あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.22

2007/12/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.22 ----

       「風 花」                 2007.12.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www.u-ohtaki.com/
                                  
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 遠くのあなたへ


 肌を刺す冷たい風が、鉛色の空から、裸木の隙間を吹き降りてきます。

 かろうじて枝に残った数枚の葉は、吹きちぎれんばかりに左右に揺れ、
 一羽の黒い鳥が、甲高い声を発して飛び去っていきました。
 

 コートの襟を立て、背中を丸めて行き過ぎる人たち・・・互いに顔を
 見合わすこともなく、俯き加減に、目的の場所に向かってただ黙々と
 歩を進めるその姿も、北国の初冬の風景の一部を成しているようです。


 お元気ですか。


 雪との関わりの中で、否応なく始まる、長い長い冬ごもり。

 これから数ヶ月繰り返される陰鬱な日々を思い、少し緊張しつつも、
 この土地の自然に寄り添って生きる人たちの、諦念とも呼べるような
 平淡な眼差しに出会うと、幾分こころが軽くなります。

 厳しい季節であるがゆえに、人と自然、人と人との結びつきを、より
 強く感じることができるのかもしれません。




   凍(し)みて痛めるごとく

   はてしなく

   こころ輝き

   枯木のうへにひびきを起す

   わが君とわかれて歩めば

   あらはるとなく

   消ゆるとなく

   ふりつむ我が手の雪を

   ああ 君は掻(か)く




                  「雪くる前」 室生 犀星



 吹き荒れた木枯らしがひとまず弱まり、急に冷え込んだ一日。天から、
 ひとひら、ふたひらと落ちてくる「風花」(かざはな)。

 山は、もう雪なのでしょうか・・・

 雪片を「花」と見立てた、古人(いにしえびと)の風流を、わたしも
 親しいものに感じつつ、空に向かって、手をさしのべてみます。

 雪はたちまちに、手の温もりに吸いとられ、まるで上空で交わされる
 水と大気の呼吸を、わたしの体内に伝えてくれるかのよう・・・


 雪は結晶が六角をしていることが多いため、「六花」(むつのはな)
 とも呼ばれるそうです。雪を花に例えるのは、「風花」と一緒ですが、
 それは美的な発想ばかりでなく、山に降る雪を稲の花に見立て、その
 多少で農作物の出来・不出来を占ったことによるとのこと。

 冬の到来を告げるものであるはずの「雪」が、「花」ということばに
 置き換えられることで、冬の次に来る希望に満ちた季節を予感させる
 ものとも成り得たようです。




    冬ながら空より花の散りくるは

         雪のあなたは春にやあるらむ



                清原深養父(きよはらのふかやふ)



 さて今年の雪は、いつもよりかなり早いのでしょうか。

 こちら雪国で感じる雪は、「花」などという生やさしいものではなく、
 ややもすると恐怖感さえ伴うような、暴力的なものでもあるのですが、
 宇宙船から見た地球が、素晴らしく青く美しいように、故郷を離れた
 者の見る雪景色は、なんとも懐かしく、心が揺さぶられるような美を
 感じさせてくれるのかもしれませんね。

 ことに、さっと塩を振ったような初雪の光景は、白と黒とのリズムを
 創り出している家々の屋根や、樹々のシルエットがくっきりと際だつ
 里山の山肌など、木版画を見るような力強い美しさを奏でています。




    君かへす朝の舗石(しきいし)さくさくと

         雪よ林檎(りんご)の香のごとくふれ



                        北原 白秋


 遠い昔、雪のつめたさで赤くなったわたしの小さな手を、すっぽりと
 その手に包み、ほぉーっと息を吹きかけてくれたあなた・・・

 そのなんとも言えぬ温かさが、今もわたしの心にほのかな「埋み火」
 となって残っています。思い出は雪の白さに浄化されて、こんなにも
 濃い美のエキスとなり、わたしの心を充たしているのです。

 
 あなたの記憶の中でも、「花」としての雪が舞っていますか?


 またお手紙、書きます。



                    平成19年12月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・



 


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