文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL168

2018/06/18

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 168
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

    
     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載
        リーフノベルを東金市情報誌「ときめき」に連載中
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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
   

                         
      ■■■■■■■ 花の陰口 ■■■■■■■                          
  
         
         
   夫の転勤が決まったことに端を発して言い合いになり、夫は高校生の一人

  娘を連れて家を出て数ヶ月が過ぎた。

  妻の早苗は晴れない気持ちを抱えながら小さな花屋を開店させた。思えば

  この花屋を出す出さないが言い争いの根にあったのだ。

  開店の日、気心の知れた知人達が祝いに駆けつけてくれた。学生時代の仲

  間もいれば近所のママ友もいた。開店記念のフラワーキャンディーも少な

  くなりかけた夕方、祝い客も買い物客もいなくなり、少し早いが早苗は店

  じまいをしカーテンを閉めた。

  疲れがどっと出てレジの影にある椅子に腰掛け、

  「明日からが本番だ。やれるのかなあ」そんなことをつぶやき、心を沈めよ

  うと目をつぶった。すると、店の中で何やら話声が聞こえ出したのだ。

  「あなたは恥らいってものを知らなすぎるわ。そこに居るシャクヤクをごら

  んよ。もっともあの方は花言葉通り少し、はにかみ屋だけど」

  誰の声だろうか。早苗は聞き耳を立てた。どうも花たちが話をしているよう

  だった。

  「金魚さん、あんた少し出しゃばりよ」その声にキンギョソウは、

  「何よ失恋ばかりしてるくせに」白いチュウリップに言った。

  「大きなお世話。私だって赤ければ告白してたわ。白いから振られただけよ」

  「色があっても黄色は望みうす」

  「でもあそこのクロユリよりいいわよ。呪われちゃうもん」

  勝手なおしゃべりだった。するとポピーが一段と大きな声で、

  「ああいやだいやだ。こんな我が儘(わがまま)な花たちと一緒に居るのは

  耐えられない。私のポピー(忍耐)心にも限度があるわ」

  ポピーが言った。ポピーのぼやきで店の中は一瞬静かになった。その時店の

  隅に居たミヤコワスレが、

  「この際別れましょう」と言い出した。すると花達の中から、

  「そうしましょ」

  「それがいいわ」

  と賛成の声が上がった。

  「別れるって言えば、このお店は早苗がご主人の意見を無視したのが別居の

  始まりだわ」

  そんな声が聞こえてきた。

  「だいたいピンクのカーネーション(熱愛)の恋をして結ばれた二人なのに、

  いくら花屋が夢だったからって、旦那さんを単身赴任先に一人で追いやるな

  んてジキタリス(不誠実)すぎるわよ」

  「そうそう私もそう思う。こうなると早苗のアイリス(あなたを大切にしま

  す)と言ったのは、あれはタンポポ(思わせぶり)だったってことね」

  「そうだとすると早苗はあまりにもシャクヤク(はじらい)のない女だわね」

  「そう、だから娘はそれを知っていて旦那さんについて行ったの」

  聞いていると花どうしの言い争いがいつの間にか自分の悪口を言っているの

  に気付いた。だが早苗は、別々の生き方をしようかと言ったのは夫の方で、

  私は悪くないと言いたかった。どの花が一番自分を非難しているのか見定め

  ようと早苗はゆっくり顔を上げた。

  「起きたわよ。気をつけよ。首をちょん切られたらつまらない。あいつ悪魔

  の弁解をするからさ」

  誰かが言うと店の中は静まりかえった。カーテンの隙間から、店の前を通り

  過ぎる人影が見えた。店の中はしんとしている。早苗は何故か寂しいものを

  感じた。椅子に座り直しまた目をつぶると、再び声が聞こえた。

  「早苗はさ、少しスイセン(うぬぼれ)があったんじゃないの」

  「どんな」

  「ほら旦那さんの為には何をしてやったとか色々言ってるけど、早苗は結局

  自分のやりたいことが先立ってさ、悪魔の態度をナノハナ(快活)さで隠して

  家の中を動かしてたでしょ」

  早苗ははっとして顔を上げた。自分の欠点を気づかされた気がしたからだ。

  するとまたカーテンの向こうに人影が動いた。その人影がガラス戸を開けた。

  遅く来た友人かなと早苗は思った。すると、

  「ママおめでとう」

  入ってきたのは娘と夫だった。

  「向こうからじゃこの子の通学も大変だし、俺、単身赴任でいいから」

  夫が言った。夫は側にあった極楽鳥花(永遠の愛)を取って早苗に渡した。早

  苗はその花を受け取るとアイリス(あなたを大切にします)を手にし、ゆっく

  り夫に手渡したのだった。 



     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
 
  
  私はNHKの「ダーウインが来た」といったような自然番組が好きでよく見る。
 自然の美しさや厳しさを見るたびに、生きることの過酷さが印象に残り、生き
 物への愛着さえ覚える。那珂太郎の句だったろうか
 「春うらら 命あるもの 皆かなし」この句が身にしみる。
 その自然界の厳しさに比べ人間ほど楽な暮らしをしているものはない。
 我が家にはペットの犬がいるが、ペットも人間同様自然界では三日と生きて
 いけないだろう。自然とはそれほど過酷なのだ。それを考えると人間はつま
 らないことに不平を漏らす生き物だと思えてくる。特に社会規範に対して
 不平を言う輩が実に多い。社会規範は、人間が互いに安心して生きるため
 に考え出したものなのだが、その規範がいやならジャングルでコヨーテや
 ガラガラヘビなどを相手に命がけで暮らすしかないだろう。
 おそらく三日とは持たないだろうが。考えれば考えるほど人間は我が儘な
 生き物だと思えてくる。我が儘の為に人類は意外に早く絶滅するかもしれ
 ない気さえして来る。それもいいかもしれない。
 奢れる平家は・・・、ではないが、我が儘な生物は久しからず、である。  
                        ( 2019 .6 .18 )


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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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