文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL81

2006/06/30

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                 VOL81
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   aap60600@hkg.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
             
          ■■■■■■■  英才教育と春風   ■■■■■■■ 
        

    「今日は日がいいのかしら。結婚式が何組も」
   
   ホテルのロビーで養母のサトが言った。

   「そうだね」豊(ゆたか)は気のない返事を返えした。

   「充(みつる)さん、どんな青年になったか楽しみだわ。あの新郎みたいに茶髪

   じゃないでしょうね」

   浮ついた感じの新郎を横目で見ながら言った。

   「お母様は、充が立派じゃないほうがいいんでしょ」豊が言った。

   「そういうわけじゃないけど、私はあなたに最高の教育を施してきたから負けた

   くないだけ。こう言っちゃ悪いけど、充さんは九州の田舎で育ったから、素朴か

   も知れないけど、豊さんに比べたら気品も教養も違うんじゃないかしら」

   「そんなに充と張り合わなくてもいいのに」

   「何を言ってるの。あなたを養子に迎える時、向こうのお母様はこう言ったのよ。

   『母親がいないと暗い子になりはしないか』なんてね。私その時心に誓ったの。

   豊さんを充さんとは比べ物にならないくらい立派な子にするって。あなた達は一

   卵性の双児だから、どこがどう違うか今日はっきりするわ」

   「だから僕にいろんなことを習わせたんだね。ピアノとか英会話とか」

   「迷惑だった?」

   「それなりにためにはなったけど、それより」豊かは言いかけてやめた。習い事

   よりも日常の躾(しつけ)の厳しさに閉口していたが、それには触れずに

   「でもお茶の稽古は恥ずかしかったよ」と呟(つぶや)いた。

   「あら、お茶のお陰で姿勢はいいし、多くの有名人とも親しくなって美術品や骨

   董の勉強ができたんでしょ」

   「そうだね。骨董と陶芸の趣味に繋(つな)がったね」

   「ほらごらん。感謝なさい。あとは司法試験に向けて頑張るだけね。そうでしょ

   未来の弁護士さん」サトはさも自慢げに微笑んだ。

   豊は養父の妹夫婦の子で充とは双子だった。子供のいなかったサトは四才にな

   った豊を養子に迎え、この日は二十年ぶりの再会の日であった。養父は県議会議

   員を務める政治家の家に相応しい青年に育てようとしていたのだった。豊の実母

   は親の反対を押し切って無名の画家と結婚し、鹿児島に住んでいたのである。

   「あら、来られたようだわ」

   自動ドアが開き一陣の春風と共に入ってきた人影に目をやった。

   「お姉さんご無沙汰しております」挨拶をしたのは充の母親であった。

   「まあ、豊ちゃん元気だった。充も来ているわよ」

   豊を見た母親は抱きしめたい衝動を抑えるように、持っていたバッグを抱きしめ

   た。

   「充さんはどこにいらっしゃるの」サトが言った。

   「ここにいます」充が顔を出した。

   「伯母さん久しぶりです。子供の頃会ったきりだけど、伯母さん変わりませんね」

   そう言って豊にVサインを送った。豊もつられてVサインを返し微笑んだ。

   「あら、豊さんがそこに立ってると思ったわ」

   「やっぱり似てますか」

   充が言った。サトは内心当惑した。豊と見間違えるほど充が立派な青年で堂々と

   していたからである。

   「お父さんも食事の時間には来られるでしょうから、席についていましょ」

   皆は予約をしてあったテーブルについた。間もなく養父がやって来て昼食会が始

   まると、遠く離れて育ったはずの豊と充が、立ち振る舞いから話し方まで似てい

   ることが話題になった。違うのは方言だけだった。

   「着てる物のセンスまで似ている。双子ってのはこれほど似るものかねえ」

   養父が楽しそうに言った。サトは豊と充の教養の差をどこにも見つけることがで

   ず、田舎でのんびり育った充と、金と時間をつぎ込んで育てた豊とが何も違わな

   いことに納得いかなかった。

   「充君は何が趣味だね」養父の質問に

   「どういう訳か陶芸や骨董に興味があるんです。父の影響でしょうか」と答えた。

   「今何の勉強を」と聞かれると

   「はい、会計士に挑戦しています」

   「なんだ、豊と似ているね」

   これを聞いたサトは唖然とした。サトが英才教育に費やした二十年が、気まぐれ

   な春風のように感じられた。

    豊は思った。厳しい躾は何だったのだ。人格は教育だけで形成されるわけでは

   ないのではないか。そう思うと溜息(ためいき)が苦笑いの口元から漏(も)れ

   たのだった。


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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

  先日小鳥のエサ台を作ってくれた友人の家に行くことがあった。
彼は私の中学時代の同級生で、現在たまたま同じ職場の同僚である。
その彼は国蝶であるオオムラサキを飼育している。それが彼の趣味であることは
嘗てより知っていたが、あれほど多くがいるとは驚きだった。二百頭は優にいた
だろう。
蝶は三十坪はあろうかと思える大きな網の中に舞っていた。蛹もまだ二百はある
という。網の中には直径二十センチほどある食草のエノキを三本植えられていた。
そのエノキの葉のいたるところには新しい卵が無数に産み付けられていた。
これらの蝶で彼は金儲けをするわけでもなく、欲しいという人には惜しげも無く
分けてやっている。別の網小屋にはジャコウアゲハが数頭飛んでいた。
ツマムラサキアゲハもいるとのことだったが、目にすることは出来なかった。
こんなに多くの蝶をどうするのかと聞くと、可愛いから、とだけ答えた
その生き方が少しばかりうらやましく思えたものだった。     (2006.6.29)

  
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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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