文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL173

2019/05/23

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   

              VOL 173
   
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お待たせ致しました。
今月号のリーフノベルです。 

リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
短編読み切り小説です。
幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

    
     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載
リーフノベルを東金市情報誌「ときめき」に連載中
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  ■☆■☆■☆■☆  リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆



  ■■■■■■■■■■  二十人塚  ■■■■■■■■■■       
                              

                                      
      私の生まれ育った町には、西山からの絞れ水を集め、絶えず豊富な水を流す大

  川があった。この川にちなむ悲惨な話を、私は子供の頃祖母から聞いたことがあ

  る。

   それは今から八十年ほど前のことである。

   かつてこの大川をはさみ北村と南村があり、子供達はなぜか相手村の子供達と

  絶えず喧嘩をしていたという。

   ある秋のこと、北村の子が川を渡り南村の川辺に生えた葦に火をつけた。葦は

  たちまち燃え上がり、十人の南村の子が大やけどをし、中には足の指を落として

  しまった子供まででた。そんなことがあって後、南村の子供達は『二度と喧嘩は

  しない』と宣言し、河原を花畑にしようと考えた。広い河原に菜種を蒔くと、翌

  年の春は菜の花が河原一面に咲きそろった。夏はひまわりが咲き、秋はコスモス

  が広がる花畑になった。この花畑の見事さに近隣の町からも大勢の見物人がやっ

  て来た。その花畑を見た北村のガキ大将が言った。

  「俺たちだって花は好きだ。だから花泥棒が来たら追い払ってやる。だから俺た

  ちも花畑に入れさせろ」

  南のガキ大将は言った。

  「いいとも。俺等はもう喧嘩はしねえと決めたから喧嘩はできねえ。だから用心

  棒になってくれ」

  北と南の長年に渡る喧嘩はそれで収まったかに見えた。

   最初の内は北側の子達は遠慮がちに花畑を楽しんだ。だが何度か花泥棒を追い

  返して手柄を立てると次第に威張りだし、

  「花畑が無事なのは俺たちのお陰だ。だからこの畑の半分を俺たちによこせ」

  そんな要望を出してきた。南の子達は怒って言った。

  「ふざけるな。そんなことを言うんなら出て行け。俺たちは本当は、まだ北の奴

  らが火をかけたことをまだ許してねえぞ」

  するとたちまち喧嘩になった。

  「あの時、あれ以上喧嘩を続けたらお前等南の奴らが全滅するから、火をかけて

  喧嘩を止めてやったんだ」

  「何だと、味噌っかすの子供まで火傷したんだぞ。屁理屈を言うな」

  「うるせえ。こうなたら腕ずくで占領してやる。お前等が喧嘩をしねえと言った

  って、俺たちはやめてねえ。こちらには空気銃もあるんだからな。明日の夕方こ

  こに俺たちの小屋を建てるからそう思え」

  捨て台詞を残して引き上げていった。

  南の子供達はがたがた震えた。大人達に相談すると、子供の喧嘩は子供同士で型

  をつけろと言うばかり。

  「喧嘩をしないなんて言ってられねえ。俺たちも木刀を用意しよう」<

  「そうだよ。花畑を壊されるのはしゃくだ」

  皆口々に言った。すると大将が言った。

  「おいらみてえに大けがをするかも知れねえ。攻めてきたら逃げるだ。花畑はま

  た作ればいい」

  必死の説得に何人かは家に帰った。だが、

  「攻められたのを守るのは喧嘩じゃねえぞ」

  「そうだよ。喧嘩じゃねえ。よし、護身用に父ちゃんの猟銃持ってくる」

  一人が家に帰り銃を持ち出した。ところを親に見とがめられ、納屋に閉じ込めら

  れてしまった。

   翌日の夕方のことだった。北の子達が手に手に棒や木刀を持ち川を渡ってき<

  た。夕暮れに降り出した雨が大降りになり出した。数日前から警戒されていた

  台風が来たのだ。西の山ではすで山崩れを起こしていた。北の子が枯れかけた

  コスモスに火をかけ、ワーっと鬨の声をあげた時だった。西山に降った水が鉄

  砲水となり押し寄せてきたのだ。北の子も南の子もあっという間に花畑もろと

  も濁流に押し流されてしまったのだった。

   嵐が収まり救出活動が行われたが、南の子が十人、北の子も十人死んで見つ

  かった。<br>
   翌年何も無くなった河原には『二十人塚』の慰霊碑が建った。その塚は今で

  は半分土に埋まって見分けさえつきにくい。

   祖母のこの話を私は人に聞かせては、何が間違っていると思うか聞いてみる

  のだが誰一人納得のいく答えをしてくれる者はいない。祖母はこんな事も言っ

  ていた。

  「誰にも負けないくらい強くて、それでいて喧嘩しないのが賢いことだ」と。

  祖母のこの言葉を今でも私の胸に残っている。だから、私にはほとんど腕力は

  ないのだが、人と争ったことはない。


              
                                                           翻訳 

                     THE Grave of the Twenty Dead    (Translated BY  Toshiya  Kamei)

                    (雑誌 The Broken Plate 掲載) 

       

        A large river ran through my hometown, collecting spring water from the western hills and eternally flowing in 

abundance. When I was little, my grandmother told me a tragic story about this river.

