情勢ファイル:ザ・裏読み」
発行責任者  :編集主筆 増谷栄一
ホームページ  :http://www.asahi-net.or.jp/~fl7e-mstn/usfile.html
メールアドレス:FL7E-MSTN@asahi-net.or.jp
………………………………………………………………………………………………
Copyright(C)2000-2009【Eiichi Masutani】 All Rights Reserved.
全文、または一部の記事の無断転載および再配布を禁じます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-26  
最終発行日:  
発行周期:週2−3回  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。