文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL176

2019/09/06

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   

              VOL 176
   
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お待たせ致しました。
今月号のリーフノベルです。 

リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
短編読み切り小説です。
幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

    
     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載
リーフノベルを東金市情報誌「ときめき」に連載中
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  ■☆■☆■☆■☆  リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆



  ■■■■■■■■■■  自然探検部 ■■■■■■■■■       
                               
  
   隆二は東京以外の町で暮らしたことがない。学校と学習塾を行き来し、都内の

 大学に入学し、のんびりした日々を送っていた。

  大学の授業は思っていたほど面白くもなく、カラオケやゲームセンターに行く

 のも飽きていた。そんな折自然探索部に勧誘されたのだった。

  手渡されたチラシを見ると、

 「都会は人間の作ったまやかし物で充満している。今こそ自然の美しさを再認識

 しよう」そんな文面が書かれていた。

  自然とは何だろう。テレビや映画で見る谷川やジャングルのことだろうか。こ

 の探索部では、自然をどうとらえているのだろうか。隆二は興味がわく部室を訪

 ねた。

 「きみ、クニはどこ?」

 部室に入ると親しげに声を掛けてきたのは副部長の太田だった。

 「東京です」

 「なるほど、それで自然に憧れたって訳ね。大歓迎だよ。説明するから良かった

 ら入部してよ」

  太田は汚れたアルバムを取りだし、

 「これは去年蓼科でキャンプした時のもの。これが八甲田へ行ったときの写真。

 こっちが一昨年筑波山での合宿風景だ。みんな楽しそうだろ」自慢そうに話した。

 「キャンプ地ではどんなことをするんですか」聞くと、

 「野鳥の声を聞きながら写真を撮り歩く者もいるし、山菜を積んで食う奴もいる。

 一日山の中をほっつき歩いているのもいるし、いろいろだよ」

  太田の説明に隆二は都会では味わったことのない何かがありそうに思え、

 「いいですねえ。僕の憧れだ」深い意味もなく答えた。すると、

 「人間の先祖は自然の中で自然の恵みを受けて生きて来たんだ。我々のDNA に

 は自然との共存体制がインプットされている。決して都会生活に会わせて作られ

 てはいないんだ。人間が横着の為に作った文明は排気ガスで大気を汚し、川には

 重金属が流れ出し、多くの自然動物を死に追いやった。それに引き替え山々の自

 然の中にはマイナスイオンが充満し、新鮮な空気に満たされている。自然の素晴

 らしさを呼び戻さなければ、人類は滅びの方向に向かうことになる」

  太田は自分の言葉に酔ったようにまくしたてた。隆二も太田の意見に納得し、

 今まで東京しか人の住処はないと思っていた自分を恥ずかしく思った。

 「東京の塩素臭い水道水じゃなくて、自然の水はおいしいでしょうね」

 隆二はボトル入りの自然水が、無料で大量に流れている谷川の光景を思い浮かべた。

 「言うまでもないさ」太田は誇らしげに言った。

  その日隆二は大学で知り合い親しくなった達夫に、一緒に自然探求部に入らな

 いかと声をかけてみた。隆二は達夫に太田から聞いた話を受け売りした。達夫は

 岩手県の山奥の出身だった。隆二の話を聞き終わると達夫は、

 「それって、自然のことを何も分かってない人間の戯言だよ」こともなげに言った。

 「自然の中で生きるってそんな生やさしいものじゃない。俺のお祖父さんは病院

 がなかったために盲腸なんかで死んだし、ガスや水道もなくはないけど、山から

 出る枯れ葉処理のために風呂は薪で炊くし、自然の水なんて谷川まで行かなきゃ

 飲めないんだ。冬は雪に覆われて外には出られないし夏は蚊や毒蛾が家の中に入

 り込むんだ。蛇がタンスの中でとぐろをまいていいることだって珍しくもないん

 だぜ」隆二は背筋がゾッとした。

 「少し大げさなんじゃないのかい?」聞くと、

 「事実だよ。ただ傍目には四季折々の草木に囲まれて楽園に見えるのさ。たまに

 来て自然に触れた気になるにはいい所さ」すると隆二は食い下がった。

 「でも先輩は都会に喜びはないって言ってたぞ」すると達夫は、

 「そう。それじゃ彼らが一度もカラオケやファミレスにも行ったことがないなら

 その言い分を認めるけど」達夫は更に続けた。「自然は頑固で融通の利かないおや
 
 じ、都会は放任主義の母親みたいなものだ。それを自覚していない人はうわべの

 山に憧れたりするのさ」言い残して席を立った。

  そんなことがあったが隆二は自然探索部に入部したのだった。三年経った今

 も、自然の何たるかが隆二には言葉にできないでいるのだった。



                    

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                 METAMORPHOSESに掲載作品






