あなたへ贈る季節のたより

毎回、1つの季語を添えたお便りがあなたの元に届きます。心に残る詩、和歌、俳句をひもときながら、北越後の城下町から都会に住むあなたに宛てて、その時々のふるさとの様子や、あなたへの想いを伝える恋文です。

全て表示する >

あなたへ贈る季節のたより No.3

2006/05/01


 *~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*
       
 
    あなたへ贈る季節のたより     ---- No.3 ----

        「風薫る」                      2006.5.1

               by URUSHI OHTAKI 大滝 豊
               http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/
                                  
 *~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*~~~~*

 
 遠くのあなたへ。


 お元気ですか。

 生まれたてのやわらかな緑が、日ごとにその色を濃くしていきます。
 あたかもたっぷりと水を含ませたセーブルの筆に、少しだけ浅葱色の
 透明水彩をつけ、目の粗いアルシュ紙の上をそっと撫でたよう・・・。
 目に優しい明るさですね。

 長いお休み、あなたはどうお過ごしですか。

 今年の連休は、比較的お天気のいい日が多いとのこと。
 さわやかな微風に誘われ、都会の喧噪を離れて、ひとり山道をたどる
 あなたの姿が目に浮かびます。

 雪の多かった今年の冬。山にはまだ残雪があるのでしょうか。



   清いものとして薄れゆく

   おもひでのやうに、いつか輪郭も

   透明になつた雪のまだら。


   身にしみるほどまじめで、

   静かに万物をときはなつ

   高原の五月の太陽よ。


   ながい隠忍(いんにん)のはしばみや

   白樺のかなたの空を雲がながれ、

   風は自由と漂泊とを歌って通る。


   雪消の水と青と銀の糸すぢに

   うるほされた土からは、

   山の早春を吐く水芭蕉の花。


   自然はまだどこか淋しいが、

   すでに清新の気に満ちみちた風景をとよもして

   おほるりの歌が喨々(りょうりょう)とひびく。


   そして、もう人が居るのか、あの小屋から

   今昇りはじめた柔らかな白けむり、

   あれこそ山の春の消息だ。
   

              「雪消の頃」  尾崎喜八



 五月は、暦ではもう夏。
 ちょっと歩くと、額にはうっすらと汗がにじみますね。
 そんなおり、心地良い一陣の風が、肌をすり抜けていきます。

 それは青葉の香りを運んでくる風。

 「風薫る」という季語は、そんなみずみずしい青葉の芳しさを含んだ
 初夏の風を言うのだそうです。

 元々、二千年も前の中国の書物にも使われたことばらしいのですが、
 日本に伝わってから、平安時代などには梅や橘の香りを運ぶ風を言う
 ようになり、室町時代あたりから本来の青葉の香りを乗せて吹く風の
 意味に戻ったとのこと。

 あなたもこの風の香り、感じてくれているでしょうか・・・。


 そういえば、風にはもうひとつ「風光る」という言葉もありますね。
 「風薫る」よりももう少し前の時節、暖かさを含んだ春の風が、輝く
 陽光の中を吹き渡る様子。


   地玉子の殻のたしかさ風光る      (鈴木真砂女)

   馬車に乗る大使の列や風薫る      (関戸このみ)



 「風光る」「風薫る」・・・日本人の感覚はなんて繊細なのでしょう。

 あのとき開け放った窓辺で、隣りあうあなたといっしょに感じた風は、
 どんな香りを運んできたのだったでしょうか。

 そんな風の記憶をたどりながら、あなたのことを想っています・・・。


 またお手紙、書きます。


                    平成18年5月1日 



 
 ------------------
 読者からのおたより
 ------------------


 流石埜魚水(さすがのぎょすい)さんという方から、つぎのような
 メールをいただきました。(4月2日付)


 ★------------------------------

 あなたへ贈る季節のたよりNo.2を初めて拝読しました。繊細で美しい
 言葉が綴られているので、女性かな?と思いました。私も一年にたっ
 た一回の春を惜しんで、遠くではなく身近な桜の名所を訪れています。

 昨日は、横浜市青葉区にある鉄神社近辺や桐蔭学園の桜を楽しんでき
 ました。隣接の麻生区をはじめ、この辺りにはたくさんの神社があり
 ます。参道や境内には咲き乱れた花びらが舞っていました。私はそれ
 を掌にのせて、色と匂いと爽やかな光を味わいます。だから四季折々
 の花の咲く時季には頻繁にここらを訪れます。梅の時季には、王禅寺。
 紫陽花の時季には、浄慶時・・・と、花の移ろいと匂いを満喫してい
 ます。

 先日、川崎市の宿河原の桜を観賞してまいりました。二ヶ領用水の川
 面に薄いピンクの花びらがゆっくり流れていました。あたかも時はめ
 ぐり、春は一瞬であるかを悟らせるかのように。近くに吉田兼好の
 『徒然草』の石碑が建っていました。あの随筆の中に『宿河原』の地
 名が登場するとか。

 私は粟田勇さんの「花のある暮らし」「花を旅する」のように、古今
 東西の花歌、日本の津津浦浦の花所を訪ねられたら、どんなに素晴ら
 しいかと羨んでいます。あの本に収められているたくさんの和歌に触
 発されて、私も1月より下記アドレスで短歌のブログを始めました。
 宜しかったら閲覧ください。花の短歌も含まれています。もうじき、
 桜の短歌も載せる予定です。

 ≪都市生活者のエッセイとアーバン短歌」と名前を付けて掲載しまし
 た。「まぐまぐ」では心の深厚風景を対象にしました。。。。。。。

  http://blog.mag2.com/m/log/0000183539#

 ヤフーのプログには、「今」の心象風景を対象にしました。

  http://geocities.yahoo.co.jp/gl/gyosui27530

 またよいお便りを楽しみに致しております。

 ------------------------------★


 流石埜魚水さんの短歌とエッセイは、なかなか含蓄に富んでいて、
 言葉に対する造詣の深さを感じます。ありがとうございました。

 
 みなさんからの感想メール、お待ちしています。

 次回の配信は、6月1日です。
 これからも、よろしくお願いします。 




 *****************************************************************

  メールマガジン 「あなたへ贈る季節のたより」

   ●発行 URUSHI OHTAKI
   ●編集 大滝 豊

      〒958-0873 新潟県村上市上片町2-32
        TEL:0254-52-6988 FAX:0254-53-3272
        MAIL TO:   yutak@lapis.plala.or.jp
        WEB SITE: http://www11.plala.or.jp/u-ohtaki/

  -----------------------------------------------------------------
  このメールマガジンは、以下のマガジンスタンドから配信しています。
 配信中止は、それぞれのページから行って下さい。

 ・まぐまぐ  http://www.mag2.com/m/0000183042.html
 ・メルマ   http://www.melma.com/backnumber_150184/
 ・めろんぱん http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=009247
  
  -----------------------------------------------------------------
 *****************************************************************

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2006-01-29  
最終発行日:  
発行周期:毎月1日  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。