文学

木の葉の小説『リーフノベル』

30年以上詩作してきた作者がたどり着いた世界リーフ・ノベルの誕生である。
木の葉に書き置くような1600字の超短編小説は
深層心理・欲望・幽鬼そしてアイロニーの世界へと君を誘う。千葉日報新聞に連載されているリーフ・ノベルがネット上に新たに登場。   

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木の葉の小説『リーフノベル』VOL76

2005/11/30

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       リーフノベル 〜超短編読み切り小説〜 高安義郎   
                      
                                 VOL76
   
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                お待たせ致しました。
                今月号のリーフノベルです。  

     リーフノベルとは、全て1600字の中に収まるように作られた
     短編読み切り小説です。
     幽鬼、深層心理、アイロニーの世界にあなたを誘います。
     それでは、どうぞ今月のリーフノベルをお楽しみください。

     ○●トップページ●○
     http://www1.odn.ne.jp/~aap60600/yoshirou/leafnove.html
     には、他の作品も掲載しております。

     ●○投稿募集●○
   またサイトでは、作品の投稿もお待ちしております。
   まずは御気軽にお問い合わせ下さい。 
   みなさんも1600字で作品をお書きになってみてください。
   今までにない手法の作品です。
   優秀作品はサイトにて、ご紹介致します。
   aap60600@hkg.odn.ne.jp

     ○●作者紹介●○
    名前:高安義郎(たかやす よしろう)
    日本文芸家協会会員
    日本ペンクラブ会員
    日本現代詩人会会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ顧問
    詩誌「玄」、詩誌「White  Letter」主宰
    リーフノベルを「千葉日報新聞」(隔週の日曜版)に10年間連載

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    ■☆■☆■☆■☆   リーフ・ノベル   高安義郎 ☆■☆■☆■☆
     
