あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.7

2006/09/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.7 ----

        「虫の音」                      2006.9.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ。


 お元気ですか。

 まだ日中は汗ばむものの、朝夕の風は、紛れもなく秋の到来を告げて
 います。長雨も猛暑も、過ぎてしまえば「邯鄲(かんたん)の夢」の
 ごとく、ひと夏の思い出とともに、記憶の片隅にわずかな残滓を留め
 るのみ。時は、否応なく私たちを新たな季節へと導くのですね。

 夏休み中に作った大きな工作をかかえて、黒っぽい顔の子どもたちが
 登校していきます。「祭のあと」のような、どこかしら空虚な家の中。
 でも静かさを取り戻した安堵感が、ここかしこに漂っているようです。


 そちらはまだ残暑が厳しいのでしょうか。
 夏の疲れはありませんか。

 次々とやってくる台風に、なかなか安定しない空・・・。
 体調を崩していないかと心配です。




   タイフーンの吹いている朝

   近所の店へ行つて

   あの黄色い外国製の鉛筆を買つた

   扇のように軽い鉛筆だ

   あのやわらかい木

   けずつた木屑を燃やすと

   バラモンのにおいがする

   門をとじて思うのだ

   明朝はもう秋だ

  

                   「秋」  西脇 順三郎




 今、これを書いている傍で、一匹のツヅレサセコオロギが、しきりに
 声を震わせています。そのリズムセクションを務めるのはカネタタキ。
 チンチンチンチンと、まるで小気味良いシンバルのような音を響かせ、
 ひと夜のセッションを楽しんでいるかのよう。
 
 でも彼らにとってみれば、これも必死の求愛なのですよね。

 あんなに小さな身体から、こんなにも豊かな音量の響きを奏でる彼ら。
 耳を澄ませていると、その一途な想いがこちらにも伝わってくるよう
 な気がします。

 昔の人は、それを「針させ、糸させ、綴れさせ」と聞きなし、「寒い
 冬が来ないうちに、早く暖かい衣を刺し子に縫って作りなさい」との
 メッセージに受け取ったそうですね。

 今はとてもそんなふうには聞こえないけれど、季節が生活としっかり
 結びついていた時代には、虫の声も自然からのメッセージに聞こえた
 のかもしれません。


 「コロコロリー」のエンマコオロギ、「リーンリーン」のスズムシ、
 「リッリッリッ」のミツカドコオロギ、「ルルルルル」のカンタン、
 「スイッチョン」のウマオイ、「ガチャガチャガチャ」のクツワムシ、
 「フィリリリ」のクサヒバリなどなど、オーケストラの中からひとつ
 ひとつのパートを聞き分けるのが、布団に入った私のこの頃の楽しみ
 なのです。

 

   馬追虫(うまおい)の髭のそよろに来る秋は
             まなこを閉ぢて想ひ見るべし

                      長塚 節(たかし)
   


 じっと目を閉じていないと感じとれないほどの、かすかな秋の気配。
 それを「馬追虫のひげのそよろに」と表現した鋭敏な感覚のこの歌が、
 私はたまらなく好きです。

 虫の声、鉛筆の感触、木屑を燃した匂い・・・
 秋は、耳や鼻や口や肌で感じとる季節なのかもしれませんね。
 ふと、何気なくあなたの手に触れたあのときの、かすかな感覚を思い
 出してしまいました。

 秋の長夜、あなたは何を思いながら過ごしているのでしょうか。


 またお手紙、書きます。


                    平成18年9月1日 



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