文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL166

2017/12/05

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 166
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
 
                         
       ■■■■■■■  山桜  ■■■■■■■                          


   家族に、特に妻に迷惑を掛けながら、我が儘いっぱいに生きてきた宗一は八十

 半ばで臨終の床にあった。自分はもういつ死んでも悔いはない。家族への謝罪の気持ち

 がそんな安らかな思いにさせていた。宗一はベッドの傍らに座る妻に言った。

 「後生は、うちの庭に咲いている牡丹の花になりたいものだ」すると妻は、

 「白ですか赤ですか?」素っ気なく言った。

 「白がいい。赤は他の花の生気を吸い取るようで傲慢(ごうまん)すぎる」

 「そうですか。あなたみたいですね。でも牡丹の命は短いわ。咲いたと思うとあっと

 言う間に崩れますから」それを聞いて宗一はしばらく黙っていた。
 
  少しうとうとしてから目を覚まし、

 「俺はやはり菜の花のような静かな花に生まれ変わりたい」と言った。

 「そうですか。でも沢山咲いていてどれがあなたなのか見分けがつかないですね。もう

 あなたを捜して歩くのは疲れましたよ」妻は気のない口ぶりで言った。

 「五十年、俺を探がしたからなあ」

 そう言って宗一はまたうとうとした。しばらくして目を覚まし、

 「俺は今、お前が大根の花になった夢を見た。だがお前の花かすぐに分かったぞ」

 「そうですか。いままで私のことなんか気にかけたこともないのにね」

 「揚羽(あげは)が飛んできて教えてくれたんだ」

 すると妻はあの世などで探してくれなくとも、と言いかけ宗一を見つめた。

 「二人とも花だと困るなあ。俺が蝶になろう」

 「あなたが蝶なら、私は鳥になって食べちゃいましょうかね」

 「お前に食べられれば一つになれる。いいかもしれない」そう言ってすぐに、

 「だめだ、糞になって捨てられちまう」首を振るとまたうとうと寝てしまった。

  宗一が若かった頃、女遍歴でさんざん苦労させられた妻は、宗一の間の抜けた輪廻話

 が馬鹿馬鹿しく思えた。

 宗一が目を覚ますと妻もベッドに顔を埋めるように寝ていた。

 「あら私も寝てしまったのね。あなたが山桜になった夢を見たわ」妻が言った。

 「山桜か。それはいい。山の奥で誰にも煩(わずら)わされず花を咲かせる。悪くない。

 それで お前は何になったんだ」

 「私は山桜のあなたの葉を食べる毛虫でした」

 「そうか。お前が毛虫ならどんなに葉を食べても惜しくはない」

 「それじゃ山桜に決めますか」

 「決めなきゃ死ねないかねえ」

 「死ねないことはないでしょうけど、決めておいた方が死に甲斐があるでしょう」

  「死に甲斐なんて物があるのかねえ」

  「それに後生の世界であなたを探すのに楽でしょう」

 「あの世でも私のそばに来てくれるのかい」

 「仕方ないですよ。放っておいたら何もできない人でしょ。花だって咲き忘れるでしょ」

  「この世では何も楽しい思いをさせてやれなかったから、あの世では楽しませてやるよ。

  罪滅びしって奴だ」

  「そうですね。毛虫ですと、やがて蝶になって楽しく飛び歩きますよ。飛び飽きたらま

 たあなたの木に止まって、沢山卵を産みますよ」

 「ちょっと待て。その卵は誰の子供だ。俺の子じゃないだろう」

 「そりゃ仕方ないですよ。桜と蝶では結婚できませんからね」

 「それじゃだめだ。お前が桜になれ。俺が蝶になる」

 「卵を産む蝶は雌。あなたは雄の蝶ですよ」

 「そうだ沢山雌を引きつれてくるよ」

 「あら。この世と変わりませんね」

 「死ぬと言う今になって昔のことを蒸し返すな。それにしてもお前は俺と結婚して後悔

  しているだろうな。楽しい思い出なんか何一つなかったろう」

 「そう言われれば、楽しかったこと、思い当たりませんねえ」

 「そうだろう。だからあの世では、お前はわしから離れて暮らすといいよ」

  そんな話をした翌日、宗一は眠るように息を引き取った。

  葬儀が済むと妻は庭の隅に二本の山桜の苗を植え、宗一の遺骨の灰を一握りまいた。

 そして深いため息をひとつついて呟いた。

 「あなたと一緒になって、楽しかった思い出、ありますよ。病院の枕元で、二人の後生

 の話をしましたね。あの時が一番楽しいひとときでしたよ。だから待っていてください

 ね。二人で山桜になりましょう」


     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
 

 早いもので今年も師走を迎えた。今年は何もない一年かと思っていたが、
ひょんな事からリーフノベル集第2集を発行することになった。パソコンに
字数を数えてくれる機能があったのに気づき、字数を合わせ直したり誤字を
訂正したり、ディテールを返えたりと楽しい二月ほどを過ごし、この十月に
『山桜』と題して出版した。
私はパソコンに向かって文字を書いている時が最も楽しいひとときだ。
ゴルフは良いぞ、旅行が良いぞと誘ってくれる仲間は居るが、私はパソコン
に向かっている時が最も楽しい。しかも私の書いた物を読み、面白かったと
言って貰えれば、こんなうれしいことはない。
 これまで市の教育委員会が出している情報誌に掲載されたリーフノベル作品
や同人誌などに発表した作品、またこのホームページに乗せたものなど七十一編
を収録した。
 そこで、長いことメールマガジンをご覧になって下さった方にお礼として、
希望される方三人の方に、この『山桜』を一冊進呈させて戴きたく思う。
先着順とさせていただくので、選に漏れた方はアマゾンでも販売しているので
宜しかったらそちらに訪ねてみて戴きたい。
これからも折に触れ書いてゆこうと考えている。
 私の道楽にお付き合い下さっている皆様に感謝しつつ。(2017-12-5)


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http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
には、他の作品も掲載しております。
またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
まずは御気軽にお問い合わせ下さい。
みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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