あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.19

2007/09/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.19 ----

       「秋 冷」                  2007.9.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。

 波が引くように夏の暑さが遠のいてしまうと、弛緩した心の隙間に、
 白い秋の風が、すうっと入り込んできます。

 あたかも、急激に膨張させられて温度が低下した気体のような秋風の
 冷たさには、どこかしら空虚な感じが伴うように感じられませんか。


 子どもたちの長い休みも終わり、あなたの故郷は、もうすっかり秋の
 装いです。

 淡黄色に色づいた稲穂。刷毛で撫でたような雲を背景に、くっきりと
 際だつ山脈の稜線。

 この季節には、清らかなものの中に潜む一抹の哀しさが、ことのほか
 強く感じられるような気がします。




   さわさわっと 音がして

   草の葉が

   左右にわかれてゆれた

   その瞬時に

   光ったものがすぎた

   それはあの

   銀色の 細長い生きもの

   だったように思う



   草は 左右にわかれて

   生きものの行く道を作り

   そしてまたもとの静けさに

   もどっている

   私の胸もさわいだあとの

   静けさにもどって

   きらいなはずの生きもののいのちを

   愛しいものに思いはじめていた

   秋の冷めたさの中にいて



                  「秋の原」 高田 敏子
 



 その名の通り、野原の草を分けるように吹く風「野分」(のわき)。
 どこまでも続く草原の、長い草がさあっとなびいて、風の「足跡」を
 示すのですね。
 
 きょう9月1日は、そんな強風が吹くという「二百十日」。立春から
 数えての数字だそうですが、せっかく実った稲に被害をもたらすこと
 から、農家ではこの日を厄日として警戒したとのこと。(奇しくも、
 大正12年に起きた関東大震災によって、きょうは「防災の日」にも
 なっていますね。)

 不安な夜が明けると、昨夜の大荒れが嘘のように、穏やかな秋の日が
 照る「野分晴れ」です。そこここに散らばる落ち葉や、吹き倒された
 夏草には、凋落した秋の気配が、すでに色濃く漂っています。



    野分あと赤星一つ煌々と       関口こごみ



 そして8日は、二十四節気の一つ「白露」(はくろ)ですね。

 立秋からちょうど一ヶ月目のこの日。いつの間にか残暑が去り、空は
 澄み渡って、さわやかな大気が野に充ちる頃。庭に出ると、草木には
 しっとりと露が降りています。



   白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞちりける

               文屋朝康(ふんやのあさやす)


 
 古今、はかなきことに例えられる「露」。

 富も名声も若さも恋も、またわたしたちの命そのものでさえ、一夜が
 明けると、珠玉のように美しい露のごとく、消え去ってしまうのかも
 しれません。


 美しいものがはかないのか、はかないからこそ美しいのか・・・。
 
 秋の冷たさが育んだほんのつかの間の美に、自らの心を添わせつつ、
 あなたと同じ世界に存在していることの、奇跡のような巡り合わせを
 あらためて思い起こし、感謝しています。

 もの思う季節は、夜ごとあなたの中に、どんな想いを結ばせてくれて
 いますか。


 またお手紙、書きます。



                    平成19年9月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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