文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』 VOL115

2009/11/30

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 115
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
   
       ■■■■■■■  ボランティア  ■■■■■■■                                         
                                  

     夫を亡くして数年後のこと、美佐子はボランティア活動に目覚めた。その後一

  人息子の勝美が結婚したのも、美佐子の活動が縁だった。活動の打ち合わせでや

  って来た女性との出会いがきっかけだったのだ。
 
   息子が結婚すると、美佐子はますますボランティアに力を入れた。

   美佐子はほとんど家を留守にし、翌年に生まれた初孫の写真を胸に持ち歩いて

  は仲間に見せた。

  「人のために汗を流す人には幸せが訪れるって言うけど、美佐子さんはその見本

  ね。お孫さん、可愛いでしょ」

  回りの者から羨ましがられた。

   美佐子がボランティアグループのリーダー役になった頃二人目の孫が生まれた。

   二人目の子を産んでから産後の肥立ちが悪く、勝美の嫁の奈々恵は寝込みがち

  になった。

  「お母さん大丈夫ですから、ボランティアに出かけてください。お母さんがいな

  いとグループのみんなもこまるでしょうから」

  奈々恵は衰弱した体でどうにか赤ん坊と三歳の子の面倒を見ていた。無理がたた

  ったのか奈々恵はある日高熱を出し、喘ぎながら夫の職場に電話をした。病院に

  行きたいので子供を見ていてくれと頼んだのだ。会議の最中だった勝美は母親に

  連絡を取り、子供を見ていてくれるよう頼んだのだが、美佐子は、

  「今日はだめよ。私今忙しいんだから。自分の子供なんだから自分で何とかしな

  くちゃ。人に頼っちゃだめよ」

  そう言って電話を切った。息子は上司に頼み込み、

  「体の弱い奥さんを持つと出世に響くよ」

  そんな嫌みを言われながら帰宅した。幸い奈々恵の病気はたいしたことはなく、

  三日ほどの入院で済んだのだが、勝美には母親の言葉が胸の奥に引っかかってい

  た。

   その年不景気の風が世界中を吹き抜け、勝美の会社もリストラや給料カットの

  噂が流れた。そんなある日夕食のテーブルを囲みながら、ふと勝美は漏らした。

  「母さんはいいね。父さんの年金はまるまる好きなボランティアに使えて」

  勝美は決して嫌みで言ったのではなかった。自分も早く社会の不況に一喜一憂し

  なくても良い歳になりたいと思っての言葉だった。だが美佐子にはそうはとれな

  かった。

  「息子が親を食べさせるのがいやなのかい。お前達は私がボランティアを好きで

  やっていると思っているかも知れないけれど、この仕事は家族の為でもあるんだ

  よ。町の人たちが我が家の家族を見る目が違うでしょ。みんな私が頑張っている

  からじゃないの。お前達には感謝されてこそ文句を言われる筋合いはないよ」

  美佐子は一人憤慨し、まくし立てた。

   それからも美佐子は勝美や奈々恵の都合にはお構いなく、打ち合わせと称して

  は家に人を招き、二人の子守りで気ぜわしい奈々恵に茶を出させたり時には昼食

  の用意をさせた。ある日勝美が言った。

  「母さん、奈々恵に聞いたけど、少しは家の都合も考えてくれないかな」

  すると美佐子は、

  「お前達は、私が人様のためにやっていることがそんなに気に入らないのかい。

  私は社会の為になる活動をしているのよ。お前達も社会の一員なんだから、私の

  活動を少しくらい応援しても罰は当たらないでしょ。それが分からないのならこ

  の家を出るしかないね」

   そんな折り勝美の転勤が決まった。通って通えない所ではなかったが、この際

  だからと別暮らしを始めた。

   一人になった美佐子はこれまで以上に外へ出るようになった。やれ打ち合わせ

  だ、やれ反省会だと、仲間の家を転々と尋ね歩いた。やがて、頻繁に尋ねてくる

  美佐子を仲間達は疎ましくなっていった。

  「ボランティアって、自分の家のことをやった後の余力でするものでしょ。家を

  犠牲にしてはねえ」

  そう言って仲間は一人抜け二人抜け、活動も衰退していった。美佐子は独りぼっ

  ちの生活を送るようになった。

  「私のように寂しい人の話相手のボランティアはいないのかしら。老人ホームだ

  けがボランティアの対象じゃないわ」

  それが美佐子の口癖になった。美佐子には、寂しさの原因が自分にあることに気

  づくことはないままだった。






 

  
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
  

   今年もあとひと月を残すばかりになった。公職を退いて三年目だが、今年は
 多くの人の協力を得て我ながら充実した一年を送ることが出来た。六月下旬から
 八月いっぱいに掛けての花ぐるま展は多くの人に喜ばれ、通算七回の講習会を開
 催した。いわゆる学校の授業とは違い、材料費を払っても習おうとする意識があ
 る人達ばかりなので、一生懸命理解しよう、覚えようとする意欲があり目が輝い
 ていた。そんな中で自分の知っていることを教えることは気持ちの良いことだ。
 この花ぐるまの幾つかが『保育のひろば』という保育雑誌で紹介されることにな
 った。これを機に又来年講習会に出かけられたらいいなと思っている。
 来年も良い年でありますように。それを念じて年を越そうと思う。(2009,11,30)
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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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