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週刊電藝

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週刊電藝559[100419] マツモト|石川

2010/04/19

■□ 週 刊 ■□weekly DENGEI magazine         [ウエブ電藝]
■□ 電 藝 ■□VOL.559         http://indierom.com/dengei/
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┌ H E A D L I N E ──────────────'10年04月19日 ───┐

   古今漫画夢現            : マツモト
   赤い風船              : 石川カヲル

└─────────────────────────────────┘

 古 今 漫 画 夢 現
 こきんまんがゆめうつつ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ マツモト

          早見純『変態少年―純の幸福な日々』
          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

今回は早見純の『変態少年』である。どう見てもタイトルからしてヤバイ。そ
もそも新年度早々にこのような作品を挙げるのは何とも心苦しいのだが、あま
りにも衝撃的だったのでご紹介したいと思う。早見氏は1978年に週刊少年サン
デーで佳作に入選し、5年の沈黙の後にエロ劇画誌で連載を行っていたという。
ぼくが他に読んだ『ラブレター フロム 彼方』『純のはらわた――血みどろ怪
奇作品集』『純の魂』などから推察すると、氏の作品群には、特に無意味かつ
グロテスクな描写が目立つ。暴力行為は特に可憐な姿の少女たちに向けられ、
その陰惨な表現はそれ以上の説明なしで唐突に終わってしまうことが多い。

この類の作品群は、約20年前の連続少女殺人事件をきっかけに退潮していった
と言われている。しかし、最近になって早見氏の作品はあらたに傑作選と銘打
たれて出版されてきた。私が早見氏の存在を知ったのは、これが背景にあった
のだろうか。2年ほど前に知人は、駕籠真太郎や大越孝太郎の作品の中に『変
態少年』を紛れ込ませて持ってきたのだった。

本書では作者と同名の少年が、自身の抑えきれない性欲をあの手この手で解消
する。醜く鬱屈した表情の純少年は、金槌や五寸釘をもって性器を弄り、セー
ラー服を着こんで少女が凌辱される場面を自ら演じ、あるいは妄想に浸って自
慰行為にふける。

これを初めて読んで、ひどいショックを受けた。生理的嫌悪感が体を走った。
二度と読みたくない、とさえ思った。あまりにも陰湿でグロテスクなのだ。そ
れは、先に挙げた形容と同じニュアンスで言っているのではない。むしろこれ
は、ぼくたちの身近な生活のそばに潜む、性に対する陰湿さであり、グロテス
クさを指す。女性の下着を食い込むほどに穿き込んだり、自らの性器を血が出
るほどに弄り倒したりする者など、ぼくたちが普段生活している生活圏ではお
よそ現れても来ないだろう。しかし、彼のような妄想を、あるいは妄想のごく
一部でも、生まれてこの方したことがないと断言できる者などいるだろうか。
いないはずである。つまり純少年は、この生活世界の中で想像しうる行為の極
北を、あえて、自ら行っているとしかぼくには思えないのだ。

ここまで書くに至り、早見氏がインタビューでこう応えていたのを思い出す。
「自分ほどモラルのある作品を描いているマンガ家はいない」。恐るべき発言
ではないだろうか。いや、早見氏は本心から発言しているのだろう。自身の欲
望を増幅して描き出すことで、彼は人間の欲望にまつわる犯罪に対して警告を
発しようとしている、と考えられる。彼は、本書の最後の作品のように、読者
たちが苦悶し、目や鼻、口から血を噴き出している光景を想像し、自らの名を
持つ主人公を用いて、これでもかとばかりに露悪的に人の醜さを描き出してい
るのだろう。

もっともこのテーマは早見氏の諸作品に通底するものだと思う。しかし申し訳
ないのだが、氏が主に執筆されているホラー作品は先の駕籠真太郎や大越孝太
郎にはいくらか劣るし、徹底さ、豊かさが足りない。そんな中で『変態少年』
は、氏の真骨頂、鬼子であると言いたい。ここまで醜く、いわば自らを題材に
して自虐的に暗部をえぐりだす本書は、他に見たことがない。そういった意味
でぼくは、好悪にかかわらずこの作品を高く評価したい。

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         ◎writer|熊本生まれ。マンガと映画があれば後は何もい
          profile|らないくらいという、身の程知らずの趣味人。
             |いつまでたってもミーハーで集中力がない。映
             |画感想ブログ「じゃあ映画を見にいこう」
             |http://murkha.exblog.jp/があるが、最近は停
             |滞気味。別サイトでhttp://intro.ne.jp/にも寄
             |稿中だが、こちらも…。
             |
             |[電藝 掲載作品]
             |古今漫画夢現   http://tinyurl.com/5oug8k
             |

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赤い風船 20
 ̄ ̄ ̄ ̄ 石川カヲル


  ある日のこと
 
  
 丘をよじのぼると 少し悲しくなった 
 からす、おなが、せきれい、つぐみ
 わたしは鳥と仲がいい
 ありとも少しは仲がいい
 でもありは忙しいし
 鳥が夜、どこで眠るか知らない
 
 ピンポンと宅急便の人がくる
 たぶんいつもと同じ人
 でもその人の名前を知らない
 花の名をたくさん知っても
 花が咲かない日もある
 自らを投げ捨てるかのよう
 虹を探しているひともいる
 
 わたしは丘のうえで
 右手に赤い花を持ち
 ふんわりとした 陽のなかで
 頭上のひかりと考えていた
 せまい あわい
 この世界のすみで


             ┌─────────────────────
         ◎writer|横浜市在住、言葉好き
          profile|海とアボカドとユーモアを愛して29年
             |詩集「時遊時間」 文芸社・1,000円
             |iSBN4-8355-5608-9
             |
             |[電藝 掲載作品]
             |宙ぶらりん家具 http://tinyurl.com/yetkcau
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