文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL132

2012/04/10

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 132
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■昼休みの噂話  ■■■■■■■             
                                                                                 

  社内食堂の隅のテーブルには若い男達が集まり、昼休みともなると女性社員の

噂話に花が咲いた。話の中心は決まって萌花と愛梨だった。愛梨はブランド物で

着飾るのが趣味で、どこか素人離れした華やかさがあり、萌花は有名大学出の才

媛でテレビ界の有名アナウンサーを友人に持っているのを自慢していた。

「愛梨と中島が怪しいって噂だぞ」

「萌花が取引先の取締役と結婚するって聞いたけど本当か」

「その取締役バツイチらしいぞ。年も一回りくらい違うようだ」

「望みは愛梨だけか」

「だけどあいつ、我が儘そうだな」

「その我が儘が魅力なんだろ」鳴海が分かった風な口を利いた。

「我が儘なのが魅力?。そんなの人間としてどうかなあ」

「それにしてもあの二人は、これほど男達に騒がれて、女として最高に幸せな女

だ」男達が勝手に品定めする女の中にもう一人ナズナという名の女子社員がいた。

ナズナはごく普通の顔立ちでどちらかと言えば田舎風の女だった。男達はナズナ

をペンペン草とあだ名し、あまり話題にもしなかった。ある時だった。

「おい、ペンペン草が結婚するってほんとか。雑草はすぐに捨てられるぞ、可愛

そうに」

「おれは半年だと思う」

「賭るか。お前は一年?鳴海は二年で離婚に賭けるか。勝った奴がゴルフ三回た

だってのはどうだ」そんな話が出て間もなくのこと、愛梨と萌花も結婚することに

なった。

「ちきしょう。萌花はあの取締役で、愛梨はやっぱり部長のどら息子か」

「彼女らの彼氏共ぽっくり死んじまわねえかなあ。そうすりゃ俺が後釜を引き受け

るのに」

「後釜なんて言わねえで、今かっさらってこいよ」

「相手にしてくれねえさ。亭主が死んで気を落としてでもいねえと、振り向いて

くれねえだろ」

「情けねえことを言うよ」噂話が下火になったのは、それから半年ほどした頃だっ

た。

「おい。ぺんぺん草が垢抜けてきた気がしねえか」

「そうかなあ。別に変わらねえだろ」

「半年が過ぎたけど、まだ離婚の話、聞かねえな」

「離婚て言えば、愛梨がスピード離婚だってよ。成田ほど早くはねえけど、愛梨

の元彼が会社を興して成功したらしいんで乗り換えたらしい」

「その話俺も聞いた。でも、どっちみち俺達にはお鉢が回ってこねえよな」そん

な噂から程なくして愛梨は会社を辞めた。

 萌花とナズナが産休に入ったのは二年後のことだった。

 噂話にたむろしていた男達も一人二人と結婚し、食堂の隅はいつの間にかダン

ボールの置き場になった。

 それから三十年の歳月が流れた。定年を数ヶ月後に控えた鳴海は、ふと昔、噂

話にたむろした仲間達を思い出し、急に懐かしくなった。仲間の中には部長にな

った男もいれば早期退職をした者もいる。今ではほとんど顔を合わせる機会が無

くなっていたのだ。鳴海は人事課長として忙しい日々を送っていたが、定年が間

近に迫ってきた今、急に皆に会ってみたくなった。

「そうだ。同窓会をやろう」鳴海は独断で『元独身会』と銘打ち葉書を出した。

半月ほどして出席の返事が来たのはわずか四人だけであった。

「久しぶり」

「元気だったか」

「最近腰を痛めてなあ」

「俺は帯状疱疹って奴でまいったよ」居酒屋での再会は誰もが昔のままの顔に思

われた。やがて誰とはなしに萌花や愛梨の話になった。

「あの二人、人に羨ましがられるような結婚をしたけど、二人とも二度離婚して

、あんまり幸せだったとは言えねえな。それに萌花の子供はなんだか事件を起こ

して裁判がどうとか言ってたぞ」

「裁判て言えば萌花は今三回目の離婚係争中だそうだよ。離婚三回か」

「そう言えば、ぺんぺん草は離婚したって話、とうとう聞かなかったなあ」

「俺は今ぺんぺん草と同じ町に住んでるけど、幸せ顔の落ち着いたおっ母さんっ

て感じになってたなあ。子供は皆一人前になって近く孫が出来るって話だ」

「だれだ?半年で別れるって言ったのは」仲間の話を聞きながら鳴海は思った。

本当の幸せは地味な花にこそあるのかも知れない、と。

 
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     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  
 毎朝犬の散歩をしながら近くの公園の桜の木を見上げる。私は柄にもなく桜の
咲くのを心待ちにしていたのだ。4月4日の朝はかなり蕾も膨らんだものの、ま
だ花開く様子はうかがえなかった。翌日一本の桜に花が二つ三つついた。その翌
日にはたちまち三部咲きになり、7日にはほとんど満開になった。咲いてみれば
待っていた急かす心もすっかり薄れ、待っていたことさえ忘れてしまっているの
に気がついた。
 ふと幸せという奴も、待っている時にこそ魅力があり、幸いの中にいてはそれ
が当たり前になってしまって何も感じられなくなっているのかも知れないに違い
ないと思った。我が身が今幸せなのか不幸なのかよくわからないのは、きっと幸
せを待っていないからに違いない。と言うことは私は今、ささやかながら幸いの
中に居るのかも知れない、などと殊勝にも思ったしだいだ。 
                                                (2012,4,9)




  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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