文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL95

2008/01/20

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL95
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   komugi@lily.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
                              

           
       ■■■■■■■  二十人の桃太郎 ■■■■■■■                             
              

                                   
   恵里が中学校の教師になって二年目のことだった。文化祭が一月後に迫ったある

 日、音楽の教師である恵里は、担任をするクラス生徒に篠笛の合奏を提案した。と

 ころが、音を出すのさえ難しい篠笛を練習させれば勉強が疎かになるからと、保護

 者からクレームがきた。しかたなく生徒のやりたいものを決めさせた。するとアイ

 スクリームや駄菓子をスーパーで買ってきて売るといった模擬店や、ビデオテープ

 を借りてきてそれを流そう、などといったものばかりで、自分たちで作り上げよう

 とする姿勢は微塵も無かった。これではいけないと思った恵里は、何とか生徒を説

 得し『新しい昔話』と題し、寸劇をすることにこぎつけたのだった。

  さて劇の演目を決める段になり、またもやクラスは紛糾した。さんざんもめ、時

 間が無くなりかけた時だった。教室の端の方から「桃太郎にしよう」そんな声があ

 がった。それはほとんど会議を揶揄する声だった。ところがどんなはずみだろうか、

 クラス全員が口々に賛成の声をあげたのだ。

「全員一致で『新しい桃太郎』をやることに決まりました。では明日配役を決めま

 す」

 会議の進行をしていたルーム長の声で会議は終わった。やっと物を作る姿勢が見え

 てきたと、恵里は微笑んだ。台本は本好きの女子生徒が担当し、一晩で書き上げて

 きた。

  内容は、『やらせ』つまりでっち上げを報道したり、視聴者におもねる取材や善

 人気取りの司会者のいるテレビ局を鬼になぞらえ、テレビ報道で被害を被った人を

 助け、正しい社会のあり方を思考する天才弁護士を桃太郎にしたものだった。生徒

 は誰しもが面白がり、クラス中に熱気がこもった。恵里はその様子を見てほっとし、

 生徒達には正しく社会を見ようとする心の有ることに安堵した。さっそく希望をと

 りながら配役を決めた。本読みはその日の内に開始され、小道具や大道具作りも始

 まった。

  ところがである。三日ほどたった日のことだった。大道具係の生徒が一人、自分

 は道具作りなどは嫌だ。是非主役の桃太郎にしてほしいと言ってきた。恵里は道具

 作りの大事さを説き、何とかなだめたが、その日の夜保護者から電話があった。

 「先生の教育方針を伺いたいですわ。うちの子がどうして主役になれないんですか。

 うちの子は弁護士に向かないとでも言うんですか」

  母親はほとんど喧嘩腰の剣幕だった。恵里はその剣幕に押され、

 「それではクラスで相談してみます」と返事をしてしまった。このことが端を発し、

 配役について大もめにもめる結果になったのだ。

  主役を降ろされた親からはクレームが来た。配役の変更ができるのなら、うちの子

 を主役にしろという脅迫めいた抗議まで相次いた。挙げ句の果てにPTA副会長をし

 ている母親が数人の保護者を引き連れ、

 「聞けばこの劇は生徒が自分たちで考えて自分たち作るはずだったそうじゃありませ

 んか。それだったら生徒みんなに好きな役をやらせればいいじゃないですか。先生が

 勝手に決めるのはおかしいでしょう」

 恵里に詰め寄った。

 『世の中にはそれぞれの役割が有ることを知るのも勉強だ。お前達の言い分は親の

 無知なエゴでしかない』

 と、そう啖呵を切れれば立派な教師なのだろうが、恵里が教頭と校長に相談すると、

 「保護者の顔を立てておいた方が良い」というアドバイスだった。

  結局主役の桃太郎は二十人になってしまった。シナリオは直しようもなく、桃太郎

 一人分の台詞を二十人に割り振った。

  果たして劇のできばえはどうであったか。話すまでもない。二十人が物言わぬテレ

 ビカメラを囲み、建前を羅列しただけの意味のない劇で終わったのだった。

  惨憺たる劇を見ながら恵里は思った。子供に正当な指導が出来ない保護者が実は鬼

 だったのだ、と。では桃太郎は誰だろう。校長でも教師でもない。文部科学省かも

 知れない。そう思ったが、その文科省が鬼を怖がっているのだから、鬼が居なくな

 るはずがない。そう結論した恵里は、深い溜息をついた。

 
  
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●
     
       明けましておめでとうございます。

 新しい年を迎えた。今年は三十年ぶりに外で正月を迎えた。これまでは我が家が
本家ということもあり、家から出た兄弟達が連れ合いと子供達を連れて、毎年一月
二日に我が家に集まって来るのが恒例であった。多いときで総勢三十人を越えた時
もあった。これらの客達に我が妻は文句も言わずに料理を作り接待してきたのだ。
 兄弟の中には「大勢で押しかけてすまないねえ」とねぎらってくれる者もいたが、
何も感じない者も居た。
 接待しても接待されることのない正月が長く続いたので、この辺で迎えてもらえ
る正月を過ごそうと考えた。二年前に父母が他界してこともあり、思い切って正月
に旅行をするきっかけを得たのだった。
 たまたま妻の弟一家が旅行をするということでこれに便乗した形である。
 旅先は能登であった。私はかねがね能登の御陣乗太鼓を直に見たかったのだ。し
かし考えてみれば、正月はどこも普段の行事は返上なのである。御陣乗太鼓も朝市
も正月休みに入っていた。だが、雪と霰に出迎えられ、輪島塗の漆器や九谷焼の窯
元を尋ね、忍者寺をも堪能した。特に黒漆に蒔絵を施した二千万円の座卓は、ただ
ただ溜息が出るばかりであった。窯元では少し奮発して手触りの良い夫婦茶碗と湯
飲みセットを購入し、魚河岸では日本海の新鮮な魚を腹一杯食べた。
来年はどこへ行こうか、今から楽しみである。
                             (2008.1.20.)


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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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