文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL117

2010/04/02

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 117
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■   離婚キャンペーン ■■■■■■■                        
                                            
                 
   納税組合の会合が終わり二次会の会場である寿司屋の二階に陣取ると、小畠

  (コハタ)は焼酎のボトルを抱え込み梅割やウーロン茶割をせっせと作った。

  「前田さんは水割りで福田さんは梅干ね。宮崎さんはまたコーラ?」

  「ええ、今日も車なんで」グラスを配り終えると世話役の音頭で乾杯した。

  「会合の後のこれが好きでねえ。『サケなくて何で己が桜かなって』親父がよく

  言ってたけど、酒こそ生き甲斐」そう言って小畠はグラスを口に運んだ。すると、

  「離婚しちゃったから酒だけになっちゃったねえ」前田がひやかした。

   宴会は不景気の愚痴に始まり、時間が経つにつれ小畠のいつものくせが始まっ

  た。

  「太田さん。あんたまだ離婚しないの?俺なんか離婚してまる三年だよ」

  「そう。うちの悪妻ぶりを知ってる仲間には小畠さんみたいに離婚勧められるん

  だけど、俺、意志が弱いから」太田が言った。

  「小畠さんの離婚キャンペーンが始まったね」誰かが言った。頭に乗って小畠は、

  「結婚なんて未開人の悪習だよ」声高に言った。その声に愛妻家の宮崎は嫌な顔

  をした。宮崎の横顔を見て小畠は更に声を高くし、

  「だいたい今時女房がいなけりゃ暮らせないなんて時代遅れだよ。女房なんての

  は百害あって一利なし。体の調子が悪くて医者に行けば、医者はまずストレス解

  消に離婚しろって言うぜ」そう言って笑った。

  「離婚した当座は辛かったでしょ」太田が言った。

  「いや、俺、意志が強いから。そのうちよその夫婦が可愛そうに見えてくるさ。

  離婚してみると分かるけど、まず朝はすっきり起きられ、飯は旨いし仕事もはか

  どる。女房の存在がいかに俺の人生を邪魔していたかわかったよ。金はかかるし、

  家の中は汚れるし、第一息が詰まる。思い切りが肝心だよ太田さん」

  宮崎は小畠から離れようと立ち上がった。すると小畠は、

  「宮崎さん。あなたは奥さん孝行らしいけど、それじゃ長生きできないよ」

  つっかかってきた。宮崎は無視しようと思ったが、黙っていられなくなり口を開い

  た。

  「小畠さん。あんた離婚したのを自慢しているようだけど、あんなに好きだった

  人と別れて本当は寂しいんでしょ。最近騒がれだした離婚ブームに煽られて、意

  志の強いふりをしただけでしょ。お宅の奥さんはこれまでにずいぶんあんたを癒

  してくれたし、だいたいこの納税組合にも面倒を見てくれた人じゃないですか。

  言っておきますが私は女房と別れる気なんか全くないですよ。その為に命が縮ま

  るんなら縮んだっていいです」

  「おや、長生きしたくないの?」

  「長生きしたからって、あんたも私も、お互いそれほど価値ある命でもないでし

  ょ。寂しく長生きしてどうするの」聞いていた古川は我が意を得たように、

  「そうだよ。わざわざ寂しい思いを長びかせたって意味ねえよ」そう言いながら

  タバコに火をつけた。それを見て前田が言った。

  「古川さん、あんたはこのご時世にまだタバコをやめられないんですか。長生き

  できないよ。私は禁煙して三年経つよ」古川はむっとしたように、

  「前田さんの禁煙自慢は小畠さんの離婚自慢と同じだね。禁煙も離婚も他人がと

  やかく言うものじゃないでしょ。宮崎さんが離婚する気がないように、私は禁煙

  する気なんかないですよ」そう言って旨そうに煙を吸い込んだ。

   宴会も終わりかけた頃宮崎の妻が迎えに来た。これから二人で飲み直すのだと

  言って帰って行った。

  「俺も帰るか。女房の土産の寿司を持ってさ」古川が言った。

  「土産?そうだ、俺も頼もう」福田が言った。

  「俺も土産持って機嫌を取るか」そう言って太田が立ち上がった。

   やがて酒席は小畠一人になった。家に帰っても待っている者もいないのだ。小

  畠はそばにあったボトルを持ち上げ、

  「禁煙も離婚も自慢出来ることでもねえってことか。人に勧めるものではねえと

  きたか」寂しそうに呟いた。

   その時、店の外で宮崎夫婦の笑い声が聞こえた。

  「復縁するかなあ」小畠は古川の消し損じたタバコの煙を黙って見つめた。 


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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  

    四月の声を聞くようになると,我が家の小さな庭には木瓜(ぼけ)の花が真っ盛り
  になる。同じ枝に深紅の花もあればピンクも白もまだらもある。私は私なりに
  綺麗だとは思うが、妻は必要以上に「綺麗だ綺麗だ」と言って喜ぶのだ。
  それは単に妻が花好きなだけなのだと思う。
  ところが最近さる本で、男の脳と女の脳は構造が違い、目の構造も大きく違
  うという論説を読んだ。具体的に言うと、目の網膜にある色彩を感ずる錐状細
  胞は女性の方が遙かに多く、白黒や運動を感受する幹状細胞は男の方が多いの
  だそうだ。女の幼児はカラフルな人形に興味を示し、男の子は色にこだわらず
  動く玩具に興味を示すのはそのためだそうだ。
   これは科学的に見て正しい論のようだが、してみると私の妻が木瓜の花を見
  て綺麗だと感じている色彩は,私が感じているものとは違う光景なのかも知れな
  い。私には見えていない物を妻は見ているのだ。そう考えると、何やら妻には、
  私には分からない世界を持っているようで、羨ましいような、はたまた疎外感
  の様な物を感じて、妻に秘密めいた物があるように思えるのである。
                          (2010.4.2)

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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