文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL172

2019/03/27

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   

              VOL 172
   
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お待たせ致しました。
今月号のリーフノベルです。 

リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
短編読み切り小説です。
幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

    
     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載
リーフノベルを東金市情報誌「ときめき」に連載中
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  ■☆■☆■☆■☆  リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆



  ■■■■■■■■■■  俺は霊魂?  ■■■■■■■■■■       
                              

                                      
  ある日突然、俺は窮屈な穴から抜け出した。足元にあるベッドには頭に包帯をした男

 が死んだように横たわっていた。見ると男は俺だったのだ。俺は死んだのだろうか。死

 んだのなら俺はいったい何だ。

 霊魂とか言う言葉はよく耳にするが、まさか俺がその霊魂だろうか。いや、そんなは

 ずはない。霊魂とは自我のことだが、自我は肉体の成長過程で芽生えるもので、言わば

 肉体そのものが俺自身だ。だがそう考えると不思議に思えることがある。そもそもこの

 肉体は父母から分けられたものだが、人間の体には六十兆個の細胞があり、その中の一

 個の半分ずつを両親からもらい受けて受精卵が出来る。つまり一人の人間は六十兆分の

 一の更に六十兆分の一の格率で俺の体ができあがる。個々の生物は総てそんな低い格率

 でできているが、人の場合その一つの細胞が自分を意識するようになるわけだ。

 不思議なのはそんな偶然の一つが選りに選ってどうしてこの『俺』なのかと言う事だ。

 つまり俺が俺として生まれ出る格率はあまりにも低すぎる。一センチ四方の紙に名前を

 書き地球上のどこかに吹き飛ばし、適当に投げた針がその紙に突き刺さる格率よりもも

 っと低い。それを考えると、やはり霊魂かその類のものを考える方が、俺の存在を理解

 しやすいかも知れない。つまり肉体が出来上がった頃霊魂の俺が入り込み、成長するに

 したがって俺の意識が目覚める。そう考えれば俺がここに居るわけも納得がいく。だが

 そうなると霊魂はどこかに待機していたことになる。そして肉体が死ぬと抜け出し次の

 命に入り込むのか。そのように生まれ変われ、やり直しも可能だ。やり直せるなら自殺

 も人殺しもさほど罪は重くないことになる。ゲームの初期化と同じだからだ。だが地球

 が誕生して六十五億年の間、俺は古代生物だった記憶も秀吉の時代の記憶もない。やは

 り俺は今の時空にだけ存在している。『生まれ落ちた時に前の記憶は消え去るのだ』と

 さも見てきたようにある宗教家は言うが、都合の良い空言にしか思えない。やはり霊魂

 説は受け入れられない。そうなると最初考えたように自我は、一個の細胞が積み上げた

 記憶ということになり、俺は偶然出会った両親の細胞そのものに他ならない。だが待て

 一卵性双生児はもともと一つの受精卵だ。しかし兄は兄、弟は弟で別の人間で自分が二

 人居るわけではない。やはり霊魂説が正しいのだろうか。いずれにせよただ一つ言える

 ことは、死ねば俺という人間は二度とこの世には出現しないということだ。それならば

 これまで軽く思っていた仲間や家族や犬猫も、偶然この世に生を受けた希有の存在とい

 うことになり、あたら粗末には扱えないことに気づかされる。そんな事を考えていた時

 だった。ベットの男の体がぴくりと動き計器のモニターに激しい波形が現れた。医者が

 飛んで来た。

 「よかった。意識が戻りますよ。もう一眠りしたら声を掛けてあげてください。今は夢

 を見ていることでしょう」

 ベッドの傍らに妻が居た。妻はほっとしたような顔で医者に頭を下げた。その途端俺

 はまた窮屈な体の中に引き込まれて行ったのだった。

 「この土砂崩れの中で助かったのはご主人お一人だったようです」看護師が妻に言った。

 俺は思い出した。十人ほど客を乗せた路線バスが隧道を出た所で土砂崩れに遭い転落し

 たのだ。乗客は皆亡くなったようだ。俺はこの時始めて生死の偶然を再認識し、命を取

 り留めたこの肉体が愛おしくなった。思えば妻が生まれたのも偶然だし結婚したのも偶

 然の出会いだった。生まれた子供も偶然であり、すべて偶然の結果が生命の世界を作っ

 ているのを今更ながら思うのだった。偶然を大事にしよう。どうして俺が俺なのかと言

 う事は、愚然出来たこの世界ではさほど大事な事ではないのかも知れない。

 思えば地球も偶然の産物ではないか。そんな事を呟きながら俺は眠った。翌朝妻がカ

 ーテンを開ける音で目を覚ました。明るい陽射しが差し込んできた。


●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  
  竹田恒泰著『日本の民主主義は なぜ世界一長く 続いたのか』を読んだ。そこには
 天皇制に関する考え方や、民主主義が必ずしも正しいものとは言えないことなどが解か
 れていた。竹田氏の考えは、期せずして私がこれまで考えてきたことをほぼそのまま肯
 定し、裏付けてくれるものだった。その意味で、これまで私が読んだ書物、それはかな
 り少ないのだが、一番腑に落ちるものだった。
 そもそも、『民主主義』という言葉を出せば全て正しいと思っている人間が回りに多く、
 馬鹿な民衆が揃えば、国政は馬鹿な方向に行くことに気づいていないことにこれまで
 はがゆく思っていたのだ。ことによると私の考えが間違っているのかも知れないとい
 う不安も無くは無かった。だがこの著書が私を勇気づけてくれた。国が不幸な方向に
 向かうのは民衆の未熟な考えと未熟な人間達を先導する者、特にマスコミに大きな責
 任があると常々思っていたが、それも竹田氏は見事に指摘されていた。むろん、竹田
 氏の考えが完全に正しいと断言する気はないが、少なくとも私の意を強くしてくれた
 ことだけは確かだ。さる新聞社。はっきり言おう。朝日新聞が騒ぎ立てた慰安婦問題
 などは国に莫大な損失を与える元凶を作った。これについて何ら責任をとらない朝日
 新聞に私は憤慨していたのだが氏の著書には、第二次大戦を先導したのも朝日新聞だ
 と言及しているのを読み、ますます許せなくなった。これまで私は朝日新聞が世論を
 戦争に導いた先鋒だったことを知らなかった。その朝日新聞は今頃になって、共産党
 がよく使う目先の似非(えせ)平和主義者を気負っているのが、偽善者躍如たるもの
 があるではないか。
 竹田氏はこうも言っている。一つの考え方に偏ることが危険だと。先導されかねない
 からだと。先導は不満をかき立てるとこるに入り込んでくる。そんな事も行間で言っ
 ている。従って、私も多々ある不満もこのくらいにしておこうと思う。(2019.3.27
 


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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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