あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.8

2006/10/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.8 ----

        「秋思」                      2006.10.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ。


 お元気ですか。

 一日ごとに、秋も深まってきましたね。
 見上げると、思わず吸い込まれてしまいそうなほど、青くて高い空。
 遠くの山の稜線がくっきりと浮き立ち、清澄な大気が大地を満たして
 いるかのよう・・・。

 そうそう、この間ね、海辺の道路を車で走ったんです。驚きました。
 海の色が、「インジゴ」というのかな、今まで見たことがないほどに
 濃くて深い藍色をしていたのです。空気が澄むと、こんなにも風景の
 彩りが美しく見えるのでしょうか。
 

 街を歩けば、あちこちの庭から漂ってくる、思わず目を閉じてしまう
 ほどの甘い香り・・・そう、金木犀(きんもくせい)です。その強い
 香りは、わたしの意識を否応なく遠い昔へと引き戻してしまいます。
 あなたもわたしも、まだ若く純粋だった、なつかしきあの頃に・・・



   木犀が咲き出すと

   水晶製の空気がどこからともなくながれてきて

   すべるやうに音なくながれてきて

   時によるとほかのものがみんな消えてしまつて

   ただ木犀の匂ひだけが

   地球のうへをながれてゐることがある

  

               「木犀の匂ひ」  高橋 元吉





   蕎麦の花の咲く頃

   私はよくあなたのことを憶ひ出す

   ことしもその季節がおとづれてゐる

   きよらかな綿雲が

   あなたの生涯のやうに

   愛する秋の女神の夢をのせて

   静かにながれて行った

   陽をうけた稲田の稔り

   遠い牧場に

   牛達がゆつくり草を喰(は)んでいた

   もう午後も遅いのであらうか

   私はふと歩みをとどめる

   そして

   なにかとりかへしのつかぬ悔しみを覚える



   蕎麦の花は白く・・・・・
 

       「牧歌は消えて 〜津村信夫に〜」  神保 光太郎




 花の香りに、遠く過ぎ去りし日々を思い浮かべることって、あなたも
 あるでしょうか?

 あれは小学生の高学年の頃だったと思います。「小学○年生」という
 その頃とっていた雑誌の付録に、ある時1冊の漫画がついてきました。

 それは、たぶん女の子向けに書かれた悲しい恋の物語でしたが、その
 美しい絵に惹かれて何度も読み返し、涙したのを覚えています。

 ある青年が若かりし頃、徒歩旅行の途中でたまたま泊めてもらった家
 の美しい娘と許されぬ恋に落ち、駆け落ちを約束しました。けれども
 その駆け落ちの準備のために、一足先に都会に出た青年は、別の女性
 と結ばれてしまいます。

 一度だけ、街の雑踏の中をうつろな表情で歩く彼女の姿を見かけるの
 ですが、声をかけられぬまま別れ別れとなり、やがて長い年月が経ち
 ました。

 初老になった男は、ある日妻と一緒に、見覚えのあるその土地を旅し
 ますが、彼女と駆け落ちを約束したあたりには、流れくる林檎の花の
 香りに包まれて、一つの墓があったのです。それは、悲しみのあまり
 自殺した彼女の墓なのでした・・・。


 原作は、イギリスの作家ゴールズワージーの「林檎の樹」という小説
 なのですが、あなたもご存じでしょうか。

 今思うとこの青年のとった行動は、ひどく身勝手とも思えるのですが、
 身分の違う2人の女性との愛の狭間で思い悩む青年の純粋な心の葛藤、
 長い年月の果てに知らされることになったその選択の悲しい結果が、
 ノスタルジックで甘美な情景と相まって、まだ若かったわたしの心の
 琴線を震わせたのでした。


 金木犀の甘い香りは、そんなおぼろげな記憶をも紡ぎ出してくれます。
 ほんの少しの風。ほんの少しの香りにも、秋はもの思う季節ですね。

 

     身にしむやほろりとさめし庭の風

                      室生 犀星


 移ろいやすく頼みがたきは人の心・・・でもそんな人と人との関係の
 中で、お互いに傷つけたり、傷つけられたりしながら、わたしたちは
 生きているのでしょう。愛するが故に傷つけてしまうことだってある
 のかもしれません。

 どんなに愛する人であっても、いつかは必ず別れなければならない時
 が来る。そのことを意識しつつ、だからこそ、あなたを想う今のこの
 一瞬を大切にしたいのです。


 またお手紙、書きます。


                    平成18年10月1日 




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  展覧会のご案内
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   日本のクラフト2006 手 〜暮らしを育てる道具たち〜

     会期:9月14日(木)〜10月3日(火)10:30〜19:00
     会場:東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー内
        リビングデザインセンターOZONE
        第1会場 3階  第2会場 6階
     主催:財団法人 クラフトセンタージャパン


 わたしが評議員をさせていただいている財団法人「クラフトセンター
 ジャパン」が主催する企画展です。

 会期が明後日3日までということなので恐縮ですが、いずれも、手の
 温もりを感じる、デザインの優れたクラフトを集めた展示会ですので、
 東京近辺にお住まいの方でクラフトに興味のある方は、ぜひご覧いた
 だければと思います。


   詳しくは → http://www.monomono.jp/ccj/index.html



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