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二〇〇一年六月二十日。日記を綴り始める。

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【上井とまと日記】 2016年11月7日号

発行日:11/7

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2016.11.7配信 / 読者1308人










上井覚兼日記から四百年
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         上  井  と  ま  と  日  記

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  近 況
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上井とまとです。

前回の配信から四箇月が経ちました。

余りにもですね。

相変わらず本を読む日日です。

四箇月で読んだ本は四十冊。

日記だけを数えますと二十七冊になります。



前回はパスカルの『パンセ』を読んでいた頃でした。

以降に読んだ本は

世界一周をした海賊ウィリアム・ダンピアの『最新世界周航記』

ヴォルテールの『哲学書簡』

ジャン・マルテイユ『ガレー船徒刑囚の回想』

ジェイムズ・クック『太平洋探検』

トマス・ペイン『コモンセンス』

ジャン・ジャック・ルソー『孤独な散歩者の夢想』

イマヌエル・カント『プロレゴメナ』

セレスタン・ギタール『フランス革命下の一市民の日記』

などです。

読んで良かった本

それから読む必要のなかった本もありますけれども

それも読まないと判らない訳ですから

鼻を利かせながら読んで行くしかないのです。

ルソーには良い文章が一遍ありました。



前回この場所で

自分は異国で一箇月を暮らしてみたいと書きましたが

ネパールとロシアで迷った結果

思い切ってロシアへ行くことにしました。

旅券は切れていたので取り直し

大きな旅行鞄を買い

そこに本を二十冊詰め込みました。

八月末より一箇月。

場処はウラジオストクです。



宿は町の中心部より歩くこと二十分。

二十九泊三十日。

二段ベッドの下、それから共用の台処が生活空間です。

宿に泊まる二十人のうち殆んどがロシア人。

十日のうち一日二日、英語を話す旅人が遣って来ます。

纏めるのが面倒なので

日記より幾日かを抜粋してみましょう。





  九月八日
  十一日目。十時起床。海辺二階の喫茶店、港の待合にて読書。
  駅の前には物乞いの老人が一人。雨に濡れ長く垂れた髪。灰色
  に朽ちた服。その姿は崇高な彫像の様である。彫像は息をして
  いる。現在二十二時。台処の橙色の灯りの下では、彼は漁師な
  のであろう、中年の男が漁師を目指す若者に紐の縛り方を教え
  ている。悪くない夜である。



  九月十四日
  十七日目。八時半起床。朝台処にてロシアの若者とシャシキを
  遣る。シャシキとは将棋とオセロを混ぜた様な遊びであり全滅
  させれば勝ちとなる。白い駒と黒い駒を十二個許り遣うけれど
  も互いに数が欠けているので白い蓋や黒い菓子を駒の代わりに
  置いている。昼前北の海辺で髪を切る。鏡を忘れたので六度鋏
  を入れた丈である。波は恐ろしくもなり優しくもなる。午後町
  へ出る。四日前より極東映画祭が開かれていて言葉の判らぬ異
  国で映画を見るのも面白かろうと云う訳でイタリアの映画を見
  る。人生と死と時間を扱ったもので心地好かった。こうしたも
  のに心が動くのは我我は常に朽ちているからである。日没まで
  読書。夜ロシア人と談話。昨夜より厠の灯りが消えている。各
  各闇で用を足す術を身に附けつつある。



  九月十五日
  十八日目。朝疎ら食品店。週に四日は見掛ける娘さんが本当に
  愛らしい。計算機は両手の人差し指でもたもたと打ち百ルーブ
  ル紙幣なども両手で静かに納める。彼女の未来に小さな幸せが
  ありますようにと願いたくなる。午後はドイツの映画を見る。
  のち読書。自由に生きると云うのは本当に難しい。こんな気儘
  な暮らしであっても私は日に五時間の読書を課し昨日からの三
  日間は映画の時間も作らねばならない。何物にも縛られない一
  日など早早あるものではない。



