文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL 102

2008/10/01

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL 102
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
        
       ■■■■■■■   ピラカンとヒヨ ■■■■■■■                       
                                                                                    


   小さなピラカンサスの木が実をつけた。ヒヨドリが来てついばみだした。

  「ヒヨさん。私はあなたに運ばれてここで芽を出したピラカンだけど、来る

  途中で面白い話を聞いたんだ。聞いてくれるかい」

   迷惑に思ったがヒヨだが馳走になっている手前聞かないわけには行かず、

  「話してごらんよ」と言った。

  「じゃ話すね。俺というのは話をしたその虫の事だよ」

   そう言って秋風が木の葉をくすぐる中で話し出した。

  (以下虫の話)

  「俺の話を聞いてくれ。俺はエノキの葉の裏にいて、来年の初夏には紫の蝶に

  なるものだがね、俺は自分の生き方を予知できる天才的昆虫なんだ。今の姿は

  鳥の糞のようにしか見えないが、俺の変身ぶりは見事だぞ。

   いや、そんなことより俺の知恵を多くの虫共に分け与え、命の素晴らしさを

  知らしめたいのだ。

   今の俺には遠くに移動する手だてがない。盛んに飛んでいるトンボには羽が

  あるが知恵がない。空高く飛ぶのはいいが、飛んで何をする訳でもない。子供

  の頃は水中の生き物を食い殺し、変身後はブヨを追い掛けて食うだけだ。そし

  て近くの雌と交尾しDNAのプログラムのまま一生を終える。

   その点俺は大いに違う。自分に与えられた生命の有るべき姿を、自らの思考

  の元にコントロールできる。

   大きい声では言えないが、俺は人間よりも頭がいい。

   人間は少しずつ蓄えた知識を孫子に伝える手段があるから、どうにかここま

  で発展したが、たかがそれだけの事じゃないか。

   見渡せばこの世に生きる者はみんながみんな、他人のことを思いやれない。

  そんな者は生き物として最低だ。このままでは地上の命は滅びの方向に向かう。

  やはり俺が全生命に呼びかけて、総ての命に重軽のない尊さを解き、殺し合う

  ことを止めさせねばならない。食う食われるの連鎖を止めて、すべてがベジタ

  リアンになるべきなのだ。

   特に人間は読んでるお経が違うだけで殺し合う。そのとばっちりが俺たちに

  も及ぶ。迷惑千万この上ない。

   こんな事が分かる俺は、やはり釈迦以上の知恵者なのだ。

   そう思わんかピラカン君。

   日差しの柔らかい今朝のことだった。俺の頭上に一羽の鳥が滑空してきた。俺

  は一瞬たじろいだ。だが考えた。初めにこいつに説教しようと。その後であちら

  こちらに俺を運ばせ教えを広めて行けばいいとね。釈迦の最初の説教は鹿だそう

  だが、俺はこのヒヨからいこうとしたわけだ。

   俺は大声で言った。

  「ヒヨさんよ、俺の有りがたい話を聞く気はないか。俺を虫たちが沢山いるク

  ヌギ林まで連れて行ってくれたなら話してやろう」

   すると俺はふわりと浮いた。ヒヨが俺をくわえてくれたのだ。話が聞きたか

  ったのだ。獰猛(どうもう)でアホなこんな奴にも向上心があるらしい。この

 世もまだまだ捨てたものではないと俺は思った。

   だが急に目の前は真っ暗になった。何が起こったか分からなかったが、しば

  らくしてピラカンサスの実、そうきみ『ピラカン』が頭上に落ちてきたので合点

  がいった。俺はヒヨに飲み込まれたのだ。

   そりゃあ、焦ったさ。だが考えてみれば、やがて肛門から出られるのだから、

  じっと待っていればいいだけだ。そう思うと落ち着いて、お前に俺の高説を話

  す気になった」(虫の話終り)


  「今までの話が、その虫の高説か?それで話は終わりなのかい」

   ヒヨが聞いた。

  「まあそうなんだけどね、その虫はその後何にも話さなくなったんだ」

  「そうだろうな。奴はわしの腹で溶けて栄養になったのさ」

  「栄養?それじゃ」

  「そう、奴は死んだのさ」

  「何だ死んでしまったの?ヒヨさんが殺したんだね」

  「俺が殺した訳じゃない。同じく飲み込んでもお前はこうして芽を出しただろ

  う」

  「あの虫の話は一体何だったんだろうかねえ」

   ピラカンはヒヨに聞いた。

  「生きるって事は理屈じゃねえし、ましてや安全な所に隠れてご託を並べても

  意味がねえ。糞まみれになって初めて分かるってものさ。その虫も死ぬ少し前

  にやっと、本当の命の意味を知っただろうよ」

  そう言ってヒヨドリは飛び立っていった。

  
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

 死ぬことは、さほど怖いものではないような気がした。
実は私は、先日久しぶりに酒を飲み、エアコンの前でうたた寝をしてしまった。
一時間ほどして寒さに気づき目覚めた時には、体は芯まで冷えてしまっていたの
だった。その日はそれだけで是と言った症状はなかったのだが、翌日の昼頃から
腹の具合が悪くなり、ここに記すのもはばかられるほどトイレに通った。腹を冷
やした結果だった。
 翌日体調は最悪だった。だが講師を頼まれている学校を安易に休むわけには行
かない。私は正に老骨にむち打つようにして車を走らせた。
何とか学校に着いたが、
「どうしたんですか」
「大丈夫ですか」
と朝の挨拶代わりに皆に聞かれた。よほど青い顔をしていたのだろう。人に気
遣われたせいでもないだろうが、急に体調は悪くなり、教壇に立てる状態ではなく
なり、結局そのまま帰宅することになったのだが、帰路の約40分間、酒酔い運転
とはこんな状態だろうと思えるような朦朧とした運転だった。
 この運転の時である、『このまま死んでも良いかも知れない』とふと思った。死
ぬのは案外怖くないなと思ったのである。
むろん今はそうではない。事故を起こし、死ねば多くの人に掛かるであろう迷
惑を思えば、また急逝に動揺する家族のことを思えばやはりそう簡単に死んでも
良いとは思わないが、あの時のあの感覚は何であったろうか。
不気味と言うより、ただ不思議に思えてならないのである。(2008.10.1)
 

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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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