文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL154

2016/02/28

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 154
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
                    
       ■■■■■■■   子とろばんば     ■■■■■■■                                     
             
   
  隣町にある寺の飛び地が町外れにあった。その飛び地に建っていた藁屋根

 (わらやね)の家が最近取り壊されたと聞き、懐かしさから散歩の途中に覗(のぞ)

 いてみた。辺りには昔の面影はなく、梅の古木だけが私の少年時代を思い出さ

 せた。

  その藁屋根の家には不気味なうわさがあった。「子とろばんば」と呼ぱれる

 老婆がその家に住み、真夜中に子供をとって食うというものだった。大人たち

 さえ、子供の躾(しつけ)の道具にこの噂を使ったりしていた。

  子供の頃の私は臆病だった。そのくせ好奇心は旺盛で、噂の「ばんば」を一目

 見たいと思った。昔はどこにもガキ大将がいたが、そのガキ大将を担(かつぎ)

 出し、何とか一目このばんばを見てみたいと考えた。ガキ大将の名を達治と言

 った。達治の家は金属のプレス加工をしており、当時かなりの借金があったら

 しい。いつか夜逃げをするのではないかと、そんな陰口も叩かれていた。

 達治は体力のない私をばかにし、少しばかり成績の良かった私を目の敵にして

 いるところがあった。

 「タッチャンはいいよな、度胸があるから。自分でばんばを確かめられるもん

 な」この時の私のずる賢い言葉は、我ながら今でも恥かしい。現在も仕事の上

 で相手を羨望(せんぼう)してみせては取り入る手を時折使うが、その度に達治

 に言った言葉が思い出される。案の定、ぱんば退治は俺にまかせろと達治は

 言った。低学年の子供を除き六人の秘密会議の末に、当時流行りだった丸メン

 コの武者絵から達治は源頼光を名乗った。私は楠正成を名乗ったものだ。

  夏休みに入って間もないある夜だった。私は約束の集合場所に仲間と出かけ

 た。街灯のないそこは真っ暗で虫に刺されながら震えたものだった。数分後に

 源頼光以下四人が集まったが、達治は六年生の弁慶と柔道を習っている義経が

 来るのを待とう言った。三十分近く待ったがとうとう二人は来なかった。意を

 決したかのように「しょうがねえ。いくべ」達治は奇妙な声で立ち上がった。

 ばんばの家までは数百メートル離れていたが、無性に近くに思われた。藁屋根

 の家を目の前にすると四人は黙って立っていた。まずいことを始めたものだと、

 私はしきりに後悔をした。

 「よし、ついて来い」達治が言った。私は達治の後にぴたりとくっつき、杉の

 枝を削って作った木刀を両手で握った。達治はいきなり「今晩は」戸を叩いて

 声をかけた。馬鹿なことをするものだと思った私は「見つかるよ」囁(ささや

 いた。達治は黙って頷(うなず)くと勢いよく戸を開け中に飛び込んだ。その

 瞬間暗い部屋の奥で何かが崩れるような音がした。私は叫び声を上げて逃げ出

 した。二人の仲間も達治を置いて振り向きもせず駆けた。そのまま家に逃げ戻

 り、針仕事をする母の側にぴったりくっつき、「変な子だね」と言われながら

 も、その日は母の布団に潜(もぐ)り込んで眠った。

  その日以来逢治の姿が見えなくなった。

 「タッチャン、やっぱり食われたんだろか」否定してくれることを期待しなが

 ら私は会う仲問毎に聞いて回った。達治の家を覗くと、達治の家は戸が閉めら

 れており人っ子一人いなかった。やはり子とろばんばが達治を食ったのかも知

 れない。だが家族までも食うだろうか。達治をそそのかした後ろめたさに私の

 胸はかじかんだものだった。

  先年、達治はさる警備会社の指導員をしているとの噂を聞いた。だが朽ちか

 けた梅の古木を見ていると、その噂こそが間違いのような気がしてきた。四十

 年前の不思議な出来事こそが真実であり、私の生活を含め、今ある現実は誰ぞ

 に操られている世界ではないのか。真実は誰も知らない所に埋もれているのか

 も知れない。ふとそんな思いがよぎったりした。だがすぐに私はそれを払拭

 (ふっしょく)するようにその場に背を向けて家路をたどった。
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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