文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL104

2008/12/29

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 104
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
       ■■■■■■■   別居結婚   ■■■■■■■                       
                                                                                         
  


   飯田がよく来るその寿司屋の店先には朝顔の鉢が置かれていた。店内は小さい

  が落ち着いた雰囲気がある。森川が入ってきた。

  「雨が降りそうだから、朝顔、中に入れとくよ」

  鉢を引きずってきた森川に、

  「鉢なんかいいからここへ来いよ」

  飯田は手招きをした。

  二人は高校時代からの仲間だった。

  「相変わらず飯田はダンディーだね」

  森川が言った。飯田は黒のレザーを着込み細面の顔がいっそう精悍に見える。森川

  は息子の高校時代のジャージを着ていた。

  「ビールでいいかい」

  「ああ。相変わらず仕事は忙しいんか」

  「まあね」二人は近況を話し出した。

  「最近俺、二階と下に別れて、家庭内別居をしてるんだ」森川が言った。

  「かみさんと喧嘩でもしてるんかい」聞くと、

  「そうじゃないけど、少し距離を置こうと思ってさ。これ飯田の真似だけどな」

  と言った。

   飯田は別居結婚をしているのである。細君とは数キロ離れた所に別々に暮らし

  ているのだ。

  「飯田が別居結婚するって言ったとき、俺ずいぶん反対したけど意外にいいかも

  って最近思ったんだよ。いつも新鮮というか、うちなんぞはお互い平気で文句の

  言い合いだよ」

  「そりゃあいけないね。いくら夫婦でも常に相手を異性として敬意を払わなくち

  ゃ。その点俺の別居形態は互いの尊重がいつまでも保たれる。二十一世紀は別居

  結婚の時代じゃあないのかな。百年くらいじゃ愚かな民衆は変わりきれないだろ

  うがね」

  飯田はいつものように気取った口調で言った。

  着メロが鳴った。森川はテーブルを少し離れた。電話の応対が終わると、

  「ご免、家のが怪我をしたみたいだから見てくるわ」

  そう言って慌てて帰っていった。

  飯田はまた一人になった。しばらく店の主と話をしていたが、

  「森川さんはああ見えても女房孝行でね。よくここにも二人で来ますよ」

  主の言葉に飯田は急に寂しいものを感じ、妻を呼び出すことにした。

  電話をかけると娘の美奈が出た。

  「ママは今日はダンスの日なの。お寿司屋なら私が行くから」

  美奈は大学三年になる。

  「そう言えばここの綾ちゃんと同級生だったね。今は何を」飯田は主に言った。

  そんな話をしている間に美奈が飛び込んできた。途中で雨が降り出したらしい。

  「パパ元気だった?私ここで戴くわ」

  美奈は店に入るなりカウンターに座りビールを注文した。飯田もグラスを持って

  カウンターにやって来た。愛想の良い主は

  「飯田さんは二人も恋人を持っているみたいで羨ましいね。やっぱり一定の距離

  というのは大事ですねえ。別居結婚は正解ですよ」

  すると飲みかけたビールを置き、

  「親はそれでいいかも知れないけど、子供から見れば他人同士の間にいるみたい

  で、私なんか両方に気を遣っちゃってのびのびできなかったわ。ここの綾ちゃん

  が思う存分子供をしてて羨ましいと思ったこと沢山ある」

  すると主は、

  「だから美奈ちゃんはしっかりしてるんだよ。綾なんかまだ子供だよ」

  合羽巻きを出しながら言った。

  「ここだけの話だけどねおじさん」

  美奈は自分でビールを次ぎながら、

  「先月だったかなあ。パパが二三日泊まったことがあったのよ。そうしたら両方

  とも気兼ねしちゃって、ママなんか熱を出しちゃったのよ。そしたらパパは『美

  奈頼むよ』って言ってさっさと帰っちゃったの。やっぱり借り物夫婦だわね」

  「そりゃあそうだよ。いつも一緒じゃないんだから何をしてほしいかは美奈が一

  番知っているはずじゃないか」

  「だから普通じゃないのよ。何が未来の夫婦よ」

  美奈は目を反らした。目の先に朝顔の鉢があった。

  「朝顔ってさ、支柱があってそれに支えられて花が咲くのよね。それがバラバラ

  じゃ朝顔になんないのと同じよ。パパたち朝顔に叶わないんじゃないの?」

  「そうじゃない。お互いを尊重しているんだ」飯田が言った。

  「それにしてはいつも支柱を探しているみたいに見えるわね。言っておくけど、私

  は二人の支柱じゃないから当てにしないでよ。ごちそうさま」

  美奈は帰っていった。

  「考えてみると、夫婦の花が俺たちには無いのかもな」

  飯田はつぶやいた。


  
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

   今年もあと数日で終わろうとしている。私が生きてきた中で、今年が一番早い
一年であったように思える。だが今年は大いなる収穫があった。現在講師として
勤務している専門学校の学園長に勧められ、『花車』を考案したことである。花
車とは、種々の造花を風車のように回せるようにしたものだ。
これまでにコスモス・リンドウ・ユリ・ツバキ・ハイビスカス・スイセン・ハス・
ダリヤ・チュウリップ・シクラメン・アサガオなどを作った。学園長は喜び、来
年千葉市にある緑の森公園で展示会を開こうと言い出した。多くの人に見て貰え
るのは嬉しいが、展示となると十本や二十本では見栄えがしない。来年に向けて
今から準備に掛かろうと思う。やることが有ることは、面倒なようで実はありが
たいことかも知れない。来年このホームページでも案内をするつもりだが、多く
の方に見に来ていただきたいと思っている。 (2008.12.29)

 

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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