文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL121

2010/09/14

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 121
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■  一樹の変身 ■■■■■■■                      
                                                       

                   
    夏休みも半分ほど過ぎ盂蘭盆の日の朝、中学二年生の一樹は祖母の指図で盆

  棚を飾っていた。物置から飾り棚や提灯を運び出し、仏壇を掃除して棚を組み

  立て、棚にござを敷いた。棚を囲む四方の竹に張り巡らす縄を作るためススキ

  の葉を取りに行ったり、提灯を組み立てたり行灯を庭先に建てたりした。

   一段落すると祖母が菓子と飲み物を運んでくれた。それを食べながら廊下に

  あるロッキングチェアーを見るとコチが気持ちよさそうに昼寝をしていた。

  「コチはいいなあ」一樹はつぶやいた。

   コチとは、二年前に友達の家から貰ってきた犬の名で、犬種ははっきりしない。

  「犬の方がいいのかい」一樹の独り言を聞きとがめた祖母が言った。

  「だってコチは働かなくたってご飯は食べられるし、第一宿題がないじゃん」

  「そいじゃ盆棚に線香を上げて、仏様に頼んでみな」

   一樹は祖母の言うとおり線香をあげコチを抱きあげて椅子に座った。庭の生い

  茂った楠の木の葉陰が揺れ、さわやかな風が吹いた。しばらくすると祖母の声が

  した。

  「一樹や、スイカを棚に飾っておくれ」

  だが一樹は億劫に思い、もう一度呼ばれたら立ち上がるつもりで聞こえないふり

  を決め込んだ。ところが二度目の声が聞こえない。やがて聞こえてきた声は、

  「それでいい。あとは野菜と果物だよ」

  不思議に思い目を細めて仏壇の方を見ると、自分によく似た男の子が祖母の手伝

  いをしているのだ。なんとその子は一樹ではないか。俺はここに居るのに。そう

  思い一樹は自分の姿を見ると、自分はコチになっていたのである。

  「仏様がオレを犬に変身させて、コチがオレになったんだ」

  一樹は楽しいような可笑しいような気持ちになり、犬の目線で家の中を見て回る

  ことにした。自分の部屋にも行ってみた。散らかった漫画本の上にグローブやバ

  ット、ジャージや汚れたティーシャツなどが雑然と放り投げられている。勉強机

  が山のようにそびえ立って見えた。宿題のプリントやテキストが鞄からはみ出し、

  まだ手を付けていないのが見て取れた。

  「コチが宿題をやってくれたらいいのに」

  そう思ったコチの一樹は祖母の手伝いをしている一樹の袖を引き、宿題をやるよ

  うに頼んだ。すると一樹になったコチはいきなりテキストを丸め、窓から放り出

  してしまったのだ。

  「そんなことして怒られるのはお前だからな。オレはこのまま犬で居るからいい

  けど」

  一樹を見上げた。急に腹が減ってきた。何かくれるように頼んだが、誰も知らぬ

  顔で一樹は自分だけ冷蔵庫をのぞきアイスクリームを食べている。夕方になって

  も食べ物にありつけなかった。母親が帰ってきて土産のドーナツが出されたが、

  犬の一樹にはひとかけらもくれない。祖母がそっとかけらを出すのを見た母親は、

  「おばあちゃん。犬にはドーナツはカロリーが高すぎですよ」と、とがめた。

  「おや、そうかいね」

  そう言ってドーナツのかけらはおばあさんの口に入れられた。結局ご飯にありつ

  けたのは夕飯時で、それもまずいドッグフードだった。

   その夜は蒸し暑く、どこに行っても気が狂いそうに暑い。一樹はと見ると、エ

  アコンの効いた部屋でテレビを見ている。

  「あっ、オレがいつも見ている番組が見たい」

  そう思ったが回してはもらえない。腹は減るし見たいテレビも見られない。それ

  に明日は仲間と海に行く約束だが、犬の姿では行くこともできない。犬でいれば

  確かに用は言いつけられずに済むが、誰にも相手にされていないとことにも気づ

  いた。自分のやれることを手伝うくらい、今思えばどうと言うことではないでは

  ないか。あてにされる人間の方が良かったかも知れない。そう思った時だった。

  コチが膝から飛び降り、一樹は目が覚めた。仏壇の線香が燃えつきようとして

  いた。

  「スイカを運んでおくれ」

  また祖母の声がした。一樹は思わず上ずった声で返事をすると台所に走って行

  った。ジャーキー欲しさについて来たコチには見もくれず一樹はスイカを運ぶ

  のだった。


 
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  
  暑い!暑い!暑い!
この暑さをどう表現すれば良いのだろう。石川五右衛門の気持ちが分かると言
う表現は嘘くさい。うだるようだ、とか、じめじめした鬱陶しさ、とかという
表現は常套的であまりにも芸がない。気が狂いそうだと言っても本当らしくな
い。私以外の御仁は一体この暑さをどう表現するのだろう。
 我が家では一言も暑いとか苦しいとかと、愚痴をこぼさない者がいる。それ
は『コムギ』と名付けた我が家の愛犬だ。彼女は黙って涼しそうな板の間に腹
を押しつけ、静かに寝ている。夜は夜で、私の背中に彼女の背中をぴったりく
っつけて来る。自分より体温の低い私に気持ちよさを感じるのだろう。やがて
暑さを感じ出すと、黙って私から離れ、幾分冷えた自分の布団で寝る。しばら
くするとまた私の所に体をくっつけて来る。
「暑苦しいからあっちへ行けよ」私は時折彼女を布団から押し出す。しかし彼
女はなかなかしたたかで、その時はいったん立ち退くが、やがて舞い戻ってく
る。
 少しでも暑いと眠れない私は、たまらずエアコンのスイッチを入れる。実は
女房はエアコンが嫌いで、なかなかスイッチを入れさせて貰えないのだ。女房
が寝入ったのを見計らってスイッチを入れると、犬の彼女は一番涼しい風の来
るところに行って寝る。
 我が家の犬は実に我慢強い。どんなに暑くても黙っているのがいじらしい。
そんな彼女の為に、女房と私が留守をする時、女房は、「暑いのは可愛そうだ
から」そう言ってエアコンのスイッチを入れてやる。
 黙っている方が同情を買うのだろうか。とは言え、私はやっぱり黙ってはいら
れない。
                     (2010.9.13)
  

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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