文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』夢の中の神様5 VOL160

2016/12/13

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 160
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆

        夢の中の神様 その五
                         
       ■■■■■■■  テレパシー  ■■■■■■■                                     
               
         
 神様に出会った夢を見た。良太の五度目の夢だ。神様が杖の先を耳にくっつ

けて話をしていた。やがて「それじゃ」と言って杖を離した。

「それ、携帯電話なの」良太が聞くと、

「親爺と話してたんだ」

「神様も携帯電話使うんだね。テレパシーじゃないんだ」
 
「これテレパシーさ。電波を使う携帯とは違うさ。親爺は銀河系の端にいるか

ら親爺のいる十万光年先からだと電波が届くのに十万年かかるけど、テレパ

シーだとすぐに伝わる。ただあんまり離れていると磁気が希薄なんでアンテナ

代わりに杖を使ったのさ」

  
「神様の世界も科学的だね」

  
「人間に科学的なんて言われたくないね。人間の科学はかなり幼稚で情緒的

じゃん」

  
「人間の科学を馬鹿にするの」

  
「事実を言ってるんだよ。だってさ『五十億光年の孤独』とかって変な名前の

本を書いている奴が変にもてはやされたりしてるじゃん」

  
「そのどこが変なのさ」

  
「じゃ聞くけど、百メートルの孤独って言ったら何のことか判るかい」

  
「判るわけないよ。メートルは距離だし孤独ってのは時間や人間関係の中で感

じる物だから・・・・」そう言って急に黙ってしまった。

「何だい黙っちゃったね、判ったのかい、光年というのは距離の事だから」

「判ったよ、考えてみれば変な題名でかなり情緒的だ。話題を元に戻そう」

「都合が悪くなると話題を変える」

「まあまあ、それより僕にもテレパシーが使えるようにしてくれないかなあ」

「いいけど昔みたいにかい」

「昔ってどういうこと」

「知らなかったの?人間は昔テレパシーで仲間同士意思の疎通を計ってたん

だ。そのテレパシーは神の俺には届かなかったけど」

「そうか、神様と話すのに言葉ができたんだったね。二回目の夢でその話聞い

た。でもどうして人間はテレパシーが使えなくなったの?」

「使えなくしてくれって頼んできたのさ。野生動物には今でもテレパシーを使

う物がいるけど」

「どうしてテレパシーがいらないなんて言ったんだろ」

「聞きたけりゃ話してやるよ。もともと人間は『山の向こうに木の実がある

ぞ』とか『マンモスの後ろに回れ』とか簡単なテレパシーで連絡を取っていた

んだ。

でも言葉が使えるようになると、言葉ってのは言い間違いや聞き間違いを起こ

しやすい欠点はあるけど、思ってもいないことを言いことができる便利な物

だって気付いたんだ。それを利用して嘘やでたらめを伝えて自分が有利になろ

うとし始めた」

「でもテレパシーですぐに嘘だと判ってしまうね」

「そうなんだ。だから喧嘩が絶えなかった」

「どんな喧嘩?」

「村中の人間が殺し合うような騒動に発展したこともある」

「それはひどい」

「だから言葉だけを信じる運動を広めようとした人もいたけど、うまくいかな

かった。仕方なくテレパシーを使えなくして欲しいって頼みに来たんだ」

「そうか、口が本心と違うのがばれるのはまずいものね」

「そう。良太は彼女に『世界中で一番好きだ』って言っただろ、内心は好きな

タレントには手が届かないからこいつでいいやって思いながらさ」

「それ彼女に言わないでよね。でも僕のことを彼女はどう思っているのか本心

を知りたいな」

「相手の本心だけを知ろうとするのは盗聴と同じで卑怯だぜ。それに本心を聞

いたら気持ちよくないだろうよきっと。嘘でもいいから口から出た言葉を信ず

る方が幸せってもんだよ」

「本心じゃなくてもいいの?」

「そうだよ。幸せってのは嘘の言葉の上に咲く黴の花みたいなものさ」

「黴の花?」

「そう、味の無いデンプンを甘くするコウジ黴。あるいは言い分けは細菌の酵

母菌だ」

「言葉ってのはコウジ黴と酵母菌か」

「そうだよ。だけどね酵母菌は発酵して人を酔わせる酒を作る。別な言い方を

すれば嘘は地金を隠すメッキみたいなもの。不思議なことに人間は嘘と分かっ

ていても、褒められれば嬉しくなるんだ。つまり嘘が人を幸せにする。本心は

むしろ悪の根源だよ」

そう呟くと嘘のように爽やかな朝があけ、良太は目を覚ましたのであった。



 
     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
 
 
 初等の寒さに縮こまり、炬燵に潜り込んだまま何気なく廊下に目を移すと、我が家の小犬『コムギ』がマッサージチェアーに乗って陽だまりの中にいた。目をしょぼしょぼさせ、時折ヒヨドリが庭の隅に据え付けたえさ代にやって来ると一声吠え、鳥が飛び立つとまたうつらうつらしている。コムギはこの十二月で満十三才になる。人間に換算すると七十歳位だそうだ。それなら私と同じ歳になるわけだ。ふと、コムギは我が家で暮らして幸せだったのだろうかと考えた。「お前は幸せか」と声を掛けてみた。すると顔をもたげ、「あんたはどうなんだよ」と言いたげに私の方を見つめ、また居眠りをはじめる。コムギは毎朝散歩に出かけることと、大好きなジャーキーを貰うことしか考えていないようだ。「お前は食うことしか頭にないのか」と言うとまた、「じゃあ、あんたは何を考えてんだよ」と言いたげに顔を上げる。生意気な犬だ。「俺はお前とは違うよ」そう言った途端鳩時計が十二時を鳴いた。「そろそろ昼飯だ」
                                            (2016/12/9 )
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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