  九月十七日
  二十日目。九時起床。今日を含めても残す処十日である。私は
  数日前より残りの時間を数える様になっている。今日はここに
  これまでの日記から溢れたものを綴って見ようと思う。一。二
  日目であったろうか韓国の若者が同宿した。彼の声は穏やかで
  甘くドイツ人が実利的な話で割り込んで来る迄は精神的な話を
  一時間ほどした。彼はインドが素晴らしかったと口にした。興
  味深かったのは初めに顔を合わせた刹那軽く会釈を交わした丈
  であったけれども互いに何かを感じ合ったことである。二。数
  日前非常に美しいロシア人の娘さんが同宿した。宿の若者たち
  は飛んでもない美人が来たと色めき立った。歳は二十五許り。
  金色の髪は腰まである。仕事はあらゆる会議を戦略的に運営す
  る何かだと云うことである。ロシアでは美しい人は幾らでも居
  るけれども彼女にはそれ丈でなく清らかな心が伴っている様に
  思われた。私たちは台処で或るときは数人で或るときは二人に
  なり一緒に砂糖を探すこともあれば翻訳機を用いて言葉を交わ
  すこともあればお互いに何も云わず各各の作業を進めることも
  あった。けれどもその横顔や後ろ姿から、私たちが似通ってい
  ること、そして互いに悪く思ってはいないことを恐らくはお互
  いに感じ取っていたのであった。私は遠いロシアの地でこの様
  な娘さんに出逢えたことを嬉しく思い次の日には娘さんの一日
  を貰えないだろうかと考えたのであった。果たして次の日、娘
  さんは宿を出た。恐らくは南の島で開かれる会議に赴いたので
  ある。私はいま娘さんが戻って来るのを待っている。三。宿に
  は常に二十人ほどが泊まっている。そのうち英語を話すのは一
  人か二人である。故に台処ではロシア語が飛び交う。青い目或
  いは黒い目をしたロシア人が訳の判らぬ言葉で話しているのを
  見るのは愉しいものである。その表情、身振りからは多くのこ
  とが読み取れる。そして人間は詰まる処何も違わないのだと云
  う当たり前のことを改めて識るのである。四。町を歩いている
  と当たり前のことではあるけれども日本とは違った処が目に附
  く。それらを一つ一つ挙げることはしないけれども例えば日本
  であれば無駄に思える様なこと、都合が悪く思われる様なこと
  もそのままにされている。そうしたことの要因の一つにはこの
  国が長い間共産国として生きて来たと云うことも挙げられるの
  ではないかと思う。そして無駄や非効率と云った中にこそ情緒
  或いは何か薫りの如きものが存するのではないかと考えるので
  ある。さて或るときアメリカについて尋ねられたことがある。
  アメリカとロシアは何が違うかと云うのである。これについて
  は暫く考えているけれども恐らくは日本もアメリカの側に含ま
  れるのであろう。そして私の出した結論は、薄い服を着ている
  のがロシアで、何か余計なものを着込んで仕舞ったのが我我で
  はないかと考えた次第である。五。色色と感じることはあるけ
  れども一つ心にあることは私はこの滞在を通じて生きる力が増
  した様に感じると云うことである。さて今日のことを記そう。
  本日よりセントヘレナ覚書を読む。晩年のナポレオンに附き従
  った侍従による日記である。夜はイリナと逢う予定があったけ
  れども次週に持ち越しとなった。町へ出なかったのは今日が初
  めてである。



  九月十八日
  二十一日目。本日を休息日とする。十一時起床。読書。午睡。
  読書。台処の卓子の上には誰かの菓子がある。背の高いロシア
  人が遣って来る。これは君のかい。いや。すると彼は内緒だよ
  と云う仕草をして菓子を一つ取って行く。別のロシア人が来る。
  菓子を認めた彼は恰かもそれが共有物であるかの様に無言で一
  つ取って行く。菓子はどんどん減って行く。それを見ているの
  は私丈である。夕刻身体を動かすべく五キロを走る。海辺を北
  へ北へと行くと廃墟の様な工場へ行き着くのであった。音楽で
  世界を廻っていると云うロシアの男は云うのである。何故君は
  こんな処に一箇月も居るのだ、何故バイカル湖へ行かないのだ、
  世界一の湖、透明な水、シベリア鉄道なら三日で行けると。私
  は答える。長く居るからこそ見えるものがあるのだと。それは
  僕も知っている、しかし君はバイカル湖へ行くべきだ。もしも
  バイカル湖へ行けば何故君はモスクワへ行かないのだと誰かが
  云うだろう、モスクワへ行けば何故ポーランドへ行かないのだ
  と誰かが云うだろう、そして私はその土地で一箇月を過ごさな
  ければならない、そんな時間はないよと答える。詰まり私は台
  処で菓子が減って行くのを眺めているのである。



