その他カルチャー

週刊電藝

週刊で発行している文藝ウェブマガジン。2006年8月現在、通算で370号を超えるバックナンバーがあります。掲載ジャンルは小説・詩・レビュー・エッセイなどなど。投稿も受け付けています。メルマガ掲載後はウェブに掲載します。

全て表示する >

週刊電藝544 [091228] 石川|内外

2009/12/30

■□ 週 刊 ■□weekly DENGEI magazine         [ウエブ電藝]
■□ 電 藝 ■□VOL.544   発行数:285 http://indierom.com/dengei/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┌ H E A D L I N E ────────────── '09年12月28日 ───┐

   赤い風船              : 石川カヲル
   蠱惑(こわく)。           : 内外Knight-guy

└─────────────────────────────────┘


赤い風船 08  
 ̄ ̄ ̄ ̄ 石川カヲル


   2000年

 二千年に一度の
 ぼくの天使
 さまよいながら
 美しくなって
 二千年に一度の
 流星にいだかれ
 くだらない質問ばかり
  
 愛があってもオチがない
 夢があってもイマじゃない
 羽を広げて はるかに還る
  
 二千年に一度の
 ぼくの天使
 かわいい人だよ
 五千年後も
  
 スカートを膨らませて
 空から降りてきた
 きみの天使によく似た
 トランペットをもって
  
 そこの丸窓から
 さっきのぞきこんで
 僕のことを、また
 笑っていたんだよ


             ┌─────────────────────
         ◎writer|横浜市在住、言葉好き
          profile|海とアボカドとユーモアを愛して29年
             |詩集「時遊時間」 文芸社・1,000円
             |iSBN4-8355-5608-9
             |
             |[電藝 掲載作品]
             |宙ぶらりん家具 http://tinyurl.com/yetkcau
             |


          :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:
                  ∵


【Natural born QUEER】
蠱惑(こわく)。
――夏来たりなば、想い出す、悠遠の君。――
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 内外◆Knight-guy◆

=====前回より============================= http://tinyurl.com/yje3tqe

 ……何を期待していたのかと、がっかりしてタカオを見ると、頬を膨らませ
 て咀嚼していた。僕もそれに倣って、残りを一口で頬張った。口から鼻へと
 肉桂の香りが拡がり、僕も頬を膨らませながら、噛み締めた。

======================================================================

                16.

  道はまだ、中程だった。
  歩きながら、しゃぶっては爪先を見て、匂いを嗅いだ。
  爪の間に入り込んだ肉桂はなかなか取れなかった。爪先についた複雑な匂
 いも、なかなか取れなかったが、決して厭な訳ではなかった。自慰の後、い
 つも長い間そうやって匂いを嗅ぐのが癖になっていたのだ。
  くんくんと嗅いでいたら、タカオがはたと立ち止まって振り返った。
 「なあ、さっきの蛇、凄かったな。」
 「う、うん。」
  突然言われて戸惑い、匂いを嗅いでいたのを見られただろう事にも狼狽(
 うろた)えて、吃ってしまった。タカオは何故、急にそんなことを思い出し
 たのだろうと、訝しみもした。
 「蛇はなあ、男の象徴なんだぜ。知ってたか。」
  象徴とは、どういう意味だろう。その意味自体は、ぼんやりとながら分か
 らなくはなかったが、何故男と関係するのだろう。そこまで考えて、鎌首を
 擡げたまま進む蛇の姿と、先程のタカオの突起とを思い出し、何となく納得
 してしまった。タカオは、さっきのことをずっと考えていたのかも知れない
 と思うと、匂いを嗅ぎながら同じ事を考えていた僕は、共犯者意識にも似た
 感覚を覚えていた。
  タカオもきっと、さっきのことが忘れられないのだろう。そう思うと、嬉
 しかった。
  