   〜シリーズ ドク・小泉〜 

    ■■■■■■■ 特別教室  ■■■■■■■ 
 

  ドクが予備校に勤務するようになってから十五年が過ぎる。この間に近くには

 何校もの予備校が開校し、生徒集めに熾烈(しれつ)を極めるようになっていた。

 ドクの予備校はそれなりに実績はあったものの、最近の予備校としては特長がい

 まひとつ薄かった。受験生を引きつける画期的なアイディアは無いものかと理事

 はドクに聞いた。ドクには経営能力など微塵もないがアイディアの豊富さならば

 人後に落ちない自信があった。

 「生徒には実利を与えればいいのですからね」

 ドクはさも自信ありげに言った。

 「それはそうだが、実利とは何だね」

 理事長が聞くとドクにもはっきりしたイメージはまだないが

 「要は希望大学に入いれるだけの勉強をさせてやれば良いわけですから、それに

 は十分な時間が必要なわけですね」

 独り言のように言ってから、理事長の耳元で眩いた。

 すると「なんだね、時間の管理かね?それで具体的にはどうなんだ、」理事長は

 目新しくもないと言うように眉をひそめた。

 「それでこんな時計を与えまして」

 ドクの話に理事長は次第に身を乗り出しはじめた。

 「なるほど。その為に特別教室をしつらえて全員入寮させる。なるほど。それか

 ら?」

 理事長はすっかり乗り気になった。

 「よし。それでいこう。これで我が校も五年は他校をリードできる。さっそく来

 年四月からスタートのPRだ。事務長を呼ぼう」

  やがて理事長はドクの考案した特別教室を法外な授業料で宣伝をした。授業料

 の高さが逆に効を奏したのか希望者が殺到したものだった。施設等の関係から受

 講生は二十名にしぼられた。四月三日の入寮式が済むと全員地下二階の二人部屋

 に案内された。そこでは受験日までの外出が一切禁止され、時計や電話、その他

 時間を知ることのできる一切のものは取り上げられた。

 時間を知る道具として与えられたのは、ドクの制作した腕時計と書き込み自由な

 カレンダーだけだった。配られた綿密なタイムスケジュールには、ひと月に一度

 の割合でレクレーションが記されている。山や川でのキャンプ。時には屋上での

 バーベキュー大会がカレンダーにも記されていた。生徒は外部との連絡も禁止さ

 れ、四六時中地下の合宿所で勉強を強いられることになった。

 「特別教室ってさあ、ただ勉強時間の徹底管理じゃんかよ。普通の受講生と大し

 て変わんないじゃん?」

 受請生たちは言い合った。だが時間を管理されるということは窮屈な反面、安心

 できる部分があるのか、かえって学習は能率的に進むのだった。半年たっても、

 誰一人止めたいと言う者は現れなかった。

  カレンダーも残りわずかになり、クリスマスにはケーキと七面鳥が出された。

 正月の三日間は朝食に雑煮が出され、いよいよ一月十X日のセンター試験が二日

 後に迫った。帰省の支度で慌ただしい時に、生徒たちは講義室に召集された。理

 事長は受験生を前にして言った。

 「受験生諸君、準備は万全ですか?ところで、もう少し時間があったらと思う人は

 手を上げてみて下さい」

 全ての生徒が手を上げ

 「一週間、いやせめてあと四日あれば完璧だがなあ」と言い合った。

 「わかりました。では一年間頑張り通した諸君に素靖らしい秘密を打ち明けまし

 ょう。実は今日は一月一日なのです」

 そう言ってテレビのスイッチを入れた。テレビは元旦のニュースが放映された。

 「そうです。諸君には一年近く一日を二十三時問で過ごして頂いたのです。した

 がって今日はまだ一月一日。試験まで十一日もあるのです。貯めこんだ時間を有

 効に利用し、合格を更に確実なものにして下さい。このアイディアの主は小泉博

 士です」

 受請生は思わぬブレゼントに大いに喜び、どよめきが上がった。この時期に十一

 日間もの猶予が与えらるということはこの上ない恵みだった。喜びに沸く生徒を

 見ながらドクはふと考えた。種明かしをした以上もう秘密ではない。ならば来年

 は使えないことになる。満面笑みをたたえる理事長にそのことを言い出せないで

 いるドクだった。

 

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  ●○○●○○● Yoshiro's Room ●○○●○○●

  12月4日に我が家の末っ子が結婚式を挙げることとなった。
聞けば相手の女性も末っ子とのことだが、数ヶ月前彼女を我が家に
連れてきた。しっかりしたいい娘だった。息子は「オレ、女を見る
目があるでしょ」とぬけぬけと言った。しかもその後で「オレ、
お父さんに似てるのかもね」と付け足した。私に対する誉め言葉だ
と思い、思わず笑みを浮かべたものだが、よく考えてみれば、それ
は母親である妻のほうを誉めている言葉であることに思い至った。
 父親としての誇りが揺らいだように思え、しばらく複雑な心持
ちであったが、慶事の前の戯れ言と思い、聞き流すことにしたの
だった。それにしても末っ子が結婚するとは、私も年を取ったも
のだ。過ぎ去った30年が瞬く間のように思われる。
                                              (2005.11.30)

 
   
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                        ☆  お知らせ ☆

  ★★ 30数年詩を書き続けた作者渾身の作、
    詩集「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜 が
      2003年3月30日付け読売新聞朝刊に大きく紹介されました。
     
   ★ 高安義郎著「母の庭」〜アルツハイマーは嵐のように母を襲い〜
     (ごま書房刊) 定価1,200円(税込み)
         2002年11月27日全国の書店から発売されました。
     表紙絵 日本画家 若木山(作品 酣春) 帯文 新川和江 
      
     ★ 下記の書店からインターネットでも購入が出来ます。御覧下さい。
                   
 (紀伊国屋書店)

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi? W-NIPS=9976400284 
       
 (YAHOO BOOKS)                 
 http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31059989                     
         
  
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創刊日:2001-07-21  
最終発行日:  
発行周期:月2回  
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