  九月二十三日
  二十六日目。朝台処にてショウペンハウエル『附録と補遺』を
  読む。これには自殺と読書についての考察が含まれる。午後町
  の劇場へ明日の切符を買いに行く。序でに本日の切符も購め夕
  刻より観劇する。全く意味が判らなかった。遺す処三日。私は、
  カンディンスキーを見ること、亀を食べること、墓地を訪れる
  ことを諦めることにした。幾つかは努力をすれば叶うものもあ
  るだろう。けれどもそれは力を抜いて暮らすと云う第一義に反
  する。



  九月二十七日
  最終日。台処で一時間ほど眠り六時に宿を出る。乗合い及び列
  車で八時過ぎに空港に着く。一箇月前初めて降り立った空港。
  一箇月前とは明らかに違う私がここに居る。飛行機にてソウル。
  飛行機にて大阪。帰寧したのが二十時。私はこのロシア行きを
  殆んど誰にも話さなかった。それは誰かに話して仕舞うと何か
  しらの故障が生じ実現しないのではないかと怖れた為である。
  私は中国を経つときもそしてロシアに入るときも最後の最後ま
  で何かしらの故障を怖れた。あれは二十日目辺りであったろう
  か。私は明け方の五時頃に目が覚めて、自分がロシアの宿の寝
  床に居ると云うことに大変驚いたのだった。しかし私はロシア
  で三十日を過ごした。誰もこの経験を私から奪うことは出来な
  い。



ロシアで読んだ本は

大黒屋光太夫のロシア漂流記『北槎聞略』

イマヌエル・カント『永遠平和のために』

野田泉光院『泉光院旅日記』

ゲーテ『スイス紀行』及び『イタリア紀行』

ラス・カーズ『セントヘレナ覚書』

ベイジル・ホール『朝鮮琉球航海記』

ショウペンハウエル『自殺について』及び『読書について』

チャールズ・ダーウィン『ビーグル号航海記』

です。



奈良に戻ってからは

マルタン・ナド『ある出稼石工の回想』

ヘンリー・デイビット・ソローの日記(春編・夏編)

ディケンズ『アメリカ紀行』

フォルカード『幕末日仏交流記』

を読みました。

ゲーテ、ナポレオン、ショウペンハウエル、ソローなどは

再読したいと思わせる処があり

実際に幾つかは寝る前にちろちろと舐めています。

今読んでいるのは

アンリ・フレデリック・アミエルの日記です。







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  日 記
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 日 記 は 現 在

 配 信 を 休 止 し て い ま す 。







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  更 新
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ならどっとエフエムで年に二回放送している

『やねうら』の第十二回。

北海道・知床斜里に「北のアルプ美術館」を造られた

山崎猛(やまざきたけし)さんをゲストに迎えています。

山崎さんは私財を投じて美術館をつくり

無料で開放されている美術館は来年二十五周年を迎えます。

そして世界に一つしかない串田孫一さんの書斎は

この地で復元されています。

一体ここには何があるのだと思い

ちょうど今から一年前、知床でお話を伺ったのでした。



 ■『やねうら 第12回(1)』<知床半島の根もと>
 https://www.youtube.com/watch?v=ECKNy5dG4BM


 ■『やねうら 第12回(2)』<串田家のルール>
 https://www.youtube.com/watch?v=jyNQZaBuQvY


 ■『やねうら 第12回(3)』<アルプが遺したもの>
 https://www.youtube.com/watch?v=VzfrFQCHB98


 ■やねうら(これまでの配信)
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 ■上井とまとのツイッター
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【上井とまと】(うわい・とまと)
一九七七年大阪生まれ。奈良在住。二〇〇一年より日記を綴る。二〇〇九年、
『上井とまと日記』でメルマガオブザイヤー審査員特別賞。文豪らしい名を考
える日日。

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『やねうら 第14回』 ならどっとFM [78.4MHz]  12月7日(水)23:00-23:30
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発行者プロフィール

上井とまと(うわい・とまと)

上井とまと(うわい・とまと)

http://www.tomatonikki.net

一九七七年大阪生まれ。奈良在住。二〇〇一年より日記を綴る。二〇〇九年『上井とまと日記』でメルマガオブザイヤー審査員特別賞。文豪らしい名を考える日日。

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