文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL86

2007/01/24

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL86
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   aap60600@hkg.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
             
          ■■■■■■■   イソホ国の法律 ■■■■■■■ 
   


   三日後に結婚式を控え、ラレリールは一人で役場に出かけた。

  「お一人で来られましたね。それで結構」

  役所の係員は辺りを見回しながら言った。

  「このイソホ国の法律に基づいて、結婚される女性に渡されるものがあります。

  ここに署名をして下さい」

  係員から渡された二つの小さな赤と黒のカプセルを見つめながらラレリーは聞い

  た。

  「何かの薬ですか」

  係員はしばらく彼女の顔を見つめていたが

  「そうです。注意してお聞き下さい」

  小さな子に話す口調で説明を始めた。

  「黒いカプセルはイネシカズラという植物の根から抽出した毒薬です。赤い方は

  その毒消しです。その毒は夫を殺したい時に使います」

  その言葉にラレリールはぎょっとしたものの叔母の連れ合いがカズラ死をしたと

  いう話を子供の頃聞いたことがあったのを思い出した。何のことかその時は分ら

  ないままであった。

  「こんなもの、私いりません」ラレリールはテーブルの上にカプセルを投げ出し

  た。

  「そういう訳には行かないです。男性と女性が対等の立場で暮らすためにと女性

  議員たちよって30年前に作られた法律なんです」

  係員は冷たく言った。

  「もし間違って飲ませてしまったら大変じゃないですか」

  ラレリールの言葉に

  「そんなことめったにありませんがね。でもそんな時のために赤い薬があるんで

  す。黒い薬を飲むと、まる2日眠り続け3日目に息を引き取りますが、その間に

  赤いカプセルの中身を水に溶いて口の中に流し込めば毒は消えます。さあ早く薬

  をしまってサインをして下さい」

  係員の言葉を遮るようにラレリールはまた聞いた。

  「夫を殺すなんて大罪を犯したら、やはり死刑になるんでしょ」

  すると

  「いいえ、そうとは決まっていません。ただカズラ死が妥当であったかどうかの

  裁判はあります。適当であれば罪は免除です。この30年で170件ありました

  が、166件は無罪で他は有罪でした。ただいずれの場合もカズラ死に関わると

  再婚はできません。そういう法律です」

  「馬鹿げた法律だわ。嫌なら初めから離婚すればいいじゃないですか。そうすれ

  ば再婚もできるでしょ」

  ラレリールの言葉に係員は辟易した顔で

  「正直言って実に馬鹿げた法律ですよ。ジパングに嘗(かつ)て野良犬を殺すと

  首をはねられるという最悪の法がありましたが、これはそれ以上です。私なんか

  は女房の機嫌を損ねないように毎日ひやひやものです」

  そう言い終ると大穴のあいたタイヤのようなため息を漏らした。

  「離婚すればよろしいでしょう」

  ラレリールが言うと

  「そんなことを切り出したらそれこそ殺されますよ。夫の自由を許さない為の薬

  なんですから。でも時には優しくしてくれることもあるんです。それがせめても

  の慰めなんですよ。あなたの夫になられる方もやがて結婚の恐ろしさと不合理を

  知るでしょう。それまではせいぜい幸せを感じさせてあげて下さいな」

  ラレリールはテーブルに投げ出されているカプセルをつまみあげ

  「そうよね。何て言ったって女は弱いものですもの。私も一応これ、いただくわ。

  サインはどこにすればいいの?」

  考えてみれば結婚は女の為にあるシステムだから、女にとって不都合があれば夫

  を殺せるのはむしろ当然かも知れない。ラレリールはそんなことを考えながら伸

  びやかな文字でサインした。

  『女が弱い何てとんでもない。社会が男社会でどうにか男が生きられるんだ。女

  が家庭に生き男が杜会に生きて釣り合っているのさ』

  係員は小声で一言い返した。

  「え?何か言いました?」

  「いいえ」

  係員は作り笑いを返した。30年前から女性が杜会に進出し、男女同権の名のも

  とに社会も家庭も女性のものになり始めた。その結果男は人生を見失ない女性だ

  けの男女同権の社会が出現した。今も唐辛子の形をしたイソホ国は地球上で最も

  貧しい国となり地球の片隅にあるらしい。




  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

   とうとう六十回目の正月を迎えてしまった。私が高校生の頃だったろうか、
父が還暦を迎え定年退職をした年のこと、どんなきっかけであったか覚えてい
ないが、「俺の六十年はアッと言う間だった。お前もうかうかしているとすぐ
に還暦だぞ。」そう父から言われたことがあった。その時私は父の言葉は全く
別世界のことのように思えた。六十年の歳月がどうしてアッと言う間に過ぎた
と感じられるのか。自分はこれから大学に入学し、卒業したら就職し、そして
結婚し、子供も育てねばならないかもしれない。やることは山のようにある。
へたすると自分は途中で力つき、三十歳を超えられないのではないか。途方も
ない年月が広がっているように思えたものだった。
それが何と父の予言どおりになってしまった。定年退職がこの三月に迫ったの
だ。思えば二人の子供は独立し、それぞれ伴侶を得て子供まで設けた。私の生
物としての人間の役目は終わったと言っても良い。なるほどアッという間の年
月であったかも知れない。父の言葉が身にしみる昨今である。 (2008.1.24)


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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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