あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.13

2007/03/01

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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.13 ----

      「旅立ち」                    2007.3.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。

 哀調を帯びた声に思わず夜空を見上げると、数十羽の白鳥が一文字に
 規則正しく並びながら、北へと飛び去ってゆくところでした。

 いつもより一ヶ月も早い旅立ちです。まだ寒さは残るものの、連日の
 暖かさに、彼らも幾分面食らったかもしれません。

 せっかく来てくれたのに、今年はあんまりゆっくりできなかったね。
 気をつけて行くんだよ。来年まで、さよなら・・・・・・

 美しく咲き乱れる花の絨毯を目にすることもなく、北の荒涼たる大地
 へと帰って行く彼らの習性が、独特なその声と相まって、もの悲しく、
 またけなげにも感じられます。

 彼らの行く手の空には、北斗が柄を垂直に立てて突っ立ち、春の空を
 代表する獅子座が、天空に躍り出るように、東の地平線から上がって
 きていました。


 春。春。さあ、いよいよ春の開演です。

 花の赤、草の緑、海の青・・・
 買ってもらった真新しいクレヨンの箱を開けたときのように、様々な
 美しい色彩に、胸がときめく季節を迎えるのですね。

 その色を運ぶやわらかな風は、あなたの住む方角から吹いてくる風。
 とろけるような至福の感触をもった風です。





   あはれ花びらながれ

   をみなごに花びらながれ

   をみなごしめやかに語らひあゆみ

   うららかの跫音(あしおと)空にながれ

   をりふしに瞳(ひとみ)をあげて

   翳り(かげり)なきみ寺の春をすぎゆくなり

   み寺の薨(いらか)みどりにうるほひ

   廂(ひさし)々に

   風鐸(ふうたく)のすがたしづかなれば

   ひとりなる

   わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ

     

               「甃のうへ」  三好 達治




 弥生3月を色でイメージすると、私にはどうしてもパステルカラーの
 薄桃色と薄緑が浮かびます。そう、おひなさまの「菱餅」の色です。

 寒さが和らぎ、樹々の芽がふくらんでくるこの月の初めに、女の子の
 節句である「ひな祭り」があるというのは、何とも絶妙の配置だとは
 思いませんか。

 やわらかで上品で、華やかなこの季節行事は、女の子の未来を寿ぐと
 同時に、新しい季節の始まりを喜ぶ自然の感情が形になったものでは
 ないでしょうか。


 けれども、華やかなるものの陰には必ずと言っていいくらい、一抹の
 寂しさがあるのも、また常です。


   お内裏さまとお雛さま ふたり並んですまし顔
   お嫁にいらした姉さまに よく似た官女の白い顔

 
 あどけない女の子も程なく成長し、ひとりの「女」になります。昔は
 そこには「お嫁入り」という「別世界への旅立ち」が待っていたこと
 でしょう。私は、おひなさまの決して笑っていないその顔に、女性の
 未来を見つめる遠いまなざしを感じてしまうのです。

 もともとは、あらゆる穢れ(けがれ)を負わされて、川へと流された
 おひなさま。あの凛とした表情のまま、木の葉のように揺れながら、
 流れを下っていく様子を想像すると、そこには奇しくもひとりの女の
 人生が予感されるようにも思えるのです。



    流し雛冠をぬいで舟にます       山口 誓子



 春の訪れは、また多くの「別れ」をも引き連れてきます。

 晴れがましい門出、叫びたいほどせつない別離・・・
 あなたの周りでは、この月、どんな別れが演じられるのでしょう。

 陽春の華やぎと喧噪の中で、あなたがほんの一瞬見せた愁いの表情を
 私は忘れることができません。あれは、あなたが旅立ちを決意した朝
 でしたね。

 別れることは、新しい自分と出会うこと。

 あなたの残したその言葉を春が巡るたびに思い出し、心の中で何度も
 反芻する私です。


 思えば、この世のすべては一期一会。毎日同じようなものを目にし、
 同じことを繰り返しているように見えながら、この世に、同じものが
 同じ状態で存在することなどあり得ない。すべてが絶え間なく変化し
 続けているのですね。

 この一瞬一瞬が、別れと出会いの連続であるなら、生まれたばかりの
 赤ちゃんが初めて目にするような、新鮮な驚きと感動をもって、この
 世のあらゆる事物に接することもできるはず・・・。

 新しい春との遭遇は、私の心にそんな芽吹きを与えてもくれるのです。


 またお手紙、書きます。



                    平成19年3月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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