文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL153

2016/01/11

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 153
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
                    葉隠れ探偵社 その四 
   
       ■■■■■■■   浮気調査     ■■■■■■■                                     
                                                                                                                                
                         
   南田哲治が探偵事務所を開いて三年目に浮気調査が多くなった。その年は、夫

 の年金が元妻にも分与されるという法律ができた年だが、そのことに意を強くし

 てのことだろう。探偵事務所には今年になって七件もの浮気調査が舞い込んだ。

 すでに四件は片付いた。お節介な友人の告げ口で妻が疑ったものが二件と出来

 心の浮気が二件。探偵社開業以来初めて忙しい日々が続いた。そんなある日、夕

 暮れ時ホテル街を探索していると哲治を呼び止める者が居た。

 「テッちゃんでしょ。あたし、吉川。旧姓田上幸子。懐かしいわね。二十年ぶり

 ね」

 それは高校時代同じバスケット部にいた幸子だった。彼女はバスケット部の

 マネージャーをしていた女だ。

「俺、今仕事中なんだ。サッチーの家はこの近く?」

 何と彼女の夫は、このホテル街の一角でホテルを経営しているとのことだ。

 「なんかできすぎのはなしだなあ。実は俺、今探偵社を開いていてね。・・・」

 昔なじみの気安さが手伝い、今捜索中の男の顔写真を見せながら言った。

 「見たことないなあこんな顔。でもテッちゃんの仕事面白そう。ねえねえ、私を

 テッちゃんの助手にしてくれないかなあ」

 哲治は助手など持つ柄ではないし人を雇う余裕など無い。幸子は困った哲治の顔

 をよそ目に、

 「あたし子育ても一段落でさ、暇なんだ。アルバイト料なんていらないからさ」

 「わかった。考えておくよ」

 その日はそれだけで別れたが、翌日になるとまた二件、浮気調査の依頼が舞い

 込んだ。忙しいからと断る訳にもいかない。そこで思いついたのが幸子だった。

 電話をすると幸子はやや興奮気味の顔で事務所にやって来た。

 「面白そう。あたしこうゆうのが好きだったのよ。内の亭主はホテルなんか経

 営してるけど、私は用がなくてさ、毎日退屈だったのよ」

 そんなことを言ったかと思うと、物慣れた手つきで鞄からカメラを取り出し、

 「カメラの調子を見たいからテッちゃんちょとこっち向いて」

 哲治が顔を上げた瞬間シャッターをきった。

 「よし、これが今日の出で立ち」

 幸子の独り言が哲治にはちょっと引っかかったが、気にもせず一件の調査資料

 を幸子に渡した。簡単に説明すると、幸子はすぐに納得し、調査対象の勤める

 会社に向かった。ところが幸子はその会社に行かず、哲治の後を尾行したのだ

 った。尾行に気付かず、哲治は自分の調査を黙々とこなしていた。

  午後八時頃のこと。哲治は女性と連れだってホテルに入る男をカメラに納めた。

 そしてその場に二時間ほど立ち尽くし、出てくる二人をまたカメラに納めた。こ

 れで一件は証拠がつかめ、翌日には次の案件に取りかかった。

  今度は女性の方を調べるものだった。女性の住む家の近くの喫茶店に入り、朝

 から夕方まで家の周りを見張った。喫茶店の店員には、自分は作家で、家では構

 想が浮かばないからここで仕事をさせてくれと言い、パソコンを開いては窓の外

 とパソコンを交互に眺めた。女性は時折外出するが近くのスーパーへの買い物だ

 った。そんなことが三日ほど続いた日のことだった。昼頃に派手な服を着て女性

 が出てきた。女性は駅の方に向かってしばらく歩くとタクシーに乗り込んだ。哲

 治は喫茶店に停めてあった車で尾行した。一時間ほど走ると女性はさる公園で男

 性と会い、手をつないで歩き出した。かくして浮気の証拠をカメラに納め、事務

 所に帰ると幸子が哲治の妻と二人待っていた。

 「奥さん。浮気なんかじゃなく、本当に調査に出ていたんですよ。これがこれま

 での写真です」そう言って哲治の仕事ぶりを映した写真を二十数枚並べた。

 「ごめんねテッちゃん。実は私も探偵社をしてたの。テッちゃんの奥さんから、

 主人が毎日遅いのは仕事にかこつけて浮気しているんじゃないかって疑って依頼

 して来たの。でもね、これで奥さんも、探偵の仕事が大変なことが分かったと思

 うから、ゆるしてね。それじゃ奥さん、後で請求書をお送りしますから」

 そう言って幸子は事務所を出て行った。
  
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     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
 

 七十回目の正月を迎えた。正月の感激はほとんどない。泊まりに来た孫達に二
日間翻弄され、疲れだけが残った。あっという間に七日が過ぎた。そう言えば七
日の日、たまたまさる『道の駅』に行くと七草がゆ用に七草が袋に入れられて売
られていた。中をのぞいてみたが、一応古歌の通りらしかった。「セリ ナズナ 
ゴギョウ ハコベラ ホトケノザ スズナ スズシロ」と頭の中でそらんじなが
ら草を眺めたが、ナズナやゴギョウ、ホトケノザはどれがそれなのか判然としな
い。ゴギョウとはハハコグサのことで、ホトケノザはタンポポによく似た葉のコ
オニタビラコのことだが、どれがどれなのかよくわからない。私の奉職する学校
で学生達に春の七草を聞いてみたら、百人中知っていたのはたった一人だった。
そんなわけだからアブラナでも入れておけば、それを七草と思って買って行くの
だろうなと思いながら店を出た。時代とともに行事も文化も変わる。やはり俺は
古いのかなあ、と思い知らされた新年であった。(2016・1・10)
         

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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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