あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.15

2007/05/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.15 ----

       「新 緑」                 2007.5.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。


 光あふれる季節が訪れました。

 まだ少し肌寒さは残るものの、5月の太陽はその豊潤なエネルギーを、
 これから伸びようとするあらゆる草木の上に、あたかも母がわが子に
 寄せる慈愛のごとき優しさで、万遍なく注ぎ込んでいるかのよう。


 生まれたばかりの薄緑の葉は、しだいにその色を濃くしながら、枝と
 枝との空間を狭め、それぞれの種に相応しいシルエットを描き出して
 いくのですね。

 目にしみるような緑の創出。
 ああ、なんと瑞々しい生命力にあふれた世界でしょう。

 風に誘われるまま、ふらりと旅に出たくなります。




   電車の窓から流れる景色を見ていた

   穏やかな住宅街の色彩を

   初夏の風があらゆる所に行き渡って

   柔らかな緑が美しい



   その流れ去る視界の中に

   柳の緑が通り過ぎた

   そこに何を見たのだろう

   懐かしさに

   次の駅で降りてみる



   どの辺りだったか

   大体の見当で歩き出す

   誰かに会いに行くようなつもりで

   あの木の下に立ってみたいと

   まだ薄い緑の雨のような 風のような

   小さな葉のそよぎの下に

   暖かい風に吹かれて

   しなやかに変化する木の形を思い描きながら

   コツコツと足を運ぶ

   風下に立ったら

   一斉の嵐に出会うかもしれない

   巻き込まれて一本の枝につかまったら

   そのまま空に吹き上げられてしまいそうな



   木の見えた方角が分からなくなった

   いつの間にか風下になってしまったのか

   一つ角を抜けて

   気がつくと

   柳のやさしさが背中を押している

   想った時間を携えて木と向い合う



   さざ波のように揺れる葉に

   微かな風のきらめきがある

   新緑の匂いを移して

   枝をくぐり 葉を掠め 吹き過ぎていく時

   そこからまた生まれる新しいものが

   街全体を靡かせているように見えた

   このまま風の行く方に歩き出そう

   木が導いてくれている

   少し離れたら

   今度はもう一度振り向くことを楽しみにして

     

                  「薫 風」  千坂 労




 もしも風に色や香りがあるなら、それを最も強く意識するのが、この
 季節であるのかもしれませんね。

 あなたはいま、どこでどんな風を感じていますか。


 青く抜けるような空を背景に、雄大に泳ぐ鯉のぼり。

 今は布製ですが、昔は和紙でできてましたよね。1日泳ぐとあちこち
 破れ、夕方、いちいち親たちがそれを下ろして、夜なべ仕事に繕って
 くれたようです。

 けれど紙製の鯉のぼりは、その体内に風をはらむと、子どもが怖がる
 ほど大きな音を立て、何ともすさまじい迫力がありました。



   紅塵(こうじん)を吸うて肉(しし)とす五月鯉

                       竹下しづの女

 
 街の埃さえもいっぱいに吸い込んで、その血肉にしているような鯉の
 姿は、この世のあらゆる汚濁や苦しみを一呑みにしつつ、悠然と風に
 身を任せて生きる力強さを、わたしたちに示してくれているような気
 がしませんか。


 もともと陰暦5月5日は「薬の日」と言われ、菖蒲、桃、桑、蓬など
 青々と茂った野の薬草を摘み、これで生薬を作る習慣が中国にあった
 のだそうですね。

 これらの薬や鹿の角、モグサ、沈香などを網目の玉に入れて、菖蒲の
 花を結んだものが「薬玉」(くすだま)。これを柱に掛けて、邪気を
 払うのに使ったようです。

 そう、小学校の運動会で、お手玉をぶつけてよく割りましたよね。
 あの競技のルーツが、端午の節句にあったなんて、なんとなく不思議
 な気がします。


 さて、休みの連続するこの週。あなたはどこかへ旅をしますか。

 行楽地もいいけれど、近くの公園や野山で、新緑の上を吹き渡る風を
 全身で感じてみるのも、また心地よいもの。



 
   悲しめるもののために

   みどりかがやく

   くるしみ生きむとするもののために

   ああ みどりは輝く。


                  「五月」  室生 犀星



 世のしがらみにもみくちゃにされながらも、精一杯生きているあなた。

 若葉を茂らす大樹が、あなたのためにその旺盛な生命力を分け与えて
 くれることを祈っています。

 あなたの心の「凝り」が、ゆっくりと解きほぐされますように。
 そして、あなたに「生きる力」が再生されますように。


 またお手紙、書きます。



                    平成19年5月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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