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[Short2Mag #104]『フクイチさま』吉田 恭

2011/08/05

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■   『フクイチさま』   吉田 恭
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━(文庫本2ページ分)━

 古い言い伝えによると、昔、海辺のその村には、小山ほどもある四匹の鬼
がおったそうだ。鬼達は昼夜かまわず炎と煙を辺りに吐き散らし、その煙を
吸った村人達は病に倒れやがて死んでしまうのであった。村人達が長いこと
そんなふうに苦しめられていたある日、一人の坊さんが村にやってきて告げ
た。
「奴らは冷たい水が苦手なのだ」
 坊さんは村人達に命じて、海の水を大量に桶に汲みとらせ、鬼達が寝てい
る隙にその水を鬼達にかけさせた。やがて鬼達は動かなくなり、村人達は周
りを土で盛って鬼を埋めてしまった。坊さんは、この鬼達を埋めた塚を明神
として奉るよう告げた。そして、塚の頂上には鬼一匹に一つずつ四つの井戸
のような穴を堀らせ、毎日海の水を汲んでその穴に水を注ぎ続けるよう伝え
た。その塚はフクイチさまと呼ばれ、水を汲み上げ穴に注ぐ風習はその後ず
っと続いたのであった。

「そんな言い伝えは嘘っぱちだ」
 村の若者マサオは言った。村人達は一年のうち半分は毎日それぞれの家か
らの水汲みの人手を一人ずつ出さねばならなかった。マサオは年老いた母親
と二人暮らしで、田植えや収穫の大切な時期に水汲みが当たってしまうと生
活が立ち行かなかった。マサオは同様に困っている周りの村人と仲間を作っ
て、水汲みの役のときは互いの田畑の仕事を協力しあった。フクイチさまは
今では麓に神社があり、水汲みの役の采配はその神主が取り仕切っていた。
神主が長者達と癒着しているのは誰もが知っていたことで、長者達は水汲み
を免ぜられ、その分皺寄せはマサオら貧乏人のところにきた。あるとき、虐
げられた若者達の不満は頂点に達し、マサオと仲間達は神社を焼き討ちにし
た。神社の裏にある大きな門はフクイチさまの奥へと続く洞穴の入口で、若
者達は門の鍵をこじ開けて中へと入っていった。
「中に入ってはいかん、フクイチさまのばちがあたるぞ」
 神主は叫んだが、若者達は聞かなかった。洞穴の奥は広くなっており、そ
こには四つのビルほどもある巨大なコンクリートのようなものの塊があった。
「言い伝えは本当だったのだろうか」
 仲間の一人の口から漏れた。マサオと仲間達はフクイチさまの中に篭城し、
神主や長者達と戦った。多くの村人は最初態度を決めかね傍観していたが、
やはり皆神主や長者には少なからず恨みを抱いてはいたので、徐々にマサオ
達を応援し始めた。そして一年ほど過ぎて、神主は失脚し漸く若者たちが村
の実権を握った。マサオは村の長となって、水汲みの因習を廃止し、大勢に
支持される良い政治を行った。

 だが、それから二年ほどたって、マサオは原因不明の病で死んでしまった。
それと前後して、フクイチさまに立て篭ったマサオの仲間達は皆同じような
病気で亡くなってしまったのだった。
「フクイチさまのばちだ」
 村人達は口々に呟いた。結局、神社は建て直されて、水汲みの役は今まで
もずっと続いているのだそうだ。







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━━【作者からひとこと】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━[2]

▼今年の福島第一原発事故の後ずっと未来の話を想定しました。

(吉田 恭)
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━━【編集後記】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━[6]
 4年ぶりの発行になってしまいました。
 東日本大震災で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
 復興に向けての課題は山積みですが、問題解決のための近道は皆で頭をフ
ル回転させて方策を考えること。ショートショートもその一助になれば……
と思っています。(よ)



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■ 週刊?ショートショート・メールマガジン 通巻104号 2011/8/5発行
□ 発行:ACO Service
■ 編集:小俣洋一(EGG STUDIO[http://tbook.net])
□ 選考:ACASACA・sawayakakun・青山/総発行部数:507部
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