文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL 134

2012/07/30

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 134
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■ いなくなったベルーガ ■■■■■■■             
                                                                                
                                   

   「五千万円ですか」園長は考え込んだ。金があれば人気の無くなった動物園に

  新しい設備を作り多くの客が呼べる。

  「でもねえ、豹の飼育係の田島がねえ」

  「それを説得するのが園長の仕事でしょう。この園には他に沢山動物がいるじゃ

  ないか。わしはどうしてもベルーガが欲しいんだ」

  宍倉は葉巻をくゆらせながら横柄な態度で言った。宍倉は株で巨万の富を得た男

  で、自分は豹の化身だと常々うそぶいていた。ベルーガの精悍な目が好きだった。

  それは狙った株をどこまでも追いかける自分の目に似ていると思った。かつてベ

  ルーガの等身大のブロンズ像を作らせ、自分の広い居間に置いていた。宍倉は億

  の金を動かすときなどは決まってこのブロンズ像の前に座り、どの株は買うべき

  かブロンズの耳に囁くのだった。像の目が輝いて見えるときは買い、暗く見える

  ときは売りに転じた。目の予想はそのたびに当たり、今の富を得たのだった。宍

  倉は更に大きな仕事をしたいと思った。それにはブロンズ像ではなく、本物の剥

  製に株の動向を聞けば盤石だと考えたのだ。

   これまでにも何度か園長に掛け合ってきた経緯があった。

  「いつも同じ答えですがすみませんが、もう少し考えさせてください」

  園長は言った。そこへ呼ばれていた飼育係の田島が入ってきた。

  「おお、田島君か。良いだろきみ。わしはベルーガでないと仕事ができないんだ

  よ。今、園長にも話したんだが五千万、ううん、園長一億出しますよ。ねえ田島

  君一億だよ。この豹を譲って貰い大きな仕事が当たったらその暁には、失礼だが、

  これよりももっと広い新しい事務所と飼料室を寄贈するがどうだね。人も雇って、

  田島君は獣医の仕事に専念できるだろう」

  宍倉は懇願するような顔で言った。その目はベルーガが餌をねだる目に似ている

  なと田島は思った。

  「一億ですか。どうだろう田島君。一億有れば君が欲しがっていた豹の新しい檻

  やアザラシの円筒プールだってできるぞ。そうすれば入館者が増え、えさ代のた

  めに君がアルバイトみたいな仕事をしなくたって済むんだ」

  田島は黙っていた。

   園長が乗り気になった様子に満足した宍倉は、

  「わしはこれから行かねばならん所があるんで、また出直すが考えておいてくだ

  さいよ」

  そう言って待たせてあったベンツに乗って帰って行った。

   宍倉の実家は鹿児島だが、一年の大半を過ごす別荘兼事務所が動物園から数キ

  ロの所にあった。

 その日の夜のことだった。園長の家に電話が掛かってきた。田島からだった。

  「園長、すみませんベルーガが檻から逃げました。警察には連絡しましたが」

  「ベルーガが?どうしてだ。とにかくすぐ行くから」園長は脱衣所に放り投げて

  あった作業服を着ると急いで動物園に駆けつけた。パトロールカーがゲートの前

  に止まっていた。田島の姿を見つけ、

「どうしてカギを駆けなかったんだ。君らしくもない」

  「私が檻から出ようとした時『開けておいてくれない』って言った人がいて誰か

  が私の後ろを通っていったんです。見ると、それがベルーガだったんです」

  「豹が人間の言葉を話すわけないじゃないか」

  「はい。ですから私は今日の宿直当番の誰かだと思って」

  その夜から豹の捜索が始まった。だが二日たっても三日たっても、豹の姿を見た

  人さえ現れなかった。

  そんなある日宍倉から園長に電話が掛かってきた。宍倉は震える声で言った。

  「夕べ豹が家の庭に入って来て窓越しに言ったんだ。『剥製はご免だ。家族を売

  り渡す園長の所にも帰らない』そう言って公園の方へ走っていった。窓を開けて

  見たんだが、あれはベルーガだ。やっぱり私は豹の言葉が分かるんだ」

  園長は返す言葉が無かった。

   半年がたってもベルーガの消息は要として知れなかった。その後宍倉の別荘が

  売りに出されたという噂が流れた。それに前後してこの動物園も閉鎖された。

   田島は動物園を辞め郷里に帰り動物病院を開いたという。その動物病院は『豹

  のいる病院』として大変流行ったということだ。


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     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  矢張り夏は暑いほうがいい。肌寒い夏は人生のはかなさまで感じさせられ、
憂鬱にさえなる。とはいえエネルギー節約のためにエアコンも使いずらい昨今、
暑い日々は初老のこの身には答える。
暑ければ暑いで不平を言い、寒ければ寒いで文句を並べる。いやはや人間と
は全く我が侭な存在だ。この人間を神様が作ったのだとしたら、神様もよほど
不器用な方ということになる。なぜならこんな不完全なものを世に出したのだ
から。これが例えば人間の作ったロボットだったら、おそらくユーザーから絶
えずクレームが来て、ロボットはすべて回収と言うことになるに違いない。だ
が神様は今だ人間の全回収はしていない所を見ると、神様は関与していなかっ
たのか、或いはとうに諦めているのかも知れない。
いずれにしても、ああ、暑い。何とかしてくれ。   (2012・7・26)
 




  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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