あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

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あなたへ贈る季節のたより No.6

2006/08/01


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    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.6 ----

        「晩夏」                      2006.8.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
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 遠くのあなたへ。


 お元気ですか。

 炎帝が去った西の空に、ぽつんとひとつ、一番星が出ました。
 ぱちぱちと鳴る火音と、近隣に住むこどもたちのうちはしゃぐ声。
 ほのかな硝煙の匂いが、夕風に乗って流れてきます。

 はや8月ですね。
 梅雨前線の渋滞で、すっかり遅刻してしまった夏が、慌てふためいて
 駆け込んできたのに、もうすぐ立秋のベルが鳴ろうとしている・・・
 今年はそんな感じでしょうか。

 長雨、日照不足がいろんなところに影響しているようです。その一方
 カリフォルニアでは、猛暑で百人以上の方が亡くなっているとのこと。
 地球環境じたいが、人間の愚かな所業によって、大きく変化している
 のを感じます。


 盂蘭盆には、帰られそうですか。

 あなたの帰りを、指折り数えて、ひたすら待つ人がいるということを
 どうか忘れないでください。その人にとって8月は、そのためにある
 月なのかもしれないのですから・・・。

 
 そして、晩夏、特に旧盆は、遠くに去った人を思いやる季節(とき)。
 昔日の面影が、数々の思い出とともに、夕闇の中によみがえります。




   夕暮が四方に罩(こ)め、青い世界地図のやうな雲が地平に
  垂れてゐた。草の葉ばかりに風の吹いてゐる平野の中で、彼は
  高い声で母を呼んでゐた。


   街ではよく彼の顔が母に肖(に)てゐるといつて人々がわら
  つた。釣針のやうに背なかをまげて、母はどちらの方角へ、
  点々と、その足跡をつづけていつたのか。夕暮に浮ぶ白い道の
  うへを、その遠くへ彼は高い声で母を呼んでゐた。


   しづかに彼の耳に聞えてきたのは、それは谺(こだま)に
  なつた彼の叫声(さけびごえ)であつたのか、または遠くで、
  母がその母を呼んでゐる叫声であつたのか。


   夕暮が四方に罩め、青い雲が地平に垂れてゐた。

  

                   「谺」  三好 達治




 日もとっぷりと暮れ、お互いの顔さえも判別できない薄暗がりの中、
 とろとろと燃えるロウソクの火が、連れ立って墓参りに向かう浴衣姿
 の人たちを、仄かに照らし出します。

 お墓を飾る色とりどりの花々や、立ちのぼる線香の匂い。

 しっとりと濡れた墓石の前で、目を閉じ、手を合わせると、草むらに
 鳴く虫の音が、軽い耳鳴りのように周囲を遮断し、意識を遠い世界に
 向かわせるのです。

 はかない生命こそが、永遠の世界に結びついている。

 今は亡きなつかしい人たちの魂は、わたしたちの祈る心の中に帰って
 くるのかもしれません。


 そして盆が過ぎれば、季節の回り舞台は大きく回転し、季節は秋へと
 移りゆきます。気がつくと、夏はひと夜の夢のように思い出と化して
 います。
 


  あの夏の数かぎりなきそしてまた たつた一つの表情をせよ

                         小野 茂樹   


 愛しいあなたが夏の間に見せてくれた数限りない美しい表情。それは
 たった一つの表情だったとも言えるのですが、それがわたしの心に、
 微かな痛みをも伴って、今年もそっとしまい込まれるのでしょうか。

 あなたに寄せる想いも、頬を撫でる秋風のように、ほんの一瞬あなた
 の心をかすめてくれたら・・・


 またお手紙、書きます。


                    平成18年8月1日 



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