文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』 VOL79

2006/04/17

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                 VOL79
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   aap60600@hkg.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
             
          ■■■■■■■  三代の肖像画 ■■■■■■■ 
 

   私の高校時代の恩師であるその先生の家には三代の肖像画がある。初代は骨董屋で

  二代目がこれを継ぎ、三代目が高校の教師になったところの我が師である。先生は学

  校を定年退職すると間もなく、好きだった酒の為にアルコール性肝硬変を患い、それ

  がもとで亡くなられたのだ。

   私は今でも先生の命日になると仏前に線香を上げにやって来る。私はこの先生の影

  響で教師になった。先生は生徒思いで生徒の為には校長までも食らいつき、生徒がど

  んなに見え透いた嘘を言っていようと真剣に信じようとした。専門だった数学には情

  熟を持って教えてくれた。私たちは仲間と、先生には聖人の血が流れているのだと噂

  をし先生の家系にまで興味を持った。

   私が教員採用試験に合格した日、先生の好きな酒を持って報告に行った。先生は自

  分のことのように喜んでくれた。その日、壁に掛かった二枚の肖像画を初めて見た。

  大人物を思わせる威風堂々とした二つの肖像画は、この先生を産むに相応しい人格者

  に見えた。

  「この肖像私に似ているだろう。この祖父の話を聞く気があるかね」

  と先生は言われた。私は連綿とつながる人格者の血の系譜を是非聞きたいと思い、話

  を乞うた。

   祖父に当たられる方は幸作といい、貧しい農家の次男坊だった。彼は生来の虚言癖

  があり、近所のご隠居さんに近づいては大事にしている骨董をだまし取り、これを余

  所で高く売っては小金を貯めていったという。やがて町の骨董屋に出入りをし、目が

  肥えだすとあくどい商売を始めたという。田舎の気のいい旦那衆を口車に乗せ、十円

  で仕入れた軸を千円で売り・旦那の秘蔵の値打ちの品を適当な目利きで買い叩く。そ

  うして集めた品々は法外な値で売り飛ばし、瞬く間に財を蓄え大きな店を構えたらし

  いとのことだった。

   そんなある日のことである。幸作の店に一人の若者がやって来た。若者は「骨董の

  目利き修業をさせてくれ」と言った。下働きの若者は置きたいが給金を出したくなか

  った幸作は

  「給金なしでよければ雇おう」

  と高飛車に出た。若者は勉強だからとその条件を飲み、文句も言わずに良く働いた。

  若者の働きっぷりは町の旦那衆の間でも評判になった。

   三月ほどたった頃だった。その若者がどこからか三尺程の阿弥陀像を持ち出してき

  て、

  「これは、あるお屋敷のご主人様から預かったもの。そのご主人はちょっと仕事で

  しくじって二万円ほど用立ててくれる人を捜している」

  と言い出した。聞くところによるとこの仏像は、かの正倉院のお宝で、どこをどうし

  たものなのか、巡り巡って今あるお方の家宝だと言う。仏像にさほど詳しくなかった

  祖父は、話を聞いているうちに国宝級の仏像に見えてきた。若者のたっての勧めもあ

  り、しばらくそれを店先に置いた。そして数日後のことだった。黒いマントの初老の

  紳士が入って来ると像を見るなり大声で叫んだ。

  「これはぜひ譲り受けたい。十万円でどうでしょう。いや二十万円出しましょう。後

  日持ってまいるのでくれぐれも誰にも譲らぬように」

  そういい残して出て行った。幸作は若者を使いに出した。この像を二万円で買い入れ

  るように指図したのだ。使いに立った若者は

  「五万円でなければ売れないそうだ」

  と言ってきた。当時の五万は今の五千万円に相当するということだ。何とか仏像を我

  が物にした幸作は、黒マントの男を待った。ところがである。その後どれほど待った

  とて黒マントの男は来ない。それどころか住込みの若者も姿を暗まし、二度と店には

  現れけつた。この時の借金で祖父の店は一時潰れかかったということだった。

   酔いが回ると先生は

  「自分にもあのおじいさんの強欲と間抜けの血が流れてるんだ」

  そう言って笑った。先生の先祖は大人物どころかその正反対の人だったのだ。ところ

  が私はかえってそれで、尚のことこの先生が好きになったものだった。


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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

 去年よりもやや早めに咲いた桜は、もうすっかり散ってしまった。私の勤務する職場
は九十九坂(つくもざか)と呼ばれる坂道の上にあるが、この坂に花吹雪の降る光景
はなぜか私には焦燥感さえ感じたものだった。思えばこの職場に勤務するのは今年で
終わる。定年なのである。焦燥感はそんな背景があるからかも知れない。
 過ぎ行きて顧みすれば九十九坂
        今年ばかりの花降りしきる    
                     (2006.4.17.)   
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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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