文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL124

2011/01/17

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 124
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
   ■■■■■■■  駆け落ち■■■■■■■                      
                                                     
             

    徹が『駆け落ち』と言う言葉を初めて耳にしたのは小学生の頃であった。

  「それにしても勇気のあることをしたもんだ」大人達がそんな話しをして

  いるのを聞きかじったのだが、不安と同時に崇高な行動のように感じたの

  だった。『大人になったら俺も駆け落ちをしよう』そう徹は密かに思った。

   高校生の頃だった。隣のクラスの女子生徒と親しく顔を合わせる機会が

  あった。彼女は徹の開けっぴろげなキャラクターに惹かれ、休み時間など

  はよく仲間を連れて話をしに来た。やがて徹の心の中に淡い恋心が芽生え

  始めた。だが彼女は相変わらず漫画の話や先生の陰口を言い、仲間の失敗

  談で笑い転げるばかり。徹の心は次第に彼女にひかれていった。この気持

  ちが駆け落ちに通ずるものなのかも知れない、と徹は思った。ある時だっ

  た。

  「ボクと駆け落ちしようか」

  そう徹は言ってみた。彼女はぽかんと口を開けやがてグランド中を転げ回

  るほど笑いころげ、それっきり彼女は徹の前には現れなくなった。

  「俺、変なことを言ったのだろうか」クラスの仲間に聞くと、

  「駆け落ち?なんだよそれ。彼女じゃなくたって笑うぜ。お前冗談がへた

  だなあ」仲間にも馬鹿にされた。

  それを期に駆け落ちの意味を知ったのが、それでも心の中には、新天地

  への入り口のような感覚は消えなかった。

   大学を卒業し商社に勤め、生来の明るさが同僚にも慕われ、仲間の紹介

  で結婚したのは徹が三十歳の時だった。家庭生活はごく平凡で長男も産ま

  れ、同期の仲間から少し遅れて中間管理職にも就いた。一人息子も無事に

  成長し、いつの間にか親元を離れていった。

   数年後に定年退職を迎える歳になっていた徹は、ある日散歩の途中でふ

  と『駆け落ち』の言葉を思い返した。子供の頃に抱いた不安感と不思議な

  魅力を持つ駆け落ちは、歳をとる内に、次の段階に踏み入るきっかけだと

  思っていた昔がふと可笑しく思えた。そんなことを考えながら歩いている

  と一匹の子犬がついてきた。角を曲がると子犬も曲がり、走ればやはり走

  ってくるのだ。

  「お前捨てられたのか」

  抱き上げると嬉しそうに尾を振りクウと鳴く。徹は子犬を連れて帰ること

  にした。

  「だめですよ犬なんか。私は子供の頃噛まれたことがあるから犬は嫌いな

  のよ。捨てて来てください」

  妻は金切り声をあげた。

  「今晩一晩くらいいいじゃないか」

  徹の説得でその夜は軒下に置いた段ボールに入れた。

   翌朝妻は朝早くから学生時代からの仲間連中と一泊の旅行に出かけた。

  徹は子犬を家の中に入れ、休暇を取って子犬と過ごした。子犬に名を付け

  風呂に入れ、近所の動物病院で予防注射をしてもらい役所から鑑札を貰っ

  た。子犬と戯れる一日はあっという間に過ぎた。

  妻が一泊の旅行からかってみると夫は家には居らず、そこには一枚の書

  き置きがあった。

  『カルと駆け落ちをします。探さないでください。徹』

  これまで不倫の噂一つ無かった夫が記した『駆け落ち』の文字に妻は呆然

  とした。

  「駆け落ちの相手は外国人パブかなんかで知り合った女かも知れない。でも、

  預金通帳などはそのままらしいから、じき帰って来ると思うけどね」

  心配して立ち寄った息子になだめられたが、妻は、

  「私が犬を飼っちゃいけないって言ったから、犬の好きな女の所に行った

  のよきっと。犬くらい飼わせてやればよかった」

  妻はしきりに自分を責めた。

   まさか会社まで辞めてはいないだろうと思った息子は、徹の会社に電話

  をして徹を呼び出した。遠回しに話を切り出す息子の話に徹の返事は要を

  得ないものだった。やがて、

  「え?カルって犬の名前なの?フィリピン人女性じゃないの」

  息子は呆れて何も言えなかった。息子から事情を聞いた妻は手紙を書き徹

  に届けた。手紙にはただ一言、

  「一緒にカルを飼いましょ。もう駆け落ちなんかする歳じゃないんだから」

  と記されていた。それを見た徹は、

  「やはり駆け落ちっていうのは、新しい世界への入り口だったんだ」

  そう呟いて微笑んだ。



 
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  
   また新しい年が始まった。思えばこれまで「今年こそは」と思うことが少
  なからずあったが、最近は今年こそやりたいと思うことが思いつかない。
   考えてみれば向上心が無くなったということだろうか。今年、つまり来年
  度だが、また一年今勤める専門学校で引き続き教鞭を取ることになったが、
  それはそれで楽しいことで、学生達に今度は何を教えようか今からワクワ
  クしているが、これとて、今年こそはという感覚とは違う。
  してみると歳をとるに従って、限度が見えているということかも知れない。
  どれだけ頑張ればどれだけの結果と評価が得られるかが分かっているので
  ある。だから、思わぬ評価を期待する「今年こそは」という言葉は出なく
  なったのかも知れない。
  だが、そんな分かったような気持ちを捨て、65才には65才の思わぬ発展
  があることを敢えて期待した方が、人生楽しいのかも知れない。
  正月早々変な悟りめいた考えが顔を出したものだ。
  今年もよろしく。(2012,1.16)

                   
  

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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