文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL133

2012/06/20

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 133
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■ 遅すぎる反省 ■■■■■■■             
                                                                                                          
    誠也は子供の頃から人の物を欲しがる性癖があった。友達が持っている玩具は

  すぐにねだり、遊園地に行ったと聞けば自分も連れて行けとせがんだ。

   結婚十年目にしてやっと生まれた誠也を両親は溺愛し、欲しがる物は何でも与

  えて育ててきたのだ。そんな誠也は『我慢』という言葉を知らずに大きくなった。

   長じて社会人になると誠也も普通の子と何も変わらず一見ごく普通のサラリー

  マンになった。

   誠也の最初の勤めは保険会社で、保険の勧誘に回された。だが顧客の心を掴む

  までの辛抱ができず、ほとんど契約がとれずにいた。すると誠也は好成績を上げ

  ている同期の仲間に言った。

  「きみの担当してる地区と交代してくれ。僕の方は若い夫婦ばかりで不公平だ」

  誠也は強引に交代させた。これで成績も挽回できるだろうと思いきや、

  「もう入っているわよ」と笑われ、

  「前にはっきりお断りしたのに」

  と追い返され、新規契約は全く取れなかった。それにひき替え、交代した仲間は

  「以前に別の者が参ったと思うのですが、今日は改めて分かりやすく・・・」

  誠也の回った後を丁寧に周り直し、次々に新契約を取ってきたのだ。それを聞く

  と、

  「お前はずるい奴だ。俺の地区に旨みを感じて取り替えただろ」

  と誠也は食ってかかった。

  「きみが変わってくれと強引に言ったんじゃないか」

  「嘘をつけ。嘘つきと一緒に働きたくない」

  そう言って誠也は保険会社を僅か一年で辞めた。

   誠也が啖呵を切って辞める気になったのは、数日前に学生時代の友人と会い、

  彼が自分より高給取りになっていたことを聞き、しかも彼の勤務するその会社に

  は空きができ、紹介してやろうかと言われていたからだ。

   誠也の次の職場はその友人のいる建築会社だった。以前の職場では顧客にへこ

  へこ頭を下げなければならなかったが今度は違う。建築現場を視察し、建築に必

  要な種々の書類を取り付けたり資材を調達したりするのが主な仕事だ。

  「今度の仕事は楽そうだ。給料もいいし」

  誠也は建築会社を紹介してくれた友人に感謝した。

   ところが、いざ仕事にとりかかってみると、許可申請には何種類もの煩わしい

  書類作成が必要で、そのうえ細かな変更が絶えずあり、その度に管轄の役所と会

  社を往復せねばならなかった。挙げ句に、現場に搬入する機材の調達には複数の

  現場との調整に神経を使い、毎日がへとへとになるほどだった。

  こんな仕事から早く解放されたい。そう思うようになった頃友人が結婚した。そ

  の友人の家で開かれた焼き肉パーテーで誠也は彼の新妻に憧れを抱いた。子供時

  代なら、「あれが欲しい」と言えば親が手に入れてくれたが、こればかりはおい

  それとはいかない。この時初めて『我慢』という言葉を知った。

  「我慢さえしていれば何時か彼女は俺の方に振り向く」誠也はそう思った。

  だが一年経っても二年経っても彼女は自分には目もくれず、子供が生まれるとま

  すます遠のいていった。

   そんな折、彼女が子育ての合間を縫いインターネットでブランド品を販売する

  内職をしだしたのを聞いた。その仕事は家にいながら、楽をして儲かるというの

  だ。誠也は彼女の気を引く意味もあり、嫌気がさしていた建築会社を辞め、見よ

  う見まねでネット販売を始めたのだ。

   ところが彼女は夫の転勤で遠くへ引っ越すことになった。気がつくと誠也に残

  ったものは何も無かった。ネットの仕事も行き詰まりアパート代さえ払えなくな

  り、しかたなくまた子供の時のように親に泣きついたのであった。すると父親が

  言った。

  「欲しがる物を何でも与えて育てたことを俺は今反省している。これからは突き

  放す事にする。そうじゃなければお前はまともに生きて行けない」

  すると誠也は言った。

  「今更突き放されたら死ぬしかないじゃないか。遅すぎる反省は虐待と同じだ。

  それより金を貸してくれ。だめなら後はサラ金だ」

   曲がってしまった木を無理に伸ばせば折れるしかないのかも知れない。そう思

  いながら父親はしぶしぶ年金通帳に手を伸ばすのだった。




  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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