あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.34

2008/12/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.34 ----

        「雪」              2008.12.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www.u-ohtaki.com/
                                  
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 遠くのあなたへ

 
 きのうまでのすさまじい雨、風、雷が、嘘のようにぴたりと止んで、
 冬の陽差しが斜めに低く、部屋の奥まで入り込んでいます。

 それはあたかも、故郷で孫を出迎えるおじいちゃんの笑顔のような、
 どこか頼りなげでありながら、やわらかく包み込んでくれる温かさと
 優しさをもち、ほっと心が和らぐひとときです。


 お元気ですか? 

 街路樹の枝に残る葉数も、日めくりの暦に比例して、めっきり少なく
 なりました。大地は、ゆっくりと休息の時を迎えようとしています。


 今年こちらは、早くも11月に初雪の洗礼を受けました。

 低気圧が通過するたび、「雪下ろし」と呼ばれる激しい雷鳴が轟き、
 豆をまいたかのように大粒の霰が屋根をたたきます。そして、そんな
 前奏曲の後に、ようやく白い雪のベールが、周囲の風景を一変させる
 朝が訪れるのです。

 雪国で暮らしていると、その朝は、きーんと肌を刺すほどの厳しい
 冷え込みや、ほのかな窓の明るさによって、雪が舞い降りたことが
 床を出る前からわかります。

 川面から湯気のようにわく靄(もや)。そして自らが吐く息の白さ。
 厳しさとやわらかさが同居する冬の朝です。




        雪が降つてゐる、

          とほくを。

        雪が降つてゐる、

          とほくを。

        捨てられた羊かなんぞのやうに

          とほくを。

        雪が降つてゐる、

          とほくを。

        たかい空から、

          とほくを。

        とほくを

          とほくを。

        お寺の屋根にも、

          それから、

        お寺の森にも、

          それから、

        たえまもなしに。

          空から、

        雪が降つてゐる

          それから、

        兵営にゆく道にも、

          それから、

        日が暮れかゝる、

          それから、

        喇叭(らっぱ)がきこえる。

          それから、

        雪が降つてゐる、

          なほも。


             「雪が降つてゐる……」 中原 中也



 
 同じ日本でも、冬という季節ほど、その暮らしている地域によって、
 様相の異なる季節はないのではないでしょうか。

 川端康成の小説「雪国」を紐解くまでもなく、わずかトンネル1つで
 風景が一変する驚きを、いまも新鮮に感じることができます。

 「雪」こそが、かつて「裏日本」と呼ばれた地域の、冬の生活を規定
 してきた一番大きな主役なのでしょう。


 初めて雪の舞い降りた朝、「とうとう来るべきものが来た・・・」と
 いう深い嘆息が、この地に暮らす人々の口からもれるのを聞くことが
 あります。

 それは老いや病を自ら受け入れる言葉にも似て、逃れられないものを
 沈黙のうちに受容する心が、自然と育まれてきたからかもしれません。
 

 空から幾筋もの垂直線を引くかのように、同じ速度で落ちてくる雪片。
 ただひたすらに、淡々と、黙々と、雪は降り積もっていきます。


 それは砂時計のように、時の流れの非情を想起し、不思議とわたしの
 心を落ち着かせるのです。

 どんなにじたばたしたところで、ここから逃れ出ることはできない。
 永遠の時の流れに身を委ね、今を生きるしかないのではないか・・・

 絶え間なく降りしきる雪は、自分の内面で演じられるひとり芝居の、
 格好の舞台装置なのかもしれません。




    是(これ)がまあつひの栖(すみか)か雪五尺


                       小林 一茶



 薄幸の生涯をたどった一茶が、自らの死に場所とさだめた信濃の地。
 そこは、五尺もの深い雪に閉ざされる山里だったのですね。

 西行も、良寛も、人里離れた山にひとり籠もることで、耐えがたい
 孤独と引き替えに、精神の自由を求めたのでしょう。

 そして深々と雪に埋もれる冬こそが、その憧れを満たすことのできる
 最適のときだったのかもしれません。



    雪のうへに空がうつりてうす青し

            わがかなしみぞしづかに燃ゆなる


                        前田 夕暮
    


 新しく降り積もった雪は、あらゆるものを白い布団の中に埋め、角を
 まるくし、つかの間のぞく空の青さを反映して、きらきらと輝きます。

 雪上にさらす小千谷の織物と同じように、わたしたちの心も白い雪に
 よって漂白されるのでしょうか。


 新しい年を迎えるための最後の月、師走。

 ジングルベルが響く街で、あわただしく駆けまわるあなたが、ほんの
 一瞬でも、心が浄化されるときをもつことができるように願いつつ、
 つたない雪の便りをお届けします。




                    平成20年12月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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