   It all happened about eighty years ago. The river split the area into two ? the north village and 

the south village ? and for some reason, children constantly fought their counterparts from the other side. One autumn, the north village's children

 crossed the river and set fire to the reeds growing by the water. The flames engulfed the riverbank in an instant, and ten

 children from the south village were severely burned, some of them losing their toes. After that incident, the south village's

 children swore never to fight again and decided to turn the riverbank into a flower garden. They sowed coleseed, and the 

following spring it became strewn with yellow blossoms. During summer, sunflowers bloomed, and cosmos flowers spread along 

the river in autumn. A great number of people came from the neighboring towns to admire the flower garden.


     "We love flowers, too," said the gakidaisho, leader of kids, from the north village, after seeing the garden. "So we'll

 keep away thieves. So let us come in."

         "Alright," said the south village's gakidaisho. "We decided not to fight again, so we can't fight. We want you to be our

 bodyguards."

               The long feud between the villages was seemingly over.
 
               At first, the children from the north enjoyed the garden with some hesitancy. But after chasing away flower 

thieves a few times, they gradually began to swagger. "Thanks to us, the garden is safe. So we want half of it," they demanded.

               Furious, the children from the south said, "Bullshit! Shut up or leave! We haven't forgotten the fire!"

               Thus a fight broke out.

               "We did it to stop fighting ? if we had kept on fighting, we would've defeated you completely!"

               "What? Even our younger kids got burned. Stop quibbling!"

               "Shut up! Then we'll take it by force. I know you won't fight, but we will. We have air guns. Tomorrow evening

 we'll build a hut here," said the children of the north before walking away.

                    The children of the south trembled with fear. Adults told them to deal with it on their own.

"We have no choice but to fight," said one child. "Let's bring wooden swords."

             "Yes," said another. "We'd hate to see the garden destroyed."
 
             "You could get badly hurt like me," said the gakidaisho. "We need to run when they come attacking. We can make a flower garden again."

Persuaded by his words, some went home.

            "But self-defense is not fighting."

            "No, it's not. Well, I'll bring my dad's hunting rifle," one child said.

             Returning home, he tried to take a rifle with him. But his father saw him and locked him up in the shed.

            The following evening, the north village's children crossed the river with sticks or wooden swords in their hands. The 

rain that had begun at dusk became heavy. As feared, a typhoon came down on them, already causing a mudslide in the western

 hills. The children from the north set fire to the withered cosmos flowers and screamed war cries. In that instant, the rain 

triggered a flash flood, roaring down from the western hills. Along with the flower garden, the children from both villages got

 swept away by a muddy current.

            After the storm, the villagers found twenty dead bodies ? ten from the south, and ten from the north.

            The following year a memorial stone for the dead was erected on the empty riverbank. Now half buried in the mud, the 

grave is hardly noticeable.

            I tell people my grandmother's story and ask them what went wrong, but no one gives me an answer that satisfies me. My 

grandmother once said, "A wise man doesn't fight, even though he's stronger than anymore else." Her words still resonate in my

 heart. So I'm not very strong physically, and I never get into a fight.

  


     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  
 先日夕顔の種を蒔いた。この種は実に頑固な種で、菜種のようにただ土にばらまき水さえやれば
勝手に発芽するというものではない。なぜなら夕顔の種は種の中に双葉を内蔵しており、その双葉
はカラカラに乾燥した状態で詰め込まれているのだ。しかも、この双葉は丈夫な表皮で覆われてお
り、水を含んで柔らかくなっても自力では破けないのだ。その為種まきの前にやすりで表皮を傷つ
け、裂け目をつけてやらなければならないのだ。私の知人がヤスリの代わりにペンチで割って見た
ところ、ほとんど発芽しなかった。幾つか芽を出したが、出た双葉は細切れになった状態の葉がわ
ずかに出、本場が出るまで一月以上の日数を要した。思うにペンチで表皮を割ると、乾燥していた
双葉がばらばらになってしまうのだ。                    
ふと、人間の成長を思った。よしんば何かの才能があったとしても、それを見事に開花させるには、
少しの手助けだけでよいのだと教えられたような気がした。なまじ発芽に邪魔な表皮をスパルタ
よろしく打ち砕いては、元々持っていた才能まで打ち砕き発芽どころか苗にさえならないことがあ
るだろう。才能などなくとも菜種のように容易に発芽し、平凡な花を咲かせ、多くの実(種)を残
す凡人の方が、ことによると幸せというものを享受できるのかも知れない。
そんな事を思わせてくれた種蒔きだった。
 今回の掲載作品は、亀井敏也氏により翻訳されアメリカで紹介された作品です。
                            (2019.5.23) 
    



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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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