文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL118

2010/05/27

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 118
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■    喜劇  ■■■■■■■                        
                                            
                 

    一人息子が大学生になり家を離れると松子は急に手持ちぶさたになった。

   そんな折、松子の女子高時代の仲間のキー子が尋ねてきた。キー子は高校時代

  演劇部に所属していたが、現在その時の仲間を中心にして作った小さな劇団の一

  員だった。キー子は松子に劇団に入るよう勧めに来たのだ。松子も少しばかり演

  劇部にいた経験もあってすぐに入団したのである。

   松子の夫は町役場に勤めるまじめで優しい男だった。松子が劇団に入団し練習

  で夜遅く帰宅しても文句一つ言わず、「今度見に行くよ」と応援さえしてくれた。

   劇団は丁度過渡期にあった。これまで公演してきた出し物は観客が見飽きてい

  るようで、劇団存続の為にも何か新しい物に挑戦すべきだという機運が高まって

  いた。丁度そんな時期にリーダーが体調を崩して入院し、キー子が座長を仰せつ

  かっていたのだ。

  「新しい劇のアイディアはみんなに任せるとリーダーは言ってたわ」キー子は呼

  びかけた。数日して出された案は喜劇に挑戦しようということだった。

  「喜劇の台本はどうすんの。既成のシナリオじゃつまんないし。良い物もないわ」

  「吉本の真似したってしょうがないしね」

  「そうよ、どたばたは芸術じゃないもの」

  「いいや演劇は娯楽よ。芸術なんて思わなけりゃいい」

  「そりゃ違う。演劇こそ総合芸術よ」

   侃々諤々の議論を戦わせ、気がつくと夜中の十二時を過ぎていた。

  「松子、旦那さんに電話するの忘れてるでしょ。怒られるぞ」キー子が言った。

  「大丈夫。家の人、私には優しいのよ」

  「優しいってのはあやしいんだよ。女が居るから女房に優しってこともあるし」

  キー子の冗談を松子は一笑に付した。

  それから数日後のことだった。

  「ねえ、自分の旦那が浮気をするかしないかの賭をする話はどう?賭をした友達

  は賭に勝つために夫を誘惑するのよ。誘惑に負けそうになる夫にハラハラしなが

  ら、最後に妻の所に帰ってきてハッピーエンドってのは」

  「あら、私の家がモデルみたいね。良かったら私がその妻の役をやりたいわ。で

  も焼き餅を焼く女の気持ち、分かんないな」

 「じゃあ松子は賛成ね。他のみんなは  どう?」

 その日集まっていた者はみな賛成し、早速キー子がシナリオを書くことになった。

  「この劇は台詞で笑わせるんじゃなくて、男と女の怪しい動作をコミカルに演じ

  ることで楽しませるのよ。だから台詞は普通の劇より少ないけど同じ時間をかけ

  るの。演技力が要求されるわよ」

 キー子はいつの間にか監督役を買って出ていた。台本書きが始まって間もなく、

 キー子は松子の家に足繁く尋ねてくるようになった。

  「まじめな旦那のイメージが掴めないの。松子のご主人ちょっと参考にさせてね」

  茶を飲みながら松子の夫をちらちら見ながら観察した。

   それから一月が過ぎた。

  台本も完成し読み合わせが始まると松子は言った。

  「私、やっぱり焼き餅なんか焼いたことないから難しいなあ」

  「なに言っているのよ今更」

  「だって内の人、私一筋だから。幸せな人間には不幸は演じられないのよ」

 松子はそんなのろけたようなことを言った。

   そんなある日曜日のことだった。松子が買い物に出ている間にキー子が尋ねて

  来ると、一人で庭に居た夫君に何やら耳打ちをした。やがて松子が買い物から帰

  ってくると、キー子はいきなり夫君の胸にすがりついた。それを見た松子は、

  「何やってんのよキー子。あなたもどういうつもりなのよ」

 買い物袋をたたきつけながら大声を出した。

  「分かった?焼き餅の気持ち。今ご主人に頼んで演技して貰ったの」

  「嘘でしょ。本当なのあなた」

  「そう。今頼まれて」

  「嘘だわ。悪いけどキー子帰ってよ」

 松子の剣幕にキー子は取り付く島もなく帰って行った。松子はそれっ

 きり劇団に顔を出すことはなくなった。数日して夫君は 言った。

  「この間のあれ、本当に頼まれたんだ。離婚なんて考えてないよな」

 すると松子 は目をつり上げながら言った。

  「あたりまえよ。これで離婚したら本当の喜劇じゃないの」



  
   


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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  

   未経験では本当のことは分からない。このことは以前にも書いた。犬を飼って

  みて子供の様に可愛がる人の気持ちが分かったことや、親の介護を実際にするこ

  とで、その大変さが理解できたこともあった。確かに未経験なことはいい加減な

  批判はするものではない。 ところが、そのことは分かっているつもりでも、実

  は分かっていないらしいことを最近知った。

   実は私の弟が数ヘクタールの畑地を借り、せっせと野菜を作っているのだが、

  数万円も掛けて道具や苗を買い、数千円分の野菜を収穫しているのだ。この計算

  に合わない畑仕事が私には理解できないでいた。また私の妻も我が家の小さな庭

  に数十個もの鉢を据えて草花を育て、地にも所狭しとシャクヤクやらボタンやら

  アジサイやらを植えており、暇さえあれば草取りをしている。何がそんなに楽し

  いのか私は不思議な物を見る目で、妻の水掛の姿を眺めていた。

   ところが最近私は、私が努める学校で花壇制作を担当することになり、マリー

  ゴールドを百株ほど植えたのだ。植え終わってみると急に雑草が気になりだし、

  かんかん照りの日が二日も続くと、枯れはしないか心配になりだした。五月の連

  休には二十数!)離れた花壇まで出かけて水まきをしたのである。

   数週間経ってみると、一つの苗は二倍ほどに生長し、二〜三個しかついていな

  かった花が五〜六個に増えるのを見ると、子供の成長を見る様な愛しさが湧き、

  なおさら雑草や水まきが気になってくるのだった。

   経験してみなければ何事も理解できないということは分かっているが、実際一

  つ一つ経験してみなければ、人は何一つ分からないのだということを今更ながら

  思い知らされた思いである。         ( 2010・5・26)

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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