あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.17

2007/07/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.17 ----

       「灯ともし頃」                2007.7.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。

 急に降り出した雨の音を窓外に聞きながら、この手紙を書いています。

 空を覆う黒雲から、その重さに耐えきれぬように、突然落ちてくる雨。
 枝を覆い隠すほど豊かに茂った木々の葉が、それを受けとめ、小さく
 透明な球体に変えて転がし、先端から滴らせる有様が目に見えるよう。

 
 あなたは、雨がお好きですか?

 水害に遭われた経験をお持ちの方は、雨を楽しむ気持ちには、とても
 なれないかもしれませんし、その好き嫌いはそれぞれでしょうけれど、
 わたしは雨音を聴いていると、しっとりと心が落ち着き、自分の中の
 奥深い場所に向かって、意識が沈潜していくような気持ちがします。


 けれど、そんな雨の季節も、もう少し経てば、そろそろエピローグ。

 雨上がりの夕空にかかるひと筋の虹の橋は、浄化されたような周囲の
 空気の透明感を強調しています。雨の魅力は、降り止んだときにこそ
 強く感じられるのかもしれませんね。特に、まだ雨の匂いの残る梅雨
 明け間近の夕暮れの美しさは、たとえようもないほどに絶品です。

 そして、そんな情景を舞台の背景として、ひと群れの花たちが奏でる
 夏の歌。でももしかすると、主役は花たちではなく、それを見ている
 わたしたちの「想い」そのものなのかもしれません。





   まてどくらせどこぬひとを

   宵待草(よひまちぐさ)のやるせなさ



   こよひは月もでぬそうな。


                  「宵待草」 竹久 夢二
 


 少し大きさを増した太陽が、ところどころ黒雲が残る西の空を茜色に
 染めながらゆっくりと退場した後には、衰えゆく光の中、そこだけが
 スポットを浴びたように明るく、月見草が咲いています。

 その鮮やかな黄色は、遠く過ぎ去ったあの日の想いを、まるで昨日の
 ことのように蘇らせます。




   あの日たち 羊飼ひと娘のやうに

   楽しくばつかり過ぎつつあつた

   何のかはつた出来事もなしに

   何のあたらしい悔ゐもなしに



   あの日たち とけない謎のやうな

   ほほゑみが かはらぬ愛を誓つてゐた

   薊(あざみ)の花やゆふすげにいりまじり

   稚(をさな)い いい夢がゐた―いつのことか!



   どうぞ もう一度 帰つておくれ

   青い雲のながれてゐた日

   あの昼の星のちらついてゐた日…



   あの日たち あの日たち 帰つておくれ

   僕は おおきくなつた 溢れるまでに

   僕は かなしみ顫(ふる)へてゐる


     

              「夏花の歌 その二」  立原 道造




 あの日に帰りたい・・・あなたにもそう思える瞬間があるでしょうか。

 けれども想い出は、必ずしも甘美なものばかりではありません。
 思い出すたびごとに、顆粒の風邪薬を口に含んだときのような苦さが、
 後悔とともに蘇ってくることもあるのですね。

 望んでも、二度と繰り返すことのない時の流れの中を、つまずきつつ、
 まろびつつ、わたしたちは毎日どこへ向かって歩いているのでしょう。

 
 コバルト色に濃くなっていく夕闇に、地上のあらゆる色が溶けこんで
 しまえば、わたしたちの目は自然に上を見あげます。


 いつの間に出ていたのか・・・ぽつんとひとつ一番星。

 光が衰えたからこそ、逆に見えてくる光もある。
 色を失ったからこそ、感じる輝きがあるのかもしれません。

 夏の夕べは、齢(よわい)を重ねてきた者たちにとって、自らの内に
 新たな灯(ひ)を点す「祈り」の時でもあるのでしょうか・・・。


 またお手紙、書きます。



                    平成19年7月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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