文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL80

2006/05/29

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                 VOL80
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   aap60600@hkg.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
             
          ■■■■■■■  悪人は誰  ■■■■■■■ 
 
    上村は洗面所の鏡を見てぞっとした。自分の顔があの悪人面の長沢に見えた

   のだ。長沢は上村の上司だった。長沢の鋭い眼光で睨(にら)まれると誰も

   が震え上がった。毎日この長沢の顔色を窺(うかが)わなければならない自

   分が情けなく思う上村は、いつか自分が長沢に取って変わりたいと考えた.

   そんな願いが、自分の顔に長沢を重ね合わせたのかも知れない。長沢の経営

   手腕はまさに天才的だった。五年前傾きかけたこの会社を、一部上場にまで

   押し上げたほどの才覚の持ち主である。だが、社員からは蛇蝎(だかつ)の

   ように嫌われていた。

   「俺がお前らを食わせてやっているのを忘れるな」

   長沢の口癖が、普段何気ない時でさえ上村の耳の奥に響いた。会社を辞めたく

   でも辞められない自分が惨(みじめ)に思われた。

    その日、上村が小会議室の脇を通ると、部屋の中から罵(どな)り合う声が

   聞こえた。甲高い声は隣の課の課長で一人は長沢だった。

   「会社が儲かりさえすればそれでいいんですか。下請けだって社員の内ですよ

   社員の・・」

   「貴様、誰に物を言っている。下請け一つの倒産で本社三千人の社員が助かる。

   一万人の家族の暑さ寒さがしのげるんだぞ。それが経営だ」

   「いや貴方は人の心の分からない悪人だ。皆が少し我慢すれば下講けは助かる

   んです。どうしても潰(つぶ)すんなら責任を取ってもらいます。代議士に億

   の金を流したあの件を公にします」

   「貴様狂ったか。会社が潰れるぞ」

   「潰しましょう。貴方のような悪人に食べさせてもらおうとは思いません。渇

   しても盗泉の水を飲まず」

   「大馬鹿者。会社にとって貴様こそ大悪人だ。死んでしまえ」

   それきり声はとだえた。上村はしばらくドアの外で中の様子を伺っていた。そ

   こへ胸に血しぶきを浴びた長沢が現れた。

   「どうかなさったんですか」

   青ざめて聞いた。

   「どうもこうもない。あの新米課長が私の経営方針に付いて行けぬとわめきお

   った。当てつけに頸(くび)を切って自殺したんだ。しかも私のペイパーナイフ

   でだ」

   「自殺?で、警察は。お呼びしましょうか」

   「ああ、そうしてくれ。一応救急車も呼びなさい。それから君も部屋にいたこ

   とにしなさい。つまらん疑いをかけられたくない。会社は君のような冷静な人

   間が必要なんだ」

   長沢は妙に上村を評価した。いつもと違う物腰の柔らかさを感じた上村は長沢

   の弱みをつかんだような気がした。

   「代議士が云々と言っていたようですが話は聞かなかったことに」

   上村は小声で言った。長沢は目を吊り上げ「当然だ」と怒鳴った。

    数日後、死んだ課長の家族から、

   『主人は最近ノイローゼにかかっておりしきりに死にたいと言っていた』

   とのコメンメントがあり、事件は意外な早さで解決した。

   「スムーズに運びましたですね」

   上村は得意気な顔をして言った。長沢はうなずき

   「君には会社のある部署を引き受けてもらう。詳しくは役員会の後だ」

   と言った。長沢の覚えよろしきを得た感触に上村は微笑み、鏡の中に見た悪人

   面はもともと自分の中にあったものかもしれない。そう思うと苦笑いした。

   数週間後辞令が渡された。それは切り捨ての対象にされていた孫会社への出

   向だった。上村は愕然とした。と同時に途方に暮れた。やがて非情な仕打ちを

   する長沢に煮えたぎるような憎悪が涌き上がった。こうなれば刺し違えるしか

   ないと上村は心に決めた。

    会社を依願退職し、課長自殺事件の再調査を警察に訴え出たのだ。ところが

   意外なことに警察は上村の訴えを取り上げようとはしなかった。課長の家族が

   なぜかひどく調査を拒んだのだ。そこで新たに代議士への賄賂の件を告発した

   が、これも証拠不十分のまま不起訴となった。あんな悪人を野放しにしていて

   よいはずがない。上村は思いあまり重役室に怒鳴り込んだ。だが、かつての部

   下たちに取り押さえられねじ伏せられた。無様な姿を見下ろしながら冷静に

   「社にとって君こそ悪人そのものだ」長沢は上村の背に眩(つぶや)いた。


   
  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

   先週の休日、器用な友人に小鳥のエサ台を作ってもらった。
 その事を妻に話すと、せっかくの庭に奇妙な物は置かないでくれと言われた。
 だが、強引に出来上がった台を持ち込むと、妻は意外に満足そうだった。
 このエサ台には屋根があり、しかも茅葺きなのだ。
 茅葺きのたたずまいが我が家の庭にマッチしたのだろう。妻との攻防は
 何とか避けることができてほっとした。
 さっそく米をひとつかみ台の上に乗せたが、三日経っても一週間経っても
 小鳥が餌をついばみに来た形跡はない。なんてことはない。エサ代は庭の
 モニュメント代わりとしてしか用をなさなかった。おそらく屋根が邪魔な
 のだろう。かといって屋根を取れば妻がいらないと言うだろう。
 願いと結果に往々にしてずれがあるものだ。冬になり食べ物がなくなれば
 小鳥も来ることだろう。それまで待つことにして、今は庭のモニュメント
 として眺めることに決めた。     (2006.5.28)

  
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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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