文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL129

2011/12/06

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 129
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■ グリーンカーテン ■■■■■■■             
                                                            
                           

   平山が数学の教諭として赴任してきた高校は里山に囲まれたのどかな学校だった。

  校舎は近代的な鉄筋の四階建てだが、エアコンなどはない。山に囲まれているせい

  か風の通りも悪い。

   平山は校長から一年の副担任を命ぜられ、校務分掌として校庭美化係を命じられ

  た。数学の研究室で、去年まで美化係だった沢田に聞いた。

  「校庭の美化って何をすればいいんでしょうか」

  すると沢田は、

  「何もしなくていいんです。生徒を使って時々草取りしておけばいいんですよ」

  目配せしながら言った。校庭の隅には花壇らしいブロックの囲いがあるが草花らし

  い物はなく、グランドの少し手前から雑草がつづいている。タンポポやナズナ、ノ

  ボロギクなどが顔を出している。

  「花壇の予算はどれくらいあるんですか」

  「予算?そんなものないさ」「じゃ、どうやって苗を」

  「だから、何もしなくていいんですよ」

  沢田は鼻で笑うように言った。

   そうは言われても引き受けたからには何もしない訳にはいかない。平山は特別教

  室棟に沿って十五?ほど続く荒れた花壇を二日ほど掛けて耕した。さて、何を育て

  ようかと思案しているところに、一人の生徒が通りかかり、

  「先生ここは実験室なんだけど、夏暑いんですよ。特に午後なんか西日がたまんな

  いです」特別教室棟を指さしながら言った。

  「そうか。暑いか。よし決めた」平山はグリーンカーテンを作ることにした。

   平山は家の周りに三年ほど前からゴーヤーを植えていた。毎年そこから採れる種

  で苗を育て、昨年のグリーンカーテンはこれまでにない見事な物だった。今年は隣

  近所に分けてやろうと苗は沢山作ってあった。

  「あれをここに植えよう」

  思い立つと平山はさっそく四月のさる一日、二十本ほどのゴーヤー苗を学校に持ち

  込み、耕したばかりの特別棟脇に植えた。

   苗が植えられると雑草だらけだった花壇は見違えるようになった。校舎裏の竹藪

  から姫竹を切り出し、これを組んで棚もしつらえた。

   平山は毎朝花壇にやって来ては苗を見た。雑草が目につけば抜き、地面が乾いて

  いるようならば水をかけた。苗が花壇の土になじみ、ようやく新しい葉を出し始め

  た頃のことだった。

   ある朝平山が花壇を見舞うと、苗が数本踏みつけられていたのだ。おそらく部活

  動の生徒が謝って踏んだのだろうと平山は思った。ところが翌日も更に数本が踏み

  つけられ、幾本かは抜かれていたのだ。これは悪戯だと思った。平山は新しい苗を

  家から持ち込み元通りに植え直した。しかし悪戯は止むことがなかった。ある時は

  ハサミで苗を切り刻んであったりした。反抗的な生徒に違いない。捕まえてとっち

  めてやろうと考えた。だが捕まえて何と言おうか。最近の生徒は、

  「今日たまたまこれ一本だけ折っただけ」

  そう言い逃れて、ますます巧妙に悪さをするようになるだろう。そう思った平山は

  犯人探しをせず、ひたすら植え直すことにしたのだった。来る日も来る日も、それ

  は犯人との競争のようだった。毎日二三本ずつ植え替え、二週間ほどでとうとうす

  べての苗を植え替えるはめになった。成長の早い苗は腰の高さにまで成長し竹に絡

  んでいた。

   翌日、その苗が根本から切られ、しおれていた。それでも平山は黙って新しい苗

  に植え替えた。

   七月に入ると次第に悪戯の頻度が少なくなり三日に一本、一週間に一本となり、

  期末試験の終わる頃にはとうとう悪戯は止んだ。

   梅雨が明けると、ゴーヤーの葉は棚いっぱいに広がり、黄色い花が咲き出し、物

  理室は見事なグリーンカーテンで強い日射しを遮ったのだ。

  『来年ゴーヤーの苗が欲しい人は申し出てください』

  平山はそんな張り紙を研究室の前に貼りだした。初めは誰も見向きもしなかった

  が、ゴーヤーの実が細い胡瓜のように下がり始めた一学期の終了式の日には、二

  十人もの生徒の名前が張り紙に書き込まれたのだ。

  「苗の希望者の中に、悪戯した生徒がいてくれたらいいんだが」

  平山は内心そんなことを呟いたのだった。





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     ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  
 
  師走を迎えた。クリスマスの月だ。クリスマスと言えばサンタクロースと
  クリスマスツリーがつきものだ。ところが何時の頃からかイルミネーショ
 ンがクリスマスの雰囲気を醸し出すようになり、そのイルミネーションが
 何時しか12月の象徴のようになってきて、必ずしもクリスマスを意味し
 ないようにもなってきた。我が町のあちこちにも家の周りを何千個もの豆
 電球(いや今はLED電球らしい)で飾り立てている家が増えた。寒くなっ
 た夕方などに、色鮮やかな光で家や庭を飾っているのを見ると心が和み、
 楽しいものを感ずる。だが見る人よりも飾っている人の方が楽しんでいる
 のではないかとも思える。ことによると見てくれる人が誰もいなくとも、
 せっせと飾るに違いない。ふと私の書いているリーフノベルも、ことによ
るこのイルミネーションのようなものかも知れない。2011,12,1


  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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