あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.9

2006/11/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.9 ----

        「白菊」                      2006.11.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ。


 こざっぱりと刈り取られた田圃が、里の風景を心もち広く感じさせて
 います。遠くの山並みは、白い稜線を描いて青空にくっきりと映え、
 樹々の葉は、次第にその彩りを増してきました。


 お元気ですか。
 朝夕めっきり肌寒くなりましたね。風邪などひいていないでしょうか。

 日中の穏やかな陽光は、午後4時を回るとにわかに衰え、駆け足で宵
 闇が迫ってきます。秋の初めには、あれほど賑やかだった虫の声も、
 かそけきほどに細くなり、すべてに凋落の気配が漂うこの頃。

 そんな中にただひとり、気品と清香を保ちつつ凛と咲いているのは、
 百花の王とも言われる「菊」ですね。秋の文化祭には欠かせない花。
 たくさんの種類がある中で、わたしが最も心惹かれるのは、野に咲く
 「白菊」です。




   月に沈める白菊の

   秋(あき)冷(すさ)まじき影を見て

   千曲少女(ちくまおとめ)のたましひの

   ぬけかいでたるこゝちせる



   佐久の平(たひら)の片ほとり

   あきわの里に霜やおく

   酒うる家のさゞめきに

   まじる夕(ゆふべ)の鴈(かり)の声



   蓼科山の彼方にぞ

   年経(ふ)るおろち棲むといへ

   月はろばろとうかびいで

   八谷(やたに)の奥も照らすかな



   旅路はるけくさまよえば

   破(や)れし衣の寒けきに

   こよひ朗らのそらにして

   いとゞし心痛むかな


  

               「秋和の里」  伊良子 清白




 急速に夜の帳(とばり)が降りてくる夕暮れ時、天空にはくっきりと
 した三日月。そこだけがほのかに明るい白菊は、誰かの魂の化身なの
 でしょうか・・・。


 ところで菊の原産地中国では、この花は長寿をもたらすものとされ、
 陰暦の九月九日重陽の節句に、盃に菊の花びらを浮かべる「菊酒」を
 飲んだりしたそうですね。そう聞くと思わず、花札の絵柄を思い出し
 ませんか。

 重陽の節句を過ぎても咲き残った菊を「残菊」、またその後におそく
 咲き始める菊を「晩菊」と言うそうですが、重陽の節句のつぎの日を
 「小重陽」と呼んで、宮中では「残菊の宴」を催したとのこと。

 菊の花びらを浮かべて飲むお酒なんて、ちょっと風雅ですね。こんど
 やってみようかな・・・。

 昔語りをしながら、夜通し二人で酌み交わすお酒(NHK朝のドラマ
 「芋たこなんきん」でやってましたね)も素敵なのだけれど、ひとり
 想い人を心に抱きながら、しみじみ飲む酒もまた良いものですね。


 菊と言えば、わたしたちはこの時季よく菊の花をお浸しにして食べる
 のですが、これって新潟と山形だけの風習なのでしょうか。その中で
 特に赤紫色のものは「かきのもと」と呼ばれているので、もしかして
 万葉歌人の「柿本人麻呂」にまつわる古式ゆかしい言い伝えでもある
 のかなあと思っていたら、ただ家の垣根の根元に植えられていたから
 なのだそうですね。ちょっとがっかりしました。

 でもこのお浸し、夏の疲れをとったり、高血圧や視力回復にも効果が
 あるといいますし、何より香りが良く、さっぱりしてとても美味しい
 んですよ。


 菊は大輪のものも豪華ですけれど、やっぱり野菊が好きです。野菊も
 原種は白い花とのこと。


   心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花

              凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)


 霜の白さにも対比させられるほど、さえざえとした香気あふれる野の
 白菊に、伊藤左千夫の名作「野菊の墓」を思い出しました。

 か弱いけれど、またそれだけに優しい秋の陽差しは、限りある時間の
 中で精いっぱい生きる花々を、その透明な空気に包みこんで、静かな
 大地のエネルギーを注ぎ込むかのようです。
 
 あなたはいま、同じ秋の淡い陽光をどんな思いで浴びていらっしゃる
 のでしょうか・・・。

 またお手紙、書きます。



                    平成18年11月1日 

                 遠くのあなたを想いながら・・・




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