あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.18

2007/08/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.18 ----

       「夏の記憶」                  2007.8.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。

 どこからか吹きこんだ一陣の風が、汗でぴったりと張りついた素肌と
 Tシャツの間を、撫でるように通り過ぎていきます。
 
 蝉のバックコーラスに協奏する、心地よい風鈴の音・・・。

 暑さの続く毎日の中に、オアシスのごとく突然現れるこうした瞬間が
 好きです。


 夏バテなどしてませんか?


 大きな地震に遭遇して、やむを得ず避難所暮らしをしておられる方々、
 疲れと不安を抱えながら、壊れた家の片付けに追われる方々を思い、
 心よりお見舞いを申しあげるとともに、1日も早く、元通りの平穏な
 日々が戻ってくることを祈らずにはいられません。

 特別のことなど何も起こらない、平凡な一日の中にこそ、ささやかな
 幸せが存在することを、あらためて感じます。


 さて8月は、暦の上ではもう秋。

 けれど、長い日本列島、猛暑に悩まされている地域もあれば、豪雨に
 たたられているところもあるようで、なかなか気候が安定しませんね。
 あなたのところではいかがですか?

 こちらはまだ梅雨明けもせず、特に朝晩は涼しい日が続いています。
 これからが夏本番というところでしょうか。

 長い休みに入った子どもたち。麦わら帽子をかぶり、虫取り網を手に
 駆け回るその姿を、最近はあまり見かけなくなりましたね。

 でも夏を象徴する風景には、そんな子どもの姿が欠かせないようです。




   そよ風もない夏のまひる

   しんとして日が燃える

   止まつた水車小屋のまへの泥田に

   青々した蓮の葉が繁り

   たゞ一輪の蓮華が咲いてる。



   焼けるやうに熱い路を

   跣足であるいてきた子供が

   ちよいと蓮華の花に目をつけて

   こつそりと猫のやうに歩み寄る。



   眩しいほどの清い美にうたれて

   魂は自から微笑む、涼しくなる

   子供は深い泥に足を入れ

   こつそりと蓮華の花を折る。



   「誰れだ、誰れだ」

   水車小屋から頭を出した百姓はどなる

   子供は蓮華の花を持つて

   白く光る道を一散にかける。



   子供はどこへゆく

   その家は裏街の貧民窟にある

   花を挿す瓶さへない

   けれども遠く一散に駆ける。



                  「蓮華と子供」 白鳥 省吾
 



 真夏の昼下がり。海水浴場などのない、小さな海辺の集落を訪ねると、
 そこには驚くほど人の姿がありません。

 家と家との狭い隙間に、無造作に置かれた漁具。
 重そうな頭を持ち上げて、ゆらりと立つ向日葵。

 村の人々は、日差しの強いこの時間、外に出ずにゆっくりとお昼寝を
 しているのかもしれませんが、そこには、まるで白昼夢の中に現れた
 真空地帯のような空間が存在しています。

 遠くに聞こえる潮騒の音。鼻をつく磯の香・・・。
 時間がそこで足踏みをしているのでしょうか。




   空に

   演説会がある

   真夏の正午

   人間には聞こえない声を

   万物が

   しーんと聴いてゐる


   どこかで

   石が

   音を立てて乾いてゐる


                  「炎天」 高見 順



 遠い日の記憶が、現実と幻想の隙間にすべり込みます。

 それは、幼い頃の焼けつくような午後。

 ゆらゆらと立ちのぼる陽炎や、皮膚を通してからだ中に浸透してくる
 蝉しぐれや、むっとするほどの草いきれが、不思議なほどに鮮やかに
 目に浮かんでくるのです。

 埃っぽくて、だだっ広くて、石ころだらけの素っ気ない道にたたずむ
 のは、孤独な自分の姿にほかなりません。

 誰もが持つ、自らの心の奥底に秘められた孤独感を呼び覚ます装置が、
 夏という季節には、特別に働くのでしょうか。


 またお手紙、書きます。



                    平成19年8月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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