文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL170

2018/11/28

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   

              VOL 170
   
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お待たせ致しました。
今月号のリーフノベルです。 

リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
短編読み切り小説です。
幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

    
     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載
リーフノベルを東金市情報誌「ときめき」に連載中
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  ■☆■☆■☆■☆  リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆



■■■■■■■ 無口な女房  ■■■■■■■       
                           

  我が家の女房はとにかく無口で、特別な用でもなければ一日話さないことがある。

 私もどちらかというと余計な事は話さない方だが、私は正確に言葉を選ぶ癖があり、

 それでついつい口数が減るだけなのだ。だが女房はこれといった理由はないらしく、

 友達が来ても専ら聞き役に回っている。

  ある時、

 「あまり話さないのはどうしてだ」

 と聞いたことがあった。すると女房は、

 「話さなくたって」と言うのだ。

 「じゃ俺に何かあっても黙ってるのか?」と聞くと、

 「分かってるから」

 とだけ言って後は何も言わなかった。

  我が家の音と言えば女房の足音とテレビの音。そして時折道路に向かって吠え

 る座敷犬の柴犬ゴンの声くらいのものだ。

  そんなある日、遠くに嫁いだ娘の産後の肥立ちが悪く、しばらく赤ちゃんの面

 倒を見てくれと言われ、女房は家を留守にすることになった。

  静かな我が家はいっそう静かになった。ゴンの餌係は必然的に私になった。ゴ

 ンは変わり身が早くすぐに私になれなれしくなり、夜などは枕元にすり寄ってく

 る。犬がこんなに可愛いとは思わなかった。口が利けたらもっと可愛いだろうな、

 などと思った。
 
  妻がいなくなって一週間もすると、人の気配のないことが寂しくなってきた。

 ラジオをつけても一方的に音が流れる。テレビをつけれ埒(らち)もない勝手な

 おしゃべりが馬鹿馬鹿しい。車に乗ればベルトを閉めろという電子音がするくら

 いで、空しさは余計に募るように思えた。寂しくなり女房に電話をしたが、

 「今ミルク」

 「今おむつ」とだけ言ってほとんど話相手をしてくれない。せめて犬が俺の言葉

 に返答してくれないものかとそんな事を思ったりした。

 寂しさをつくづく感じ始めたある日、書き物の途中で空腹と眠気を感じ、ゴン

 を車に乗せ近くのスーパーに買い物に行った。犬に話しかけながら車を走らせる

 と、シートベルトの閉め忘れを知らせる発信音がした。

 「近くだからいいんだよ、なあゴン」ゴンに話しかけた。すると、

 「そうはいきません。規則ですから」そう車が言うのだ。

 「うるさい。少しは融通利かせろ」

 と言うと、

 「あなたは学校の先生なのに、規則に従わないんですか」

 と言う。何故かむっとした私は、

 「誰にも迷惑かけてないだろ。もう着くからいいんだ」

 ぶっきらぼうに言うと、

 「では警察に通報します」と言う。

 「勝手にしろ」そう言ってやった。

  買い物を済ませて駐車場に戻ると、警官が一人車の脇に立っていた。

 「何か?」聞くと、

 「今車から連絡がありまして、あなたがシートベルトをしていなかったと言うの

 ですが、認めますか」

 と言う。私は、

 「何かの間違いでしょう」

 そう言ってとぼけた。すると車は、

 「間違いじゃありません。忠告を無視したんです」と言う。

 「困りましたねえ、これじゃ水掛け論になりますから誰か承認はいませんか」
 
 警官は車の中を覗き込みながら言った。すると、

 「承認ならいます。助手席にいるゴンに聞いて下さい」車が言う。

 するとゴンは一声吠えてから、

 「この人ベルトをしていなかったよ。僕のご飯も忘れることがあるんだ。この前

 は家の鍵を忘れて。忘れん坊なんだこの人」

 犬が喋ったことより、違反を暴露された事の方がショックだった。

 「では違反が立証されたので減点となります」警官が言った。

 「飼われている恩も忘れやがって。済んだ事や関係ねえ事まで。このお喋りの馬

 鹿犬め。沈黙は金、お喋りは鉄さびだぞ」小声で言うと、

 「そうよゴン、すんだ事や余計な事を話さないのが愛情なのよ」

 どこからか聞こえてきた妻の声に私は目を覚ました。

  私は机に寄りかかり居眠りをしていたのだった。

  なるほど妻の無口はまさに金なのだと今更ながら思えてきた。その時電話がか

 かってきた。女房からだった。

 「明日帰れます」それだけ言ってきた。私も余計な事は言わず、

 「わかった」とだけ言った。

 それだけなのに、娘が元気になったらしいことや赤んぼうの順調さなど、こまご

 まと伝わってきたのが不思議だった。


    ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

  
 最近気になっていることを記したい。
先日初めて見たテレビ番組の中で思ったのだが、チコちゃんとか言う
キャラクターがいろいろな質問を大人に投げかけ、答えられないと
「ぼうっと生きてんじゃねえよ」と、ののしるのだが、確かに常識
的なことも分からない大人には丁度良い台詞かも知れない。だが、
そんな中にこんな質問があった。『花にはなぜいろいろな色がある
のか』というものだ。この質問にある専門家はこう答えていた。
「虫によって反応する色が違うので、いろいろな虫を呼ぶために
様々な色の花を咲かせるようになったのだ」と。この答えに出演者
達は、(おそらく多くの視聴者もそうだろうが)なるほど、
と納得していた。だが考えて貰いたい。
もしこの専門家の説明が正しいのならば、花には意識があることに
なる。しかも意識することで遺伝子を変えられることにもなる。
この答えに納得している人間にこそ私は「ぼうっと生きてんじゃねえよ」
と言いたい。たまたま突然変異やサフランの根にあるコルヒチンと
言った科学物質の影響や紫外線などにより遺伝子が変化し、偶然多く
の色の花が出来たのであって、その結果として様々な虫が寄ってくる
ことになっただけなのだ。多くの虫が来ることにより受粉が盛んになり、
その種が繁栄したのだ。
逆にこの専門家に私は聞きたい。
種を作らない彼岸花にはどうして赤黄白といった種々の色があるのだ、
と。
権威ある人間の説明に何の疑問も持たずに納得してしまう人間にこそ
「ぼうっと生きてんじゃねえよ」と私は言いたい。
                               ( 2018 .11 .28 )



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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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