文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL157

2016/07/18

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 157
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
                         
       ■■■■■■■  猫の行列   ■■■■■■■                                     
                    

   峰子が越してきた家の周りは、子供の声も聞こえない殺風景な住宅地だった。

 だが野良猫だけが目についた。家の裏には藻がたかった小さな池があった。峰子

 は池を掃除し数匹の金魚を放すことにした。

  それから暫くたった日のこと。勝手口の窓から池を覗くと、一匹の子猫が池の

 中を見ていた。

 「猫ちゃん。いい子だからお魚をいじめちゃだめよ」峰子が声を掛けた。翌日は

 二匹の猫がやって来て、更に翌日には四匹がたむろしていた。やがて一匹が池の

 中に足を入れ魚を狙っていた。そこで峰子は針金と網で池にふたを作った。

 「おばちゃん、何してるの」どこから来たのか一人の男の子が声を掛けてきた。

 「猫がお魚を捕らないようにしているの」男の子は、何も言わずに帰って行った。

  翌日峰子が池を覗くと、金網のそばに猫が四匹座っていた。

 「もう金魚、捕れえないよ」声をかけても猫は放れない。

 「それじゃ猫ちゃんにはこれをあげるから」

 そう言って朝ご飯の残りの干物を小皿にのせて出してやった。一度は逃げ去った

 猫たちだったが、峰子の姿が見えなくなるとアジの開きを頭から食べ始めたのだ。

 「おなかがすいていたんだね」そう言って峰子は翌日も残りの魚や前の晩の残り

 ものを出してやった。猫は五匹になっていた。翌日は何と六匹になった。餌入れ

 の皿はだんだん大きくなり、やがて残り物では間に合わなくなると、キャットフ

 ードを買って来ては、洗面器に入れて出してあげた。気がつくと猫は毎日のよう

 にふえていった。この家に来ると魚が貰える。そんな評判が猫社会に広がったの

 だろうか。猫が猫を呼び、一月もすると二十匹近い猫が毎朝池のまわりに集まり

 出したのだ。峰子が餌を入れた洗面器を持って現れると逃げるどころか、誰が教

 えたわけでもないのに二十匹は一列に並ぶのだ。どうも年かさの猫が先頭のようだ。

 猫は猫なりにコミュニケーションをとっているのだろう。そして住みよい環境を

 つくりだしているのだ。峰子はそんなことを考え一人感心するのだった。

 「わあ猫の行列だ」池をのぞきに来たいつかの男の子が猫の行列を見つけて言った。

 「みんなに教えよう」そう言ったかと思うと数分後に三人の仲間を連れてやって

 来た。猫の食事が終わると子供達は帰って行った。

 「また明日来ようね」そんな声が聞こえた。翌日も、その翌日も猫の行列を見に

 十人ほどの子供達が集まってきた。子供達は猫に名前を付け始めた。「タマ」

 「シロ」「ミケ」とよく耳にする名前が出そろうと、次にはアニメのキャラクタ

 ーの名前が飛び出し、子供達のはしゃぐ声があたりに響いた。今まで人の気配の

 なかった街が急に明るくなったように峰子には想えた。

  ある日のこと、一人の男の子が猫を抱き上げようと近づき、足をすべらせて金

 網の縁で足にひっかき傷を付けてしまった。峰子は男の子を家まで連れて行くと、

 「子供を池のそばで遊ばせたの?」と、母親はひどい剣幕で峰子を責めた。訳を

 話すと、

 「猫に餌をやってるあなたが悪いのよ」と悪態は更に続いた。

  そんなことがあって後は、子供達が猫を見に来ても塀の外でしか見られないよ
 
 うに柵を作り直した。

 「これじゃ見えない」不平を言う子もいた。

 「また怪我をするといけないからね」峰子が言うと、

 「見せてくれないってママに言う」そう言って泣く子もいた。

  それから数日後のことだった。市役所の保健衛生課から人が来て、

 「野良猫に餌をやっているという苦情がありまして」と、野良猫に餌付けしない

 ように言われたのだ。子供の親の誰かが、訴えたのだろう。峰子は返す言葉が無

 かった。

  その日以来餌を出すのをやめると、数日で猫は来なくなった。街はまた以前の

 ように、ゴーストタウンのような静けさに戻ってしまった。

  この街の住人は、互いに住み良くするためのコミュニケーション能力が野良猫

 よりも低いのではないか。そう思うと峰子は寂しいものを感じるのだった。


 
     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
 
  昨年の夏から、孫の手伝いで国蝶のオオムラサキの飼育をし、今年6月に何と

か羽化までこぎつけたが、自然界の厳しさを今更ながら知らされた思いだった。

昨年8月に友人から十匹の三齢幼虫をもらい受け、1メートル四方高さ2メート

ルほどの大きさの木枠に全面防虫網で囲い、中に食草のエノキの鉢植えを2本入

れた。これで天敵の鳥に食われることは無いだろうとたかを括っていたのだった。

所が網の隙間から入り込んだアリに食われたり、エノキの葉の無い所に這いだし

て餓死したり、越冬時に目覚められなかったりで、今年蛹になれたのは三匹だけ

だった。その蛹も一匹はアリに食われてしまい、やっと羽化した成虫二匹のうち、

一匹は羽根が伸びきれなかった。網で囲っても一割しか羽化できなかったわけだ。

自然界では1%と聞くがそれも頷けた次第だ。飼育を始めたときは成虫の羽根が

痛まないうちに展翅しようと考えていたが、やっと日の目を見たこの虫を見てい

るとむざむざ殺すことは出来なかった。一週間ほど箱の中で遊ばせて、力尽きて

死んだ後に展翅したものだった。

 我が家の庭には今日もアゲハが飛んでいる。かつてはすぐ捕まえて展翅を考え

たものだが、今ではあんなに苦労して飛びたったのだと思うと、とても殺す気に

はなれない。
                                                   (2016/7/16)


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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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