文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』 VOL84

2006/10/29

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                     VOL84
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   aap60600@hkg.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
             
          ■■■■■■■    お金と土 ■■■■■■■ 
                              
                
    充(みつる)は子供の頃から大金持ちになることに憧れていた。いつか大富豪

   になるのだと、仲間にも学校の先生にもうそぶいていた。

   「どれくらいの金持ちになりたいのだい」先生は言った。

   「一兆円くらいほしい」

   すると先生は聞いた。

   「充。お前は一兆円の額がどれくらいのものか分かっているか?」

   「わかってるつもりです」

   「それでは聞くが、毎日四百万円ずつ使ったら、一兆円は何年くらい使えると思

   う?」

    四百万円といえば大金だ。父親が一年間働いてもらえる給料でさえ四百万余り

   だ。それを一日で使うのだから瞬く間だろうと充は思った。

   「百年くらいかな」

   先生は笑いながら、

   「うん、感覚的にそう思うのも無理はない。でもきちっと計算をすると、六百八

   十四年以上使える」

   「ええ?七百年近くも」充は一兆円の大きさを初めて知り、

   「じゃ百億円あればいいや」そう言い直した。

   「でもなぜそんなに金が欲しい」

    先生に聞かれたが、充は答えられなかった。

    それから二十年がたった。充は大学を出ると中流の商社に入社し、紹介する人

   があって結婚もした。二人の子供が生まれ生活はごく平凡な暮らしだった。四人

   家族の普通の生活を送りながらなお充は百億円を掴(つか)む夢を抱き続けた。

    夜遅くまで株の研究をし、時には数十万円の配当ににんまりしたこともあった

   が、それとて富豪にはほど遠かった。充は億万長者になれるようにと、寺社に詣

   でる機会があれば家族の平穏をそっちのけで、そればかりを願った。

    気がつくと充は妻と別居生活をしていた。それでも億万長者の夢を持ち続けた。

    ある時だった。一人の虚無僧(こむそう)が尋ねてきた。

   「自在夢(じざいゆめ)の種はいらぬか。百円申し受けるが」

    虚無僧は薬包紙に包まれたものを取り出した。今時似合わないコスチュームだ

   ったが、どことなく愛きょうがあり、人なつっこい目にひ惹かれて一包み買った。

   中には朝顔のそれに似た種が数粒入っていた。

   「お主の寝室脇のベランダに植えよ。さすれば見たいと思う夢が見られようほど

   に」

    そう言うと大事そうに百円玉を頭陀袋(ずたぶころ)の中に入れた。

    充はさっそく言われたとおりの場所にプランタを置き、種を植えた。

    その夜のこと、夢の中に虚無僧が現れた。

   「お主の願いを何でも聞いてしんぜよう」

   「何でも?それなら百億円の金が欲しいと言ったら?」

   「おやすい御用。じゃが一つだけ守ること。それは自分が金持ちであることを自

   慢せぬことだ。守れるかな」

   「そんなこと簡単です。私は金持ちを他人に自慢しようと思ったことなど一度も

   ありません」

   「誠か?では明日の朝、種を蒔いたプランタを覗(のぞ)くといい。金が湧き出て

   来よう」

   「本当ですか」

   「嘘でも夢でもない。ところで、聞いておきたいことがある」

   「はい、なんでしょう」

   「お前は大金を何に使う所存か」

   「そうですね、まず豪邸を建てて妻子を迎えに行きます。それから世界中を旅行

   し、いろんな団体に寄付もします。天災などの罹災者に救援物資も送ります」

    充は長年想像してきた金の使い道を話した。虚無僧は言った。

   「なるほど。豪邸も旅行も寄付もけっこう。だがしかし豪邸がお主の家だと知ら

   れてはならん。

   大盤振(おおばんふ)る舞いの旅行者だと思われてもいけない。寄付も匿名でなけ

   ればならん。それから奥方が帰るかどうか。奥方は金の所に帰って来るわけでは

   ないのだからな」

    そう言われて充は考えた。

   「では豪邸に居候だと思われながら暮らし、旅行も人のお供と思われながら行く

   のですか。寄付をしても誰からも感謝されないのですね。 そんなお金なら意味

   無いじゃないですか」

    充はつぶやいた。

   「おや、やはり金持ちを自慢したかったようだのう。花には花を咲かせるだけの

   土があればあとは無駄というもの。金も土と同じだ。土の量など自慢するべきも

   のではない」

    そう言うと虚無僧は消えた。

    はて、自分は今まで何故金が欲しかったのだろう。充は夢の中で初めてそれを

   考えた。

    数週間してプランタに出た芽は、やがて淡い色の朝顔を四つ咲かせたのであっ

   た。
 
    
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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

  十月になると水が止まるという。これは何のことかというと、竹やぶの竹が根から吸収
 す る水を少なくし休眠状態に入ることだ。この時竹は切り頃だという。実はわたしは趣
 味で篠笛を作っているが、笛の材料である篠竹はこの時期に切るのだ。ここ数年諸般の
 都合で竹取にはいけなかったが、昨日久しぶりに出かけた。今まで竹きり場にしていた
 竹やぶは荒れ果て、使い物にならない若竹ばかりが生えていた。仕方なく別の山に行き
 親戚の持ち山に入った。おかげで素性の良い竹がたくさん取れた。四十本ほど切り倒し
 節ごとに切ってみると笛の材料は百本を越えた。だが、実際良い笛になりそうなのはわ
 ずか三十本あまりだ。切り倒した一本から一本しか笛になる竹はとれない計算である。
 この竹を一斗缶で煮て、煮た後は乾かし、それを数年寝かせるのだ。どうしてこんな面
 倒なことをするのだと仲間は言うが、趣味とはいえやはり良い物を作りたいと思う気持
 ちは、横着物の私の心まで変えるらしい。
 物置にはこれまでに貯めた竹が五百本ほどある。こんなに貯めこんで実際死ぬまでに使
 いきれるのだろうか。そこまで考えずに突き進むのがどうも道楽というものらしい。
                                                               (2006.10.29.)


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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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