あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.12

2007/02/01

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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.12 ----

      「浅き春」                       2007.2.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ


 お元気ですか。

 消炭色をした空に、いかにも重そうな黒雲が、刻々とその形を変えな
 がら通り過ぎていきます。気管支からやっと絞り出した息のように、
 乾いた音を響かせる北西の季節風。道沿いに立てられた商店の幟旗が、
 引きちぎれんばかりにはためき、霰まじりの冷たい雨はまるで素肌を
 突き通すかのようです。

 これから冬が始まるのではと思わせるような、そんな荒涼たる風景が
 見られたかと思うと、一転穏やかな陽光が何日も訪れたりして、雪の
 ない今年の冬は、いつもと違ってその様相をめまぐるしく変化させて
 います。

 聞くところによると、先月の暖かさで、あちらこちらにもう雪割草や
 梅が咲き出したり、フキノトウが顔を出したところもあるとのこと。

 まだ分厚い氷や雪に閉ざされていても、「立春」という言葉の響きで、
 心にほのかな光が差すように感じられる例年の待ち遠しい春の訪れは、
 今回ばかりは何となくあいまいで、お湯で薄められた味噌汁のような
 生ぬるさ。


 でも今朝は雨が雪に変わり、窓の外には何日ぶりかで白い玉すだれが
 下がって、木の枝の綿帽子を徐々に厚くしていく、そんなおなじみの
 風景が見えています。

 いちめん白と銀に覆われた世界・・・ほら
 雪のないところにいるあなたにも、この美しさが想像できますか?



   はんのきの高き梢(うれ)より

   きらゝかに氷菓をおとし

   汽車はいまやゝにたゆたひ

   北上のあしたをわたる



   見はるかす段丘の雪

   なめらかに川はうねりて

   天青石(アヅライト)まぎらふ水は

   百千の流氷(ザエ)を載せたり



   あゝきみがまなざしの涯

   うら青く天盤は澄み

   もろともにあらんと云ひし

   そのまちのけぶりは遠き



   南はも大野のはてに

   ひとひらの吹雪わたりつ

   日は白くみなそこに燃え

   うらゝかに氷はすべる

     

               「流氷(ザエ)」  宮沢 賢治



 北国に住む身には、どうしても冬を鬱陶しいものと感じてしまうこと
 が多いのですが、ちょっと気をつけて見ると、冬の美しさは至る所に
 あるのですね。「氷」もその一つではないでしょうか。

 樹々の枝葉についた氷が、雲の切れ間からのぞく青空を背景として、
 陽の光にきらきらと輝く様は、精巧に出来たガラス器のよう・・・。

 例年ならこの時期は、屋根の先の氷柱(つらら)が、セイウチの牙の
 ように長く成長し、晴れた日、その先から絶え間なくしたたり落ちる
 水滴の音によって、寒気の緩みを実感します。

 また水辺に張った薄氷(うすらい)も、あわあわとして頼りなげに、
 浅い春の気分を伝えるもの。幼い二人の男女に芽生えた淡い恋に似て、
 どこかはかなくて危なっかしいけれど、それだけに美しいのですね。



    瞳(ひとみ)濃く薄氷よりも情淡く     富安 風生

    せりせりと薄氷杖のなすまゝに       山口 誓子



 池の氷の表面はなめらかで、鏡のように周囲の景色を映し出しますね。
 それを昔の歌人は「氷面鏡」(ひもかがみ)と名づけたということが、
 山下景子さんの著書「美人の日本語」にありました。

 「氷が溶ける」意と「紐が解ける」意をダブらせ、春が来て池の氷が
 溶けるように、「紐」つまり「帯」を解いて男女が親しくなるという
 微妙なニュアンスが、この言葉には含まれているのだそうですよ。

 三寒四温を繰り返す中で、あなたと私を隔てる距離も、この氷面鏡の
 ように、少しずつ薄くなってくれるでしょうか・・・


 もうすぐ季節を分ける「節分」、そして翌日は「立春」。

 感度の良い探知機のごとく、季節が移ろうかすかな気配に、心の針が
 鋭く振れる、そんな一瞬を大切にしたいのです。


 またお手紙、書きます。



                    平成19年2月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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