あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.20

2007/10/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.20 ----

       「月」                  2007.10.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。

 長い長い残暑のトンネルを抜け、ようやく秋風が心地良く頬を撫でる
 頃合いとなりました。夏の疲れが、今になってあなたの身体に宿って
 いないか、気がかりです。

 今年の9月は、ほんとうに暑い日々が続きましたね。

 お芝居の幕間のような、季節の入れ替えに伴う、どこか落ち着かない
 空気がやっとおさまって、わたしの周りには、いかにも秋を感じるに
 ふさわしい道具立てが、ひととおり揃ったところです。

 その中で、ひときわ心の琴線に触れたもの・・・それは「月」でした。

 「中秋の名月」・・・神々しいばかりのその姿を、あなたはごらんに
 なれましたか?




   ポッカリ月が出ましたら、

   舟を浮べて出掛けませう。

   波はヒタヒタ打つでせう、

   風も少しはあるでせう。



   沖に出たらば暗いでせう、

   櫂(かい)から滴垂る(したたる)水の音は

   昵懇しい(ちかしい)ものに聞こえませう、

   ――あなたの言葉の杜切れ(とぎれ)間を。



   月は聴き耳立てるでせう、

   すこしは降りても来るでせう、

   われら接唇(くちづけ)する時に

   月は頭上にあるでせう。



   あなたはなほも、語るでせう、

   よしないことや拗言(すねごと)や、

   洩らさず私は聴くでせう、

   ――けれど漕ぐ手はやめないで。



   ポッカリ月が出ましたら、

   舟を浮べて出掛けませう、

   波はヒタヒタ打つでせう、

   風も少しはあるでせう。



                  「湖上」 中原 中也
 



 月は一年中見られるのに、やはり「月」と言ったら秋なのですね。
 しっとりと心に染みてくるような、濃厚な気配が湖上に漂っています。

 
 今年の「十五夜」は9月25日でしたけれど、実際の満月はその2日
 後でした。

 長い間わたしは、十五夜は満月だとばかり思っていたので、なぜこの
 ようなことが起こるのか不思議でしたが、どうも実際の月の運行と、
 暦の8月15日(旧暦)とが少しずれているために起こるらしいとの
 こと。

 旧暦では、新月になった瞬間を「朔」つまり1日と定めているので、
 その時が0時0分となる場合と、23時59分となる場合では、ほぼ
 まる1日違うわけですから、「望」つまり15日もそれにしたがって
 変わり、実際の月の満ち欠け(新月から満月まで平均14,76日)
 とずれてくるのだそうです。それと、地球を回る月の軌道が、完全な
 円ではないことも関係しているらしいですね。


 まあ難しいことはともかく、こちらは、十五夜、十六夜(いざよい)
 そして実際の満月の日と、ともに良く晴れて、3日連続で「名月」を
 堪能することができました。



    秋風にたなびく雲の絶え間より

           もれいづる月のかげのさやけさ


                 藤原顕輔(ふじわらのあきすけ)


 月は、その清らかな光で周囲の空を明るく充たしながら、さえざえと
 美しく、見つめるこちらの心まで洗われるようです。

 そして、その月の美しさを引き立てる、絶妙の「脇役」の存在。

 それは「雲」。せっかくの月光を覆い隠したと思えば途切れ、色々に
 形を変えながら、月に絡み合うように流れていきます。

 実際は雲の方が動いているのに、まるで月が雲の海を渡り動いている
 ようにも見え、そこに独特の奥行きとドラマを感じさせるのです。



    月見ればちぢに物こそかなしけれ

           わが身ひとつの秋にはあらねど


                 大江千里(おおえのちさと)
    

 平安の歌人も月を見て、様々な思いが心に去来したのでしょうか。

 この同じ月をどこかで見ているだろう大切なひとのことが、自然と
 想われてしまうのです。


 さて、10月23日は、「十三夜」ですね。

 あの樋口一葉の名作「十三夜」の、悲しくも美しい情景が、彷彿と
 してきます。

 鬼のような夫に耐えかねて、離縁を覚悟で実家に帰ってきた女が、
 父に諭され、泣く泣く夫の元に戻る途中、たまたま乗った人力車の
 車夫が、昔想いを寄せていた男だったことを知る・・・

 はかなくせつない人の定めを、背景の月の光が見事に照らし出して
 いました。


 9月の十五夜が里芋を供えることから「芋名月」と呼ぶのに対して、
 十三夜は「栗名月」とか「豆名月」と名づけられているとのこと。
 古来より、十五夜にお月見をしたら、必ず十三夜の月も見ないと、
 「片見月」と言って、縁起の悪いものとされていたようです。

 「十三夜に曇りなし」などとも言われるようですが、わたしたちも
 鏡のように感覚を研ぎ澄まし、揺らぎのない平らかな心に、この日
 の月を静かに映してみたいものですね。
 

 またお手紙、書きます。



                    平成19年10月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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