YOSHIRO TAKAYASU
Translated from the Japanese by Toshiya Karmei


            The Nature Exploration Club


      Ryuji had lived in Tokyo all his life. After shuffling between high
school and cram school, he got accepted into a well-known college in To-
kyo to study law and began spending his time in great leisure. His classes
didn't interest him as much as he had expected, and karaoke bars and video
arcades soon lost their luster for him. Then one day someone handed him a
flyer inviting students to join the Nature Exploration Club. It read, "Large
cities are filled with shoddv, man-made stuff. Now is the time to rediscover
nature
's beauty."
   "What is nature?" he wondered to himself, tilting his head. "May-
be mountain streams and jungles you see in movies and on TV? Or natural
disasters like typhoons and earthquakes? What do the club members think
of nature?" Out of curiosity, Ryuji visited the clubroom.
      Once inside, he was greeted by Ota, the deputy director of the
club. "Hey, where are you from?" he asked in a friendly manner.
      "I'm from Tokyo, born and bred."
      "I see, that makes sense. That's why you're longing for nature.
You're very welcome to join us. Let me explain what we do." Ota took out
a grimy photo album and began to turn the pages. "This is when we went
camping in Tateshina last year. This is when we visited Mt. Hakkoda. Two
years ago, we camped at Mt. Tsukuba. We look like we're having fun, don't
we?" he boasted.
      "What do you do when you go camping?" asked Ryuji.
      "That really depends. Some spend their time listening to wild
birds chirp while taking photos. Others gather wild herbs and eat them.
Some others spend the whole day trekking. So it's really up to you."
      "Sounds great," Ryuji nodded nonchalantly, thinking that he
might find something he had never experienced in Tokyo if he went camp-
ing with them.
      "That's right. Our ancestors lived in nature while receiving its
blessings. Genetically speaking, we humans are supposed to coexist with
nature. We're not meant to live in urban areas. Out of sheer laziness, hu-
mans have built civilizations that sully the atmosphere with car fumes, con-
taminate rivers with heavy metal, and kill off numerous wild animals. On
the other hand, nature in the mountains is filled with negative ions and
fresh air. If we don't regain the splendor of nature, we'll all die out eventu-
ally," Ota uttered, intoxicated by his own words.
     Ryuji agreed with Ota, and felt embarrassed at having thought To-
kyo was the best place to live. "I imagine natural water tastes delicious. Our
tap water here smells like a swimming pool." He imagined natural water
flowing in a valley river, which was sold as bottled water in grocery stores
and convenience stores.
     "You're right about that," Ota said, sounding proud.
     That day Ryuji asked his classmate Tatsuo if he was also interested
in joining the Nature Exploration Club, telling him what Ota had told him.
Tatsuo was from a mountain recess in Iwate, a snowy northern prefecture.
     "That's silly. They have no idea what nature is all about," he said
casually after Ryuji finished his talk. "My grandpa died from an appendix
infection because there was no hospital nearby. We have gas and water, but
we heat bath water with burning wood in order to get rid of dead leaves.
And you can't drink natural water unless you go to a valley river. Because of
heavy snowstorms you're cooped up inside during the whole winter. As for
the summer, homes are invaded by mosquitoes and poisonous moths. It's
not rare that you find a snake in your chest of drawers."
     "Is it really like that?" Ryuji asked as a shiver ran down his spine.
     "Yeah, essentially so. But it seems like a paradise surrounded by sea-
sonal colors to outsiders."
     "But Mr. Ota said you can't find pleasure in large cities," Ryuji said.
     "Oh really? I'd say they were right if they had never gone to karaoke
bars or diners, not even once," Tatsuo said. "Nature is like a stubborn, in-
flexible father, and a city is like an overprotective mother," he added before
getting up and walking away.
     "I see. You just need to learn only good things from both of them,"
Ryuji thought to himself, making up his mind to join the Nature Explora-
tion Club.

     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○● 
 
 身の回りを片付けられない人間の実態を、さるテレビ番組で放映していた。
物が捨てられない人間は、やがてゴミの中で生活するようになるらしい。
あきれたものである。とは言うものの、物が捨てられない感覚は私自身分からないでもない。
『この金具はいつか使えるかも知れない』『この紐の切れはじも役に立つことがあるだろう』
そう思うとついついいろいろな物をため込んでしまうのだ。私の姉は、一年使わなかった物は
要らない物と判断しどんどん捨てると言う。だからだろうか姉の家はいつも整然としている。
言われてみれば、私がとって置いた物が役にたたったことも幾度かはあったものの、引き出し
から出てくる物は、もう何年も使われたことのない物ばかりだ。巻き戻せなくなった犬の散歩
用のリードや、吸盤の効かなくなったハンガー。頭の潰れた木ねじや針の折れた目覚まし時計
など、確かに思い切って捨てた方がいいのかも知れない。先日そう思って十個の引き出しの中
を整理し、思い切って捨てようと決心した物を段ボールにたたき込んだ。整理が終わった後で
軽くなった引き出しにほっとした物を感じた。そして捨てる物を押し込めた段ボールは物置に
しまった。いやはや、私の場合はもう病気の内かも知れない。(2019.9,6)

 今回の作品「自然探検部」はは亀井敏也氏により翻訳されアメリカの雑誌「METAMORPHOSES」
に掲載されたので翻訳文も掲載しました。



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http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html 
には、他の作品も掲載しております。 
またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。 
まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
 
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
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