文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL116

2010/03/03

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 116
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■      弁当    ■■■■■■■                                                      
                                            

    直也がさる工場で働き出してから五年が経った。一人暮らしにも慣れた。だが

  三度の食事には飽きが来ていた。昼は会社の狭い社員食堂で五種類のメニュウを

  代わる代わる食べるのだが、それもほとほと嫌になっていた。

   大学卒業後就職口がなく、しかたなく初めたアルバイトがいつの間にか職場に

  なったのだ。わずか五年で部品組み立ての班長になった。始めの内は班長班長と

  呼ばれ悪い気はしなかった。良い製品を作り早く係長になりたいと意気込んだり

  した。だが勝手に休暇を取るバイトやパートの補充を考えることが大きな仕事に

  なり、いつの間にか仕事のやり甲斐も働くことの意義さえも見えなくなっていた。

   そんな直也の心を慰めたのは、預金通帳の数字がわずかずつ増えていくことだ

  った。ファミリーレストランで、子供づれの家族や若いカップルが楽しそうにし

  ているのを見ると自分が惨めに感じられたが、そんな時こそ通帳は直也の心を支

  えてくれた。『そうだよ。俺には金がある。金があれば老後だって安泰だし何よ

  りも心が満たされる。金こそ幸せのバロメーターだ。借金してデートして何が楽

  しいんだ。そのうち一千万の大台に載せるぞ』それが直也の口癖になった。

   五百万円を超えたある日直也は思った。『やっと半分まで来たか。よし、こう

  なったら俺は結婚なんかしねえ。苦労して貯めた金を何で他人に別けてやらなき

  ゃいけねえんだ。万一結婚するとしたとしても、生活費はその女とフィフティフ

  ィフティにしよう。夫婦といえど金は他人だ。俺の幸せをとられてたまるものか』

  そんな事を呟いた。

   ある春のことだった。いつものように工場に出ると係長が若い女性を連れてや

  って来た。

  「今度ここで働いてもらう川原奈津実さんだ。面倒を見てやってくれ」それだけ

  言うと係長は出て行った。奈津実は派遣社員で、景気の動向によってはすぐにも

  いなくなる社員だ。そんな奈津実に直也は興味は無かった。奈津実も直也に目も

  くれず、与えられた仕事を黙々とこなした。二人は仕事のこと以外ほとんど口を

  利かなかった。始めはそれで良いと思っていた直也だったが、班長を無視している

  ような奈津実が次第に気になりだした。たまたま社員食堂で、

  「そのハンバーグおいしいですか」

  そう聞かれたことをきっかけに少しは口も利くようになったが、相変わらず二人

  は黙っていることが多かった。だが、不思議に食堂では同じ席につくことが多か

  った。

  「ここしか空いてないので」

  奈津実はそんな言い訳じみた事を言いながら座った。しばらくすると

  「どうしてこんなにまずいのかしら。班長は我慢できるんですか」

  奈津実が言った。

  「この値段じゃこんなもんさ。弁当を作ってくれる人のいない俺には上等だけど」

  「じゃ、今度私がハンバーグを作ってきてあげましょうか」

  そう言って翌日の事だった。直也の前にハンバーグの弁当が差し出された。怪訝

  そうな顔をしながら直也はハンバーグ弁当を食べた。その旨いことと言ったらこ

  の上なかった。なぜか直也の目に涙が浮かび出た。

   そんなことがあって急に近しくなった直也と奈津実は翌年結婚したのだった。

  結婚式は会費制で済ませ、新婚旅行は近くのビジネスホテルに二泊しただけだっ

  た。生活費は二人でイーブンに出しあい、互いに預金の額を詮索しない約束で新

  婚生活が始まった。

   直也は毎日新妻の作る弁当がうれしかった。それにもまして心のこもった夕食

  は至福のひとときに感じられた。このささやかな幸せを守りたいと思った。ただ

  不思議に思ったのは、奈津実に渡す約束の金でどうして毎日これだけの物が作れ

  るのかということだった。直也は聞いてみた。すると、

  「私の貯金からよ。直也が喜んでくれれば私もうれしいから。お金は貯める物じ

  ゃなくて幸せを買う物だって思ってるから」

  直也は急に恥ずかしくなった。翌日夕方、直也は空の弁当箱の上に『二人の幸せ

  を買おう』そんなメモと一緒に預金通帳を載せて渡したのだった。
    
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  

    二十年ほど昔だろうか。男の子が男の子らしい遊びをし、女の子が女の子ら
  しい物を欲しがるのは、男はこうあるべきだ、女はこうあるべきだと決めつけた大
  人が男の子には男らしい玩具を与え女の子には綺麗な花柄の服を着せ、装
  飾品を与えるからだというそんな論文を読んだことがあった。その時私はこの論
  に懐疑的だった。ところが新聞やテレビといったメディアや、さる教育機関ではこ
  の論を支持する、いや、支持と言うより鵜呑みにして話をする人間の多さに唖
  然とした。彼らは「アメリカの博士が言っているんだから本当だろう」というのであ
  る。従って男女共学こそ理想の姿だというのだ。そこまで言われては私も反論
  できないままでいた。ところが最近読んだ『男の脳と女の脳』と題された論文は
  、男女の脳の違いを様々な実験を元に証明していた。色彩に対する感覚も
  耳の聞こえ具合も、言語理解や外界への反応も全て男女では違いがあり、
  それは幼児期から大きな差になっているというものだった。私には三人の孫が
  いるが、男の子と女の子では欲しがる物が確かに違う。男の子は車や鉄砲や
  刀、また動く玩具に興味があり、女の子はネックレスや髪飾りなど光り物が好
  きだ。男女の違いは育て方によって作られるのではなく、始めからそのように備
  わっているといるようだ。私は溜飲を下げた。
   ところで、私がここで言いたいのは男女の差についてではない。実は、目新
  しいことを提唱しなければ注目して貰えないアメリカ社会の歪んだ文化と、ア
  メリカ人の論ならば無批判に受け入れて進歩的を装う日本人のあほさ加減
  を指摘したいのである。付和雷同よろしく男女共学に走った日本の高等学
  校も、今一度男子校、女子校の良さを考えてみることも必要ではないだろ
  うか。中性的思考をよしとする今の教育が、実は凶悪犯罪を生み出す要
  因になっているように思えてならない。むろんこれは私の感でしかないのだが。
                                                       (2010,3,2)

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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