文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』 コムギの願かけ VOL161

2017/01/15

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 161
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆

                                
       ■■■■■■■  コムギの願かけ   ■■■■■■■                                     
               
                  

   『コムギ』それは数年前から若夫婦が可愛がっている小犬だ。毛並みが小麦色

  だからとコムギと名付けられたのだ。この家でコムギは何一つ不自由無く暮らし

  た。夜は二人の布団の間に大きめの座布団をベッド代わりにしき、冬は毛布まで

  掛けてもらった。そんな生活に慣れたある日コムギは考えた。

  「僕はこんな緊張感のない毎日を送っていていいのだろうか」と。
 
   ある日、散歩コースの途中にある神社に来ると賽銭箱の前にひれ伏し、

  「僕に、わくわくするような生き甲斐のある冒険をさせて下さい」と祈った。

  祈って何日目かのこと。町の世話役をして入る主人が、社務所での話がすんで散

  歩の続きをしようとした時だった。コムギは何やらふさふさした物が後ろに落ち

  ているのに気付いた。見るとそれはしっぽだった。

  「わっ、しっぽが抜けた。どうしよう」しっぽを拾い主人の前に駆け寄ると、

  「用は済んだから帰ろ」

  主人はごく自然にコムギの手を引き歩き出したのだ。数歩歩いて気がついた。

  コムギは後ろ足二本で歩いていたのだ。コムギが持っているものを見ると、

  「何を拾ったんだい?落ちているものをやたらに拾うものじゃないよ」

  そう言ってしっぽをゴミかごに捨てた。家に帰ると嫁さんがコムギを抱き上げ、

  「コムちゃんも大きくなったね。今年の四月からは学校よ」そんなことを言う。

   学校とは何をする所だろう。そう思っただけで、自然に声が言葉になって出た。

  「お勉強したり、お友達と毎日楽しく遊んだりするの」と嫁さんは言う。コム

  ギは覚った。神様が僕を人間にしてくれたんだ。わくわくする生き方が味わえる

  ぞ。そう思うと嬉しくてたまらなかった。

  学校が始まると毎日がわくわくするほど楽しかった。昼寝するしか、やる事が

  なかったコムギが、今は大勢の友達と走り回るのだ。かけっこはコムギが一番早

  いし、滑り台のある小山などは先生よりも早く上り下りできる。たちまち遊びの

  天才と呼ばれるようになった。だが、勉強はどうもやる意味がわからなかった。

  生きることに直接関係のなさそうなのだ。なかでも最も意味の分からなかったこ

  とは、

  「君たちは大人になったら働いて、自分の力でご飯を食べなくてはいけない」

  と言った先生の言葉だ。勉強とご飯とどんな関係があるのだろうか。不思議に思

  ったコムギは家に帰って聞いてみた。すると、

  「そうだよ。自分でお金をかせいで食べ物を買うんだよ。だから勉強しなくちゃ」

  とそんな事を言う。コムギは考えた。勉強の出来不出来でハムが食えるか煮干し

  になるかが決まるのだろうか、と。そんなある日、主人の妹が泣きながら家にや

  って来て、もう我慢できないから離婚するとか、しないとかわめき、数日泊まり

  込み、腫れ物を触るような時間が続いた。

   それがやっとおさまりかけると、今度は嫁さんのお母さんが入院して付添が必

  要だから二週間、店の手伝いに来てくれと言われた。

   嫁さんの実家は小さな食堂を経営している。面倒なことが立て続けに起き、コ

  ムギは近くに住む主人の親の家に預けられることになった。この家のおばあさん

  は動物嫌いで、ネズミが出たと言って警察を呼んだことがあるくらいだ。おじい

  さんは子供が好きじゃない。コムギは一人で神社にやって来て祈った。

  「神様、僕は生き甲斐のある冒険をお願いしたのに、面倒な事ばかりあって、先

  が不安なことばかりです。どうしたらいいですか」言い終えた時だった。

  「待たせたね。コムギ。オビシャ祭りの段取りで問題があってね。でも面倒なこ

  とがあればあるほどやり甲斐があるってものさ。さあ帰ろ」

  主人はしっぽを枕にして居眠りをしていたコムギに声を掛けた。コムギはとっさ

  にしっぽを探した。しっぽはくるっと丸まって背中に乗っていた。問題があるほ

  どやり甲斐があるって言ってたけど、強がりに決まってる。コムギは独り言を言

  いながら、そんな強がりを言う人間でなくて良かった、と、ほっとした顔で歩き

  だすのだった。

ヨシロウズルーム
 
 
     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
 
 
 あけましておめでとうございます。

 掃除ロボット『ルンバ』なるものを買った。機械が勝手に部屋の隅々を掃除し

てくれる夢の機械に憧れていたからだ。充分餌を与え(充電し)翌日早速試した。

軽快な音を立て物に当たると反転しあるいは僅かに方向を変え、部屋のあちこち

を休み無く掃除して歩く。我が家には室内犬がいて抜け毛が舞っており、座敷に

散らばって見えない毛まで拾って歩くのだ。何故か非常に愛おしさえ感じてきた。

一週間ほどたっただろうか。ルンバが動き回る近くに服についていた糸くずを落

としてみた。たちまち吸い込むのだろうと思いきや、あっちに行ったりこっちに

来たりで、なかなか糸くずを拾い上げない。しまいにはいらいらし自分でくずか

ごに入れた。それでもルンバの腹の中には沢山の犬の毛や埃が吸い込まれている。

最近になって気がついた。ルンバを使う時は部屋に散らかっている物をことごと

く片付け、障害物の無い状態にしなければならない。初めは楽しさ半分で片付け

ていたが、それが意外に面倒なことに気づき始めたのだ。しかも部屋の隅や家具

の隙間などの埃は掃除されない。結局数日の内一度は私が掃除機で掃除をするの

だ。その方がずっと綺麗になることにも気づき始めた。ルンバとはなんだったの

だ。面倒がかかることにはさほど違いは無いし掃除機ほどほど綺麗にならない。

期待をかけすぎていた事に今更ながら気付いた次第だ。すべからく気体のしすぎ

は大いなる落胆に通ずる事を覚った次第である。(2017-01-12)


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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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