  タカオとは、ぼそぼそと別れの言葉を交わし、自転車に跨った。
  懸命に自転車を漕いで家に帰ったのに、玄関を開けるといきなり母に大目
 玉を喰らった。
  僕がタカオと一緒に出掛けたことは知っていたらしいが、今まで母よりも
 遅く家に帰ることなどなかったので、心配半分怒り半分といったところのよ
 うだった。膝を大きく擦り剥いていることも、心配するよりも怒りの対象の
 ようだった。それよりも、草の汁や泥に塗(まみ)れたワンピースを見た母
 は、ヒステリックな声でお転婆も程ほどにしなさいと叱った。きいきいと何
 時までも叱るので、うんざりとしながら頭を垂れて遣り過ごした。虫捕り網
 と虫籠は自転車の横に置いてきたので、虫捕りに行っていたことも言わず仕
 舞いになり、虫籠を壊してしまったこともばれずに済んだ。しかし、何をし
 て遊んでいたのかとも聞かれないことに、少しの淋しさも味わっていた。
  母は、叱るだけ叱ったら気が済んだのか、夕飯の支度に台所に行ってしま
 ったので、僕は薬箱からオキシフルを取り出して脱脂綿に浸すと、傷の手当
 を始めた。しゅわしゅわと泡が限りなく立ち、激痛に痺れるようなのを堪え
 ながら、歯を喰いしばり何度も拭ってみたけど、こびりついた血はなかなか
 取れなかった。そうしながら、昼間タカオが蒲の穂で傷の手当をしてくれた
 ことを、思い出していた。
 「何時までやってるの。勿体ないからもう止めなさい。」
  台所から覗いた母が、僕の様子を見るや否やそう駄目出しをしたので、す
 っきりしないままオロナイン軟膏を塗って手当を終わりにした。しかし、居
 間の座椅子に凭れながら、テレビの画面を眺めていても、昼間のことがずっ
 と頭から離れず、ぼんやりとしたままタカオのことばかり考えていた。
  痛かったこと、しかし、タカオの優しさが嬉しかったこと、タカオの悪戯
 っ子のような笑い顔、そして蒲の穂のような突起。そこまで思い出すと切な
 くなり胸がきゅんとした。同時に女性器もきゅんと疼いた。この、胸と女性
 器が同時に疼く感覚は、一体何だろう。僕は説明する言葉を持っていなかっ
 た。
  
  暫くすると、父が帰って来た。
  まず僕の膝の傷に気づいて、吃驚したようだった。
  なんでそんなに擦り剥いたのかと、親として当然のことも聞いてくれたの
 で、僕はちょっと躊躇った後、虫捕りに行って坂道で転んだと、秘密の部分
 はすっかりこそげ落として喋り始めた。途中の森の中で、タカオに追いつけ
 ず泣いたことは黙っていたが、タカオが水で洗って蒲の穂で傷を労わってく
 れた辺りになると、口を尖らせ身振り手振りも加え、得意気に喋り捲ってい
 た。
 「そうか。タカオちゃんに優しくしてもらえてよかったね。」
  そう言って、父は微笑んだ。
  僕は大きく頷いた。僕も自然に笑みが溢れていた。
                              (以下次号)


             ┌─────────────────────
         ◎writer|トランスジェンダーFTM・パンセクシュアル。
          profile|レインボーな僕。
             |
             |[電藝 掲載作品]
             |悍ましきものと、それを愛でて止まない、僕と。
             |         http://tinyurl.com/rywva3
             |エレクトラと、阿闍世の複合の狭間で
             |僕は、カントフォビアな夫と共に。
             |         http://tinyurl.com/m944zw
             |畸形の蕊を持つ虚仮の僕は、
             |月明かりの中、秕(しいな)にも為り得なく。
             |         http://tinyurl.com/l8gw7h

       :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:
                ∵


┏━━━━━ 電藝編集部はつねに新しい書き手を求めています。 ━━━━┓
┃                                 ┃
┃         http://formmail.jp/00026730/          ┃
┃                                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
                ∵

       :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:

|weekly DENGEI magazine
|週・刊・電・藝

|◇発行元  電藝編集部(メールはhttp://formmail.jp/00026730/
|◇編集人  吉田直平

|・本誌は等幅フォントに最適化されています。
|・本誌は以下の配信システムを利用して発行しています。
|   まぐまぐ/melma!/めろんぱん/メルマガ天国/カプライト/
|   ヤフーメルマガ
|・配送アドレス変更、読者登録解除は
|  http://indierom.com/dengei/info/reader.htm
|・ご意見、ご感想は電藝ビビエスまで
|  http://www1.rocketbbs.com/412/dengei.html
|・mixiコミュニティ「電藝 for ミクシ」にもどうぞ。
|  http://mixi.jp/view_community.pl?id=526988
|・バックナンバーはウエブ電藝 http://indierom.com/dengei/
|・各作品の著作権はそれぞれの執筆者に属します。本誌に掲載された作品
| の無断転載を禁じます。
|(C)2009 dengei

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-01-27  
最終発行日:  
発行周期:毎週月曜